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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
全ての重力の向かう先
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全ての重力の向かう先2 -益田-

『ようこそ』

男の声が響いた。

『ふふふ。現世(うつしよ)の者と話すのは、久しぶりだ』

ナツの声では無い。彼女は、目も口も閉ざし、光に取り囲まれ宙に浮いている。


俺たちはカプセルに近づき、その者を覗き込んだ。

木乃伊(ミイラ)のような姿。

頭髪は無く、額に3箇所、ケロイドのような痕が見える。

白濁した目。

開かぬ口。なのに声は響く。

手足は無く、身体中に管が繋がっている。

だが、確かに人間だ。

彼は盲いた目を俺たちに向け、唇の端を吊り上げ、笑った。


『自己紹介が未だだったね。私は益田、益田四郎という』


益田?

俺と同じ苗字だ。

『君の先祖に当たる』

なんですと?

親戚の集まりでも、こんな爺ちゃんには会ったことが無いぞ。


白濁した目が、俺を捕らえていた。

『君を此処へ呼んだのは、私だ』

いや呼ばれてナイ。

俺は呼ばれたりしてナイからね。


『他の者も、私の我侭(わがまま)で試してしまった。申し訳ない』

微かに頷いたように見えたのは、お詫びのつもりだったのか。


ところでナツはどうなったんだ。

何かまるで反応が無い。

『安心したまえ。彼女は今、天国(ぱらいぞ)に往っているだけだ』

それは、還って来れるのか?

(しか)り』


その言葉で気付いた。

先ほど、ナツを操っていた者の言葉だ。

お前がナツを

『そう。操っていた』


では、とトウが言う。

「我々は辿り着いた。火山を噴火させるのは止めて貰おう」

『随分、直接的な物言いだ』

その声に悪意は感じられない。

『その件も謝らなくてはならない。元々、私に破局噴火を起こすつもりは無い』


『あの言葉は、君達に此処を目指して欲しかったが故の言葉だ』

じゃぁ大噴火は?

『むしろ、それを防いでいる』

なんとなく、その言葉に嘘は無いと思った。

『危険域に達したマグマ溜りから、マグマを雲仙岳下に移動させ、制御しながら放出している』


それを聞いたトウは、"これで私の仕事は終わり"と言わんばかりに口を閉ざした。

誰も何も言わない。

じゃ、俺聞いちゃう!


だが、俺が口を開く前にミズが問うた。

「貴方は、誰?」

益田四郎さん。俺のご先祖様。

まぁ、そういう意味で無いことは俺にも判る。

いくら俺ほどの男でも、こんな科学技術を持つご先祖様は居ないだろう。


「そして、貴方の父親は誰?」

益田三郎さんかな?

『父の名は好次。他の男の話は父からも母からも聞いとらんよ』

彼の盲いた目がミズを捉え

『そして私は--多分、君は正解に辿り着いている』


「ありえない。400年、生き続けたとでも言うの?」

然り。そう彼は言う。


『老化は、主に遺伝情報の複製誤りにより生じる』

細胞分裂の際、テロメアは短縮される。だが、それが老化の直接の原因では無い。

テロメアが短縮されることで、分裂時の複製誤りが多くなる。そこが原因だ。

サーチュイン遺伝子が複製誤りを修正するが、その修正も完璧ではない。


遺伝情報の複製誤りをナノマシンが修復することで、加齢を防止できる。らしい。

ある程度は。


『だが400年は長い期間だ。私の手足は朽ち、目は見えず、耳も聞こえず、身体の自由も利かぬ』

で、誰なのよ。

俺にも判るように教えてプリーズ。


「江戸時代初期のキリシタン」

ミズが呟く。


「豊臣秀頼の落胤という説もある、島原の乱の最高指導者」

ちょっとミズ、最後のそれは。


「天草四郎時貞」


『ご名答』

彼が微笑み、そう声が聞こえた。

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