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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第九圏 裏切の迷宮
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呑み会 二十六次会 -破局-

本日もラボから火山学の権威、守須准教授をお迎えしている。

だが、その表情は固い。

眉間にはビシィッと縦皺が刻まれ、口調は重い。


「よろしくない」

よろしくナイらしい。

千々石(ちぢわ)と阿蘇だけじゃなく、加久藤(かくとう)姶良(あいら)阿多(あた)まで活性化している」

またワケの分からんことを言い出した。


いつもと違い重い口を割らせる。

以前から噴火が予想されてた雲仙や阿蘇だけでなく、霧島や桜島など鹿児島の火山も活動が激しくなってるらしい。

「僕が作ったモデルでは、こんな事起きるわけ無いんだよ」

きっとモデルが間違ってたんだな。

俺の鋭い指摘にショックを受ける守須准教授。


「そもそも、なんで急にここ(千々石)から加久藤に、重力異常急変帯が出来るのさ?」

知らん。

そして、何を言ってるかさっぱり分からん。


「それはともかく、だ」

トウが纏める。

「噴火の可能性はどのくらいだ?」

うム、それ大事。とっても大事。

「判んない」

役立たず!


仕方ない。役立たずは放っておいて、話題を変えよう。

本日もラボから生物学の権威、劉教授をお迎えしている。

相変わらずヒマのようだ。


「コウの"加速"って、何か判ったんですか?」

タダが劉さんに良い質問をする。

「色々判った」

さすが教授だ。どこぞの准教授とは一味違う。


「どうやらコウは、"盗賊"と"戦士"2種類のナノマシンを持っている」

あの漆黒の小刀は"戦士"のナノマシンで出来ており、それが俺の体内に吸収されたんだろう、とのこと。

「我々は、"忍者"と呼んでいる」

うんうん、"盗賊"よりヨイ呼び名だ。


「"戦士"のナノマシンが、武具ではなく身体を直接動かし、素早い動きを可能にしていると考えている」

俺は、今まで着けられなかった戦士用の武具も、装備できるようになった。

ただ、それだと"加速"はできない。

ナノマシンの力が、武具の操作で使われてしまうかららしい。


武具を纏わぬことで、ナノマシンは武具ではなく俺の身体を動かすようになる。

思考の早さで身体が動き、怪物の攻撃をかわし、貫手を放つ。

地下1階で試したところ、武具を使わない方が攻撃力は強く、防具を纏わない方が攻撃を受けにくいことが判った。


「コウの手は骨格が強化され、そう簡単には折れなくなっている」

そう、他の部分は変わらないが、手だけがゴツくなっている。

そして指先の感覚が、鈍くなった。


普通の人には感じられぬ微妙な差。

ただ、鍵師には致命的だ。


それまで直ぐに開けられた鍵が、なかなか開かない。

正直、俺は鍵師としては終わったのだろう。

まぁ、実生活では役に立たない技だから、別に問題ない。

一抹の寂しさはあるが、これくらいで済んだなら安いものだ。


ともあれ、"忍者"になると手の骨格が変化する。

同じ複合型の"侍"は、どこか変化しないんだろうか?

「板倉1士を診察した結果、局所的な変化は無いが、筋肉の発達と体脂肪の減少が診られた」

体脂肪って、ひょっとして局所的におっぱ…いやなんでもない。

なんでもナイからね、ミズ。

部屋に帰ってナツに余計なコト、言わないようにね!


「ラボでは、"魔術師"と"僧侶"の複合型も居るぞ」

トウによると、両方の魔法を使えるらしい。

便利じゃん、分隊(うち)の後衛陣もそれやって。

「"司教"と呼んでるが、各呪文の威力がかなり落ちる」

ダメじゃん。分隊(うち)の後衛陣はこのままで。


「"司教"になった者は、皺と白髪が増えたと言っていた。だが、"司教"になったためかは不明だ」

私ゼッタイならない!

口には出さないが、ミズがそんな顔してる。


「まぁ、複合型の実験も、当分できなくなるだろうなぁ」

独り言のように守須准教授が言う。

「なんで?」

複合型(司教)の実験にはゼッタイ協力しないミズが聞く。

「もうすぐ、避難命令が出るから」


は?


避難って、どこから?

ここ(雲仙岳)から」

俺達に?

「もちろん民間人にも」


「いやだって、さっき噴火の可能性は判らないって…」

そう、タダの言う通り。俺も聞いた。しかとこの耳で。

「いやアレは、加久藤以南のことに決まってるじゃない」

決まってナイ!


もうすぐ、って何時ごろ?

「昨日スタンプラリー始めたけど今日土曜日だから--火曜日くらいかなぁ」

説明しよう。

スタンプラリーとは、官庁が各種命令・通達を出す際に、各所管の責任者に承認印を貰う行為である。

って、ちょっと待ってよ!

明々後日(しあさって)じゃん。


「モデルを作り直すにしてもデータが必要なのに、なんでこんな大事な時に」

ぶつぶつコボす守須准教授。

「なんで、スタンプラリーしてるって判ったの?」

「課長説明時に質問が出て、担当官が僕ん所に聞いて来たから」


「部課長以上が休出してスタンプラリー回すことって」

「充分、ありうるな」

じゃ、今にも避難命令が出るかも知れないのか!?

「私には、既に米軍から避難命令が来ている」

ついでのように、ぺろっと爆弾発言する劉さん。


「コウ、座れ」

思わず立ち上がってた俺を、トウが諌める。


いやだって、カツはどうなるんだよ。

「避難命令が解除された後に、潜るしかあるまい」

「解除された時には、洞窟は溶岩流に埋まってそうだけどねぇ」

なんですって?


さすがにトウも目を丸くしている。

タダは立ち上がっている。

ミズは口を押さえている。

守須准教授はタコの唐揚げをモグモグしている。


「もう1回、整理して聞こう」

トウが纏めて守須准教授を問いただす。


「雲仙岳の噴火の確率は、かなり高いんだな」

「高いっていうか、もう噴火してるよね」

「火砕流が出るほどの噴火の確率は?」

「8割ってとこ」


トウは一瞬目を閉じ

「阿蘇が大爆発する確率は?」

「破局噴火の確率なら5割」

立ちくらみが起きそうになった。


阿蘇が大爆発する確率は五分五分。

その場合、日本人全員が難民になる可能性もある。

それ以上は、怖くて聞けなかった。


「阿蘇も加久藤も、この迷宮が関連してると思うんだけどねぇ」


ん?

今何つった、准教授。

「今回の火山活動の活性化は、この迷宮が関連してると思う」

なんで?

千々石(ここ)から加久藤に伸びる重力異常急変帯って、ほぼ直線なんだよね」


その重力異常急変帯とやらのど真ん中に、迷宮が在るらしい。

「重力異常急変帯が、そうそう直線にはならないよね。人為的--って人じゃないかも知れないけど、何者かの意志が介在してると思うんだよ」

なのに、と嘆く准教授。

「その可能性があるココでの調査が出来なくなるなんて!」


守須准教授は放っておこう。

それよりも。

「破局噴火が起きたら、熊本大も廃校ですよね」

卒業を心配する留年生も放っておこう。


ようは火山がヤバい。日本がヤバい。もう破局寸前。

そういうことだ。


そして迷宮の最深部、地下9階。

その一番奥に、この破局を回避する可能性がある。

かも。

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