聖者シャルー2
「非常にはっきり言っておいてやるがお前が王子でなければ、本来、口をきいてやるような立場ではないのだぞ」
部屋に入ってくるなりシャルーがそうきっぱりと言った。
美里の父親がはっとしてシャルーを見、美里がどんよりとシャルーを見て。
「判っています。僕は平凡な高校生で、王になるなんてのも分不相応だ」
「それに関しては安心しろ、王家の直系である以上、この世界ではお前は正当なる王だ」
この世界では血が全てなのだ。
とシャルーが言う。
「その意味はいずれ判る」
だが
「当分、お前は、私の「弟子」としてこの世界について学んで貰う事になった」
「弟子ですって?」
「そうさ、聖者の弟子だ。これ以上の身分はないだろうな」
シャルーは当然と言った風に頷く。
「しかし、僕には何の信仰も」
「まあ異世界人のお前に信仰など最初から求めてはいない。この世界の統治者としての常識を教育する弟子、と捕らえて貰えればけっこうだ」
シャルーが顎をしゃくるように言った。
『エリートというのは、これだからな』
極めて平凡に育った美里は心の中で顔を顰めた。
彼も縁があって東大生の集団と付き合った事があったが、陰湿であり、精神的にボロボロにされた。
身の程を弁えろ、という事だろうと、解釈しているが、決して愉快な体験だったわけではない。
「わかりましたよ。先生」
美里の返事に、シャルーははっはっは、と笑った。




