表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第九圏 裏切の迷宮
91/106

呑み会 二十七次会 -別離-

「私達に避難命令が出たのは、知ってるわね」

俺は無言で頷く。

「今夜、23:00発が最後の部隊。海自の大村基地経由で那覇へ行くわ」


ナタリーに呼び出された米軍施設内の空き部屋。

いや、昨日までは誰かの執務室だったようだ。

今は全ての設備が運び出され、ガランとしている。


命令が出てから1日で全員退去ってのは、早いな

「そんなことより」

ナタリーは俺の腕を掴み、視線を合わせる。

「脱出するなら、今の内よ」


今ここで脱出するくらいなら、とっくに逃げ出してる。

多分、逃げ出すだけなら、なんとかなった。

「貴方の身柄は米軍が保証する」

それでも、逃げる気にはなれない。

なぜか、そんな気にはなれないんだ。


だって、ここまで来たら、最後まで見てみたいじゃないか。

分隊要員や陸自の面々、米軍パーティにナツの親父さん。

色々な人の協力があって、地下9階(ここ)まで来れた。

あの奥には、誰も見たことのない何かが待ってるはずだ。


「その"何か"には、命を賭ける価値があるの?」

正直、日本が破滅する、と言われてもピンと来ない。

でも、その"何か"には興味がある。

好奇心は大事だよ。

9つの命を持つ猫すら殺すと言うじゃないか。


「貴方にとってそれは、私よりも魅力的なの?」


ド直球を喰らった。

ナタリーより魅力的か、というとそんな事はナイ。

だって、胸のサイズが全然違--いやそうじゃない。


ドンッ。

その魅力的な膨らみが俺に押し当てられ、ナタリーの瞳が至近距離に迫る。

その瞳はいつもの超然としたナタリーじゃなく、唯人のナタリーの瞳。

多分、俺しか知らない瞳だ。


「貴方に生きていて欲しいの。私に、貴方を見捨てる辛さを引き継がないで欲しい」

押し殺した感情が、胸の奥底で叫び声を上げている。

そんな目をしていた。


でも、(うけたまわ)っちゃったんだよ。

逃げ出さない。その理由の中心に、地下8階での死を覚悟したナツの微笑みがある。

そのことは、俺だけの秘密だ。

俺に、あの微笑を捨てて生きる覚悟は無い。


ふぅ。

ナタリーはため息をつく。

「気絶させて拉致しちゃっても良いのだけど」

それは情けないから止めてくれ。


胸元から名刺を取り出し、裏面にキス。

それを俺に渡す。

「もし生きて還ってきたら、連絡して」

うん。する!

微笑みも大事だけど、美人さんとのご縁は大切にしないとね。


ナタリーに手を振り、部屋を出る。

扉が閉まる音を背に、営舎に戻ろうと片足を上げた状態で凍りつく。

廊下に、ずらりと並んだ米軍パーティの面々。そしてトウにナツ。

皆を代表してトウが言う。


「ヘタレ」


キミタチ、どんだけヒマなんだよ。

それに俺はヘタレじゃないから。

そりゃ覚悟はナイけど、ヘタレじゃないよ。


むしろ、俺ほど勇敢な男は居ないんじゃないかな。うん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ