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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第九圏 裏切の迷宮
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第九圏 裏切の迷宮6 -神様-

ドアが開き、閉まる。


最後の玄室。

ついに俺たちは此処まで辿り着いた。

だが、どーにもならん。

どーにもならん事を知った。知ってしまった。

俺達を阻む最後の者は、最後の御方は、神様だった。


神様とはどんな御方か。

簡単に言えば、チョキでグーに勝つ存在だ。


ジャンケンに限らず、ゲームにはルールがある。

残念だがそのルール、神様には無効だ。

物理法則、因果律も無効。

論理を超えた存在、それが神様だ。


神様の前に立った時、俺はその事が分った。

否、その事を知ってしまった。


1斤のパンを食べると無くなる。

これがこの宇宙の法則、ルールだ。

数式で表せば、1-1=0。

だが残念、神様にそれは通用しない。


その昔、イエスは1斤のパンで群衆の腹を満たした。

神様にとって、1-1は1にも2にも出来るからだ。


どれほど強い怪物とも闘おう。

どれほど恐ろしい処へも往こう。

望みなど無くとも。

たとえ叶わなくとも。

でも、コレはダメ。


敵わなくとも、せめて攻撃すべき。そう思うだろうか?

よし分った。やってみるがヨイ。

でもそれは、神様の影を叩いているようなものだ。

俺たちの手は神様に届かない。


父と子と精霊。

俺の目には、神様はそのように、3通りに映る。

隠し絵というのを知ってるだろう。見方によって老婆に見えたり若い女の人に見えたりするヤツだ。

それと同じように、3通りの内、どれか1つの姿しか意識できない。

3つ同時には意識できないのだ。


だがその姿すら、神様が俺達の宇宙に落とした影に過ぎない。


例えば乾電池みたいな円筒形を考えて欲しい。

上から光を当てれば、影は円だ。

横から当てれば四角形、斜めから当てれば別の形になる。

おそらく神様の実体は高次元ーー俺達の宇宙である3次元+時間より多くの次元を持つ処に在る。

其処から俺達の意識に落とす影。それが父と子と精霊、神様の御姿だ。


さて、


ところでナツ、君はいったいナニをしておるのかね?

神様の御前に刀なんか突きつけちゃって。

俺が今まで説明してたの、関係ナシ?

「アタシは納得いかない!」


「神様アンタ、今まで何してたんだ」

ちょナツ、神様に向かってなんつーコトを。

「アタシはこの前、昔の、隠れキリシタンの事を調べた」

なぜキミは、この前まで調べようとしなかったのか。

「アンタは何故、あれを黙って観ていた!」


「あの拷問を、あの非道を、何故黙って観ていられた」

そう、神様は観ている。

そして、沈黙を破る事は無い。

「彼らはアンタを崇めてただけだ。ただ、それだけだった」

数千年間、その沈黙が破られることは無かった。400年前、キリシタン迫害の時も、沈黙は守られた。

「なら今更出て来んな。そんな口は永遠に閉ざしとけ!」


「コウ、トウ、彼処に出口が見える」

ナツの言葉に目を向けると、壁が--空間が歪み、其処から地獄門が、洞窟が、出口が見えていた。

「脱出しろ。隊長達を復活させてくれ」


そう言い残し、刀を手にナツは行く。

神様に向かって。

走るでもなく歩くでもなく、悠然と進んで行く。

俺は、その姿を、見ていることしか出来なかった。


ナツの姿が光に包まれーー

塵となって消えた。

消える瞬間、最期に俺の方を向いて何かを告げ、笑った。


畜生ーー


「待て、コウ!」

飛び出そうとした俺は、トウに肩を捕まれ、引き倒される。

「1人で3人は抱えきれん。お前はミズとタダを担げ」

否、俺は

俺は神の処へ、ナツの逝った処へーー

「無論、俺も行く」

なんですって?


「今朝、守須に聞いた」

准教授に?

「九州全土の火山が噴火する確率が、急速に高まっている。そうなれば、地球は寒冷化し、人類はほぼ絶滅する。生き延びれるのは数千人だろう」

私の娘や妻も死んでしまう、とトウは言う。


だが、ナツの後を追っても塵になるだけだ。

「あの輝きは見たことがある」

ナツを包み込んだ光か。

「"転移"発動時に現れる輝きに似ている」


「ナツは何処かへ転移された可能性がある」

其処には、この破局を止める何かがあるかも知れない。


ーー


ところでトウ。

「何だ」

破局を止めるなら、ナツ1人だけで良いんじゃ無いか?

もし、あの輝きが転移じゃなければ無駄死にだ。


「コウ」

何だ。

「転移先に破局を止める装置が有ったとして、ナツが操作出来ると思うか?」

マズい。急ごう。

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