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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第九圏 裏切の迷宮
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第九圏 裏切の迷宮3 -祖国-

「危なかった…」

ナツが呟く。

「襲ってきた怪物が、母さんの顔をしていた」

どうやら全員、各々の肉親に見えたようだ。


俺には父、母、姉に。ナツは母親と多分父親。後は誰に見えたのか。

背格好も動きも、見慣れたままだった。全く違和感が無かった。


よくミズは怪物だって判ったな。

「亡くなった父に見えたのよ」

そうか、それで偽者と判ったのか。


さすがにミズの歳だと、そろそろ肉親が無くなってェェエッ!

また俺の心を読んだのか、凄い目で睨まれた。

怖い。

なのに、"花嫁姿を見ずに亡くなったのが心残りで、化けて出ちゃったのかなー"とか余計な事を考え、更に睨まれる。


皆が落ち着くまで、小休止を取ることになった。

トウは誰を見たんだ?

「妻と娘、後は母だ」

俺の事をジロリと睨む。


「お前が娘を手にかけた時、お前に向けて"極大消滅"を放とうかと思った」

濡れ衣だ。冤罪だ。再審を要求する。


タダも呟く。

「僕は父と母と…」

母と、誰?

「いやぁ」

なんか頬を赤らめるタダ。

よもや!


この前、俺が合鍵つくったあの()じゃあるまいね。

あの娘はダメだよ。

肉親じゃナイからね。


「だってトウだって、奥さんが見えたじゃないですか」

俺、この探索が終わったら結婚するんだ。

そんな鉄板フラグを立てそうなタダである。


「準備開始。準備が整い次第、次の扉に向かう」

隊長の声に雑談を止め、装備の確認を行いだした。


--


玄室のドアを開けると、また未来的な通路が延びていた。

「全員、防御姿勢を取ったまま、迅速に前進」


ドアが開き、閉まる。


突き当たりには、またドア。

そして中は暗闇。

「前進する」

皆、盾を構える。


ドアが開き、閉まる。


ブーン

何やらハム音が聞こえる。

ゴキュキュッ

重い金属同士がこすれ合う様な音が、一瞬だけ響く。

壁と天井が次第に発光し、玄室の中央部の影を照らす。


TVや映画で見なれた車両が、そこにあった。

戦車。いや大砲が無いから装甲車か?

車両の下には無限軌道(キャタピラ)があり、上には機関銃のようなものが見える。

「散開!」

隊長の指示とほぼ同時に機銃掃射が始まった。


中世のローマ軍と現代の機甲化部隊が戦ったら、どうなるか。

戦闘になんかならない。一方的な殺戮だ。

槍や刀で戦車の装甲が貫けるはずは無く、人が持てる盾で機関銃の弾丸が止められるはずは無い。

穴に落として脚を止める--ってそんなヒマあるか!


kiuɑ-ðŋ-(極大)divergên(消…)...」

ガガガガガッ

トウの詠唱は、戦車が立てる騒音にかき消され、発動しない。

ミズ、タダも同じだろう。


一方俺たち前衛は、防戦一方--というより逃げ回るだけ。

俺は時折"加速"に成功し弾丸を避けるが、隊長とナツは何発か喰らい、血飛沫(しぶき)が上がる。

「コウ!そのまま陽動」

隊長の声が聞こえた。


「ナツ!機銃を斬れ、20秒後」

隊長、それは無茶だ。

機銃を斬る前に、機銃に撃たれてナツは死ぬ。

だが、それ以外に道は無い。

俺は機銃の射線に出て、陽動に専念する。


5秒後、隊長が装甲車に取り付く。

10秒後、ナツが装甲車に取り付く。

15秒後、隊長が装甲車の上に立ち、機銃に迫る。


機銃は狙いを俺から逸らし、隊長の身体から続けざまに血飛沫が上がる。

血まみれになりながら、隊長は機銃を押さえ込む。

ナツが機銃に辿り着き、刀を一閃する。


銃声が止み、装甲車は攻撃力を失う。

隊長の身体から力が抜け、装甲車から転げ落ちた。

ミズが駆け寄り、隊長を抱え起こす。タダと一緒に引きずり、ドアへ向かう。

ドアには既にトウが辿り着いていた。


「開けるぞ!」

トウの叫び声と共に、俺たちはドアの向こう側へ身体を投げ出した。


ir-kras()sen-kiuɑ()

ミズの詠唱が響き、隊長の身体を光が包む。

だが、隊長は瞬きもしない。


ir-kras()sen-...()

「ミズ、無駄だ。もう隊長は…」

再度、詠唱を始めるミズを、トウが止める。


隊長は既に、こと切れていた。

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