女魔術との対戦前の二日間初日
次の試合は二日後に迫っていた。戦うのはA組の中で一番強いラン=ハードリアだ。クラスメイトから聞いた情報によると彼女はパワー型だったガナルと違い魔法を器用に使う技術型らしい。ていうかクラスメイトから聞いたっていいな、友達の話なんだけどとか憧れてたんだよ。
「ねえ、仁。あなた何の用でここに来たの?」
「ん?ああ、なぁサナ俺は魔術師と戦ったことがないんでな、また修行をつけてもらおうかと。」
「いやよ。そんなタダで教えるなんて。」
「そう言わないでくれ。なら何でも言うことを聞くそれでどうだ?」
何でも言うことをきく、それは相手が自分に好意を抱いていたらお得な命令を、抱いていなかったら嫌な命令を受けるものである。だが俺はサナには少なくからず好意を抱かれていると思っている。
「なら、あなたにはこの大会が終わったあとデイルガンドの鱗でも取ってきてもらおうかしら。」
「でいるがんど?なんだそれ。」
「ドラゴンの中でも最強と言われているの。その鱗から作る剣は最上級と言われ壊れない、切りやすい、かっこいいって評判なのよ!」
何だよその3K。
「そんなドラゴンの鱗なんて持ってこれるか!自殺しに行くもんじゃねぇか!」
「何よ、なら教えないわよ。」
それは困る。友達ができたとは言え修行をつけてくれと言える友はサナくらいしかいない。というかクラスメイトは友達と呼んでいいのか?わからん。
「わかったわかった。この大会が終わったら取って来てやるから、頼む。」
もちろん大嘘だ。大会が終わっても取りに行くなんてごめんだ。
「約束だからね。頼んだわよ。明日アカデミーの校庭に来てね。」
「ていうかサナは俺が死んでもいいって言うのかよ。」
「そんなことないわよ!はっ…別にあなたが死のうが生きようがどうでもいいし、私には関係ないし!」
今ならわかる。こいつがサナに嫌がらせをしているのはこいつが自分の思いを伝えるのが下手だからだろう。
サナに頼んだあと俺は家に帰ることにした。
異世界に来たばかりの俺には家と呼べるところはないけれど宿を借りている。
「おかえりなさい、仁さん!大会勝ったんですってね。おめでとうございます!」
「ああ、リンネただいま。ありがとな。」
帰ってきた俺を出迎えて来たこの美少女はリンネ=フレイサ、この宿の店主の娘だ。
「心配したんですよ、仁さん食事の際もあんまりご飯食べる方じゃ無いし、体力もないのかなって。それなのに対戦相手はソードリアルを使うガナルって聞いて。」
「はは、まあ確かにきつかったが仲間のサポートもあったりしてな。色々あって勝てたんだ。」
この子がガナルが使ってる武器を知っていたりと詳しいのには理由がある。この子は英雄アカデミーと同じく冒険者を育てる学校に通っている。しかしそれは英雄アカデミーではなく、ブレイヴアカデミーという学校に通っている。この街には二つの冒険者を育てる学校がありその片方の方に通っているため色々と情報が回ってくるらしい。
「あ、お風呂にします?それとも先にご飯にします?」
「えっ…じゃあご飯にしようかな。」
何この新婚夫婦みたいな会話!まあ彼女いない歴=年齢の俺には新婚なんて日本からアメリカまで徒歩で行くほど有り得ない話なんだけど。ていうか日本からアメリカ海挟んでるからきつすぎだろ!
「今日のご飯は私が作ったんですよ!さあ食べてください。料理の題名は悪魔のシチューです。食べれば病みつきになるような誘惑、まるで悪魔のサキュバスレベルです。食材は豚肉を始め、牛肉、ドラゴン肉とさまざまな肉をたくさん使い、そして…」
「なあいいか。リンネこれ味見したか?」
「してないですけど。そんなに美味しかったですか?」
リンネが作ったシチューは悪魔のシチューという名に相応しいとても殺人的な味だった。
さてと明日はサナに修行をつけてもらうからな早く寝ないとな。
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何故だ。何でサナは何分待っても来ない。
「あのあなたが神崎仁くんですか?」
「ん?サナか、やっと来たのか。なんだよ改まって。」
目の前にいるサナは頭がどうかしてしまったのか。
軽い記憶消失なのだろうか。間違えた消失させちゃダメ!記憶喪失!
「いえ、私はサナの母、ミナです。」
「え?お母さん?サナにすごい似てたんですいません。ていうかなんでお母さんが?」
「あの…サナ何ですけど。昨日熱を出しまして、今寝込んでるので今日行けないことを代わりに伝えて来いと言われて。」
「嘘だろ…」
こうして俺はアカデミー最強の敵に一人の力で勝たなくてはいけなくなった。