第九圏 裏切の迷宮5 -裏切-
「ひでぇヤツだ。お前は」
トウが言う。
いかにもトウらしい、軽い感じで。
「あやうく殺されるところだった」
だってお前。
「色々、呑み会にも誘ってやった恩を、仇で返されそうになった」
お前は。
「まぁ、最後の最後で思い留まったのは、評価してやっても良い」
お前なぁ。
「強~烈だぜ。お前の"加速"ってヤツは」
俺はがっくり膝を付いた。
盗賊の心が無ければ、貧血を起こしてたところだ。
「どうやって、自分を取り戻した?」
ナツが尋ねる。
そう。それ!
俺もそれ聞きたい。
「ん~なんか心をな、分割して、片方を勝手に動かさせておくんだよ」
"極大消滅"を唱え終わる直前、もう一方の心が口を閉ざし、巻物を広げたらしい。
つまり二重人格?
「違う、とも言えない」
本人にも良く判らないらしい。
でもそんなコト、良く出来るなー
「流石はNSAのエージェント」
「知ってたのか」
!?
え、NSAって。
「一般社団法人、日本サーフィン連盟」
違うよ!
「米国家安全保障局。つまりトウは米国のスパイよ」
トウが?
何かといえば呑み会開いて、おやぢギャグ言ってるこの男がスパイ?
スパイならマティーニのハズなのに、こいつこの前ホッピー呑んでたよ。
しかも、中身お代わりしてた。
米国は、人選を間違えている。
「陸自の司令、いよいよとなったらアンタの口、封じる気みたいよ」
「お~ぉ、おっかないねぇ」
ナツそれ、言っちゃいけないコトなんじゃないか?
「アンタ、司令とトウ、どっちの味方する?」
トウ一択。
「でしょ、アタシも」
「これはこれは、どうもどうも」
「言えるウチに言っとく。トウ、色々ありがと」
ナツがニッと笑う。
「どういたしまして。こっちも楽しませて貰ったよ」
同じようにトウが歯を見せる。
「さて、いよいよ最後の玄室ね」
あれ?
俺には、ねぇ俺には?
「アンタには未だ早い」
えー
ナツが隊長を、俺がタダを、トウがミズの身体を担ぎ、通路を進む。
その先には、最後の玄室がある。
第九圏 第4円 ジュデッカ。
そこは一番下で一番暗く、光り輝く天界からは一番遠い。
神に対する裏切者の地獄だ。
次回は7/29頃に投稿する予定です




