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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第九圏 裏切の迷宮
93/106

第九圏 裏切の迷宮2 -肉親-

すっかり人が少なくなった洞窟内。


誰が米軍で誰が陸自か、あまり気にしなくなっていたが、こういう光景を見ると改めて実感する。

俺たちが潜る時、ずっとラボに詰めてくれてた劉さんも、居なくなった。

最初に顔を見た時は、拝金主義の神父だと思ったんだよなー。


先頭を歩く隊長が振り向き、俺たちの一人ひとりを見る。

「状況を開始する」

この言葉を聞くのも、多分これが最後だ。


--


iki-saber()-zái-ir()

地下1階でトウが新たな呪文を披露した。

一瞬で地下8階に、巨大悪魔3体と遭遇した場所に転移する俺たち。


これって、テレポーテーションってヤツじゃない?

すげー

「"極大消滅"の使用可能回数が減るから、あまり使えないんだがな」

なんで使っちゃうんだよ、ダメじゃん。


巨大悪魔の骸は何者かに片付けられていた。だが、飛び散った血の跡が死闘を物語っている。

地下9階への階段は、血の跡の中心部にある。

「降下する」


--


地下5階までの石造り。

地下6階から8階までの、色彩豊かな彫刻に飾られた風景。

地下9階は、どちらとも違う風景だった。


「モダンだな」

「レトロフューチャーって感じ?」

床は銀色の金属状で、壁や天井は、それ自体が発光している未来的な空間だった。

そんな場所に、ファンタジーな衣装を纏った俺達が居るのは、ちょっと場違い。

ぶっちゃけ、コスプレ会場。


「前進する」

隊長の命令に従い進んでいくと、金属製のドアがあった。

いつもは扉を蹴り開けている。

だがこのドアは、ちょっと蹴り開けるのは(はばか)られる。

ドアの右手に、"開けるときはコレ押してね"と言わんばかりのボタンがあったからだ。


「扉を開けるが全員この場で待機」

隊長がボタンを押す。と、凄い勢いで開くドア。

ドアの向こうは真っ暗闇。


バシュンッ!


あ、やっぱ閉まる時も、凄い勢いなんだね。

PL法対象だな。

「全員、防御姿勢を取ったまま、迅速に前進」

隊長が再びボタンを押す。


ドアが開き、閉じる。


壁と天井が次第に発光し、玄室の中央部の影を照らす。

影は3人の人型。

彼らが振り返った時、俺の身体は止まった。


居るはずの無い人が、そこに居た。

父さん、母さん、姉貴。

東京に居るはずの肉親が立ち上がり、俺に微笑む。


「なんで…どうして…」

「愛美…」

「母さん…」


3人はゆっくりと俺の方に近づき--

刀を抜いた。


姉貴が微笑みながら、刃を振り下ろす。

俺に向けて。

その光景を、俺は呆然と見つめていた。

ir-leven()-kiuɑ()

姉貴の体勢が崩れ、俺は突き飛ばされる。


俺は、俺を突き飛ばしたミズと、彼女に迫る刃を見る。

頭の片隅で、俺の一部が告げる。

偽者だ、と。


一瞬が引き伸ばされ、俺は加速状態に入った。


脚を広げ、倒れかかっていた身体を支える。

姿勢を低く、浮き上がりそうな身体を押さえ、姉貴に--姉の姿を真似た怪物へ突進する。


近づけば姉の貌には、皺もしみも黒子も無かった。

コレは作り物に間違いナイ!

はずだ。


貫手を彼女の横腹に叩き込む時、心の一部が少しだけ懊悩する。

だが今、俺の身体を動かしているのは、普段の俺じゃない。

とても論理的で冷徹な心の部分、それだけが俺を動かしている。


姉の姿が弾け飛ぶ姿を横目に、ナツに襲い掛かる母親の姿に向かった。

その後の光景は、あまり思い出したくない。


加速を解くと、3体の人型は土に還り、崩れ落ちた。

良かった。

怪物で、本当に良かった。


ただ念のために、今度姉貴に会った時には、皺、しみ、黒子を観察しておこう。

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