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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第八圏 悪意の迷宮
85/106

第八圏 悪意の迷宮3 -絶対-

地下8階、第10玄室。

『神曲』に依れば、詐欺師が堕ちる地獄。

右手法で一周したが、もう次の扉は無かった。


「中央部に前進する」

隊長が告げ、分隊は地下8階、最後の領域に進む。


中央部に近づくにつれ、床に異様な模様が現れ出した。

捩くれた、赤と黒の紋様。

大きな、人くらいの大きさがある紋様。


床に蹲る影がある。

だが、箱じゃない。そんな小さなものじゃない。


『神曲』に依れば、此処には神に逆らった3体の巨人が、鎖で封じられている。

その通り、3体の巨大な影がある。

近づくにつれ、その異形が明らかになって来る。


鱗で覆われた肌。

蝙蝠のような翼。

角と牙で覆われた頭部。


確かに巨大だが人じゃない。悪魔だ。

それも、今まで見て来た悪魔とは格が違う。

今までの悪魔が猫なら、コイツは虎だ。


その時、漸く判った。

床の紋様、その意味が。

隊長とナツの脚が停まる。

だが、引き返すには数歩、遅かった。


瞼が開き、紅い瞳が俺達を捕らえる。

牙に覆われた口元が吊り上り、固まる俺たちを嘲笑う。

「ミズ、タダ、"沈黙"を!」

隊長が叫んだ。


床の紋様、それは誰が描いたものでも無い。

この悪魔が叩き潰し、踏み潰した骸だ。


「トウは"極大消滅"。ナツ、コウは手前の1体に集中!」

俺は小剣を抜き、巨大な脚に身体ごと突進した。

ir-ste...(沈…)

詠唱が悪魔の視線を誘い、タダは恐怖に負け、声が途切れる。


床に張り付き紋様と化した骸は、例えこの悪魔を倒しても持ち帰れない。

復活など出来ない。

完全な死が、すぐ側にある。


ガキッ!


俺は小剣を突き刺そうとしたが、その鱗は想像以上に硬く、逆に小剣が根本から折れた。

ir-stem(沈黙)

ミズの詠唱が響き、光が悪魔に纏わる。


『tʃ-kɔ́ː-con()centração()

ミズの"沈黙"は効かず、悪魔の魔法が発動した。

バスケットボール大の氷塊が、凄まじい勢いで飛んでくる。


氷塊の1つが隊長の盾に当たり、盾を砕き突進の勢いを削ぐ。

悪魔に辿りついたナツの斬撃が、辛うじて鱗を切り裂き血が迸る。だが、明らかに浅手だ。

隊長の剣が突き刺さる。

同時に巨大な腕が隊長を襲い、嫌な音を立てて鎧ごと骨が砕かれる。


kiuɑ-ðŋ-(極大)divergên(消滅)cia」

トウの詠唱が響き、巨大な鏡球が3体の悪魔を覆う。


ヅゴンッ!


重い音が轟き、塵となり消える鏡球の中に、1体の悪魔が倒れる姿が見えた。

『tʃ-kɔ́ː-con()centração()

氷塊がナツの盾を壊し、腕を壊す。


口から血を吐きながら隊長が叫ぶ。

「"沈黙"と"極大消滅"ッ、尽きるまでやれ!」

後衛が詠唱を再開する。

その詠唱が終わる前に、隊長が悪魔の腕に吹き飛ばされる。


ナツが身を屈めた悪魔に斬りつけ、深手を負わせる。

相打ちとなり、ナツは右腕も砕かれた。

ir-stem(沈黙)

kiuɑ-ðŋ-(極大)divergên(消滅)cia」

ミズの"沈黙"は効かず、トウの"極大消滅"も無効化されたか、2体の悪魔は動きを止めない。


タダの呪文が来ない。


逃げ回る俺の視界に、革鎧を破られ血の海に倒れているタダが映った。

一瞬、俺の動きが止まり、そこを悪魔の拳が襲った。


盾も鎧も役に立たず、俺は左腕と肋骨が折れる音を感じた。

吹き飛ばされ宙を舞う俺の目は、両腕を潰されて、それでも立ち上がろうと足掻くナツを捕らえる。

未だだ。

未だ、終われない。


ir-kras()sen-kiuɑ()

ミズの詠唱がナツを包む。

ナツは両手で刀を振り下ろし、悪魔の首を断ち切った、かに見えた。

刀身は悪魔の首を途中まで斬り、そこで折れていた。致命傷を与えられない。


ir-kras()sen-ɔː()

俺は巻物を広げ、折れた肋骨を癒す。

ナツは脇差を抜き、再度悪魔の首を狙う。

そしてトウの詠唱が--


ir-stem(沈黙)

後1秒、1秒あれば


トウの詠唱が終わったのに。

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