最強騎士への悪あがき 2
ついに試合当日。だが試合の前に迷子になってドタバタな仁。果たして試合はどうなるのか?
俺、神崎仁は迷っていた。
目先の強さかもっと先の強さか。
そのポーションを使っていいべきかを。
そうこうしているうちに競技会がある朝になった。
やばい、どうすればいい!
今ポーションを使うべきなのかしかしランダムで一生一つの無属性が使えなくなるのは痛い。痛すぎる。
「仁そろそろ時間ですよ。早く準備してください。」
ドアの外からレイの声が聴こえる。きっと時間になっても日和ってる俺を迎えに来てくれたのだろう。
「ああ、今行く。」
俺は防具を身につけ剣を取った。
ん?防具…
ヤベェすっかり忘れてた!ていうか剣術習ってポーションの存在知ってとかやってたら防具に気が回るわけがないだろ!ガナルの武器はソードリアルだぞ多分防具なしだと痛すぎてショック死する。
「やばいレイ防具を忘れた!というか一つも持ってない!」
「え⁉︎ なら私が急いで家に取りに行きますから先に会場へ行っててください!ほら早く!」
「悪いすまない!」
俺は思った。こんな土壇場で準備しても勝てっこないと。だってさテストの三分前にクラスの奴らが明らかに知らない話ししてて何の話って聞いたら、え?テスト範囲だけどって返って来てみそのテストもう諦めるだろ!まあ俺には話しかける友達もいなかったからそんな経験ないんだけど。
確か会場はアカデミーから少し歩いたとこだったよな。少し…少し…いやここどこだよ!完全に迷子ってやつだろ!そうだスマホの位置情報でってここ異世界!
「やばいまじやばい。どうすれば。」
何か隣にも迷子さんがいるんですけど、全く見たことない顔だが屈強な身体つきからして冒険者なのだろう。
「なああんた冒険者なのか?」
「誰だテメェ?」
怖!やばいよこの人。絶対や○ざだろ。冒険者じゃなくてや○ざだろ。
「おい坊主俺に冒険者かって聞いた?答えてやろう、間違いだ!」
なんだこいつ話し方がいちいちうざすぎる。
「じゃあなんだよ?や○ざか?」
「おいあまり調子にのるなよ。俺はまだ冒険者じゃないってだけだ。」
ん?それって…
「英雄アカデミーに所属している見習い冒険者ってとこだ。今日は大事な試合があるんだがな間に合いそうにないんだ。」
「あんたもか?俺もなんだよ。あんた何組だ?」
「お前みたいな弱そうな男が代表だと?絶対お前D組だろ。俺はC組だ。」
うんその通りです。
「まあ今は弱いがのちに最強の冒険者になるぜ。ちなみに俺も迷子だ!」
「その自信がどこから湧くのか教えてもらいたいものだな。俺とお前を一緒にするな、俺は迷子ではない。道は分かっている。だが人試合目が俺の出番だなそれにはどう近道しても間に合いそうにないんだ。」
気の毒なことに。まあ俺も迷子なのだが。こいつが道がわかるなら連れてってもらいたいものだな。
「なああんた道はわかるんだろ?なら地図にでも書いて教えてくれないか?」
「は?俺に何のリミットがある?」
「それはだなこのポーションをやる。」
「何だこのポーション。」
そうこのポーションは痛みを共有するポーションの他にレイからもらって来たものだ。
「これは足が速くなるポーションだ。これを使えばあんたも間に合うと思うぜ。だからその代わりに道を教えてくれ。」
「わかったよここは交渉に応じてやる。紙とペンを貸せ。」
俺は紙とペンを手渡した。一応カバンはアカデミーに行くカバンのままなのだ文房具も入っている。
「ありがとな坊主。じゃあな。」
別れを告げた屈強の男はもうそこにはいなかった。
一瞬瞬間移動したのかと思ったが多分それは違う。
ポーションの効果だろう。少しポーションを信用できるようになった。
さてと行くとするか。俺は屈強な男からもらった地図を元に会場へと急いだ。
騒がしい歓声が鳴り響く会場を横目に俺は選手控室を目指した。多分屈強な男が試合をしているのだろう。たしかに気になるが人のことを気にしている余裕はない。俺も自分の試合が近いからな。
で、いくら待ってもレイが来ないのだが。
もう運営らしき奴がそろそろですとか言って来てんだけど、ねぇレイどこにいんの⁉︎
「なあさっきの試合すごかったな。」
「ああA対Dのやつだろ。あの屈強な男にあんな小柄な女の子が勝つなんて思わなかったよ。」
「あれはいい試合だったな。」
「いいや多分あの女の子はあれでも手を抜いていたと思うぞ。」
運営の奴らが何か話しているがあまり聞きたくないな。何だよ手を抜いても屈強な男に勝てる女ってていうかあのままの展開だと、決勝に残った俺と屈強な男が戦う流れだろ。坊主とか言ってたくせに何負けてんの!
「あの神崎仁さん?もう試合ですが、準備はよろしいですか?」
「いや…」
「では行きますよ。第二試合開始です。健闘を祈っています。」
おいこの世界には人の話を最後まで聞けないやつしかいないのか。まだ日本の方がましだぞ。ていうか防具なしなんですけど。結局レイ間に合わなかったんですけど。
仕方なく歓声が鳴り響く中フィールドの真ん中まで進む。向こうからは大きな剣を掲げた爽やか系イケメンが歩いて来た。こいつがガナルか、イケメンとか爆発しろ。
「ねぇ君そんな装備で僕に挑む気かい?」
「ああ。」
「だから落ちこぼれは嫌なんだ。自分の実力を過信して大した準備もして来ない。どうせお前のクラスにもそんな心構えのやつしかいないのだろう。落ちこぼれが冒険者を目指すことすら間違っているのだ。最底辺クラスは大人しく冒険者を目指すのを諦めろ!」
こいつが言っていることは真っ当だ。俺は大した準備もしていない。防具を忘れて来たのがその証拠だ。
だけどこの俺を見ただけでクラスの奴らを馬鹿にするのは腹が立つ。クラスの奴らいやレイは少なくとも本気で冒険者を目指している。魔法が使えないからといって諦めず魔道具で代用しようとしている。
そんなレイを馬鹿にされるのには怒りを覚える。
俺には友達が一人もいなかったから他で起こる事は他人がしていることでしかなかったし、他で誰がどんな気持ちで居ようがそれはそいつらが引き起こしたことそう考えていた。だが今レイを馬鹿にされたと感じて怒っているということは俺に友達が、いや少なくても大切だと思える人ができたのだろうか?
そんなものに根拠はないけれど、でも俺はそうであって欲しいし、レイが友達であって欲しいと思う。
ああそうか。この試合は俺だけ負けるんじゃないんだ。一緒にレイもクラスの皆も負けるんだ。なら
「なあガナル俺は絶対に勝つよ。最弱が底辺がいかに悪あがきしたら強いか教えてやるよ!」
「負け犬の遠吠えが。ならその底辺らしく皆の前で負けて恥をかけ。大口を叩いた愚か者を、騎士ガナル=エスティアが倒してやろう。」
「そうかいそうかい。負けて泣くなよ。」
普通はここですぐに剣を構えるのだろうが俺は違う。
真っ先にポケットに入ってたポーションを飲み干した。ガナルは不思議そうに見ていたが筋力アップ程度のポーションだと思ったのだろう。すぐに警戒を解いたように思えた。
四属性を操り最強の武器ソードリアルを持った騎士ガナル=エスティアと装備不十分イカサマポーションを飲んだ最弱冒険者(なる予定)の神崎仁の試合が始まった。