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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第八圏 悪意の迷宮
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第八圏 悪意の迷宮2 -死亡-

本日は、日本側分隊で探索。

地下8階、第1玄室、阿諛追従(あゆついしょう)の扉前。

「前進する」

隊長が囁き、扉を蹴る。


扉が開き、閉まる。


怪物との遭遇は無かった。

第2玄室は第1玄室と同じような広い領域で、向こう側の壁は見えない。

右手法で探索して行くと、また鍵穴付きの扉がある。


扉の上には"Simoniaci"--沽聖者(こせいしゃ)の文字。

どゆ意味?

「坊主丸儲けって意味」

それは羨ましい。


隊長が蹴るが、やはりビクともしない。

第1玄室と同じ。ならば、中心部で戦闘し、箱を開けなくてはならない。

右手法を続け、第1玄室への扉に戻る。


「面積は、第1玄室とほぼ同じだ」

地図作成担当のトウが言う。

これも第1玄室と同じ。


「中央部に前進する」

暗闇に向け、歩んでいく。

見えるものは石造りの床と天井。

「そろそろ中央部だ」

トウの言葉と共に、床に蹲る影が見えた。


「箱だ」

「箱だな」

箱だね。


怪物ではなく、箱だけが置いてあった。

なにこの省力化。

いや別に、怪物と戦いたいワケじゃないけどさ。


解錠道具を取り出し、箱の前に座ろうとした俺に、天啓が閃く。

罠だ。

これは箱じゃない、ミミックだ。

解錠しようとする俺に襲い掛かる気だ。


「もし箱が動けば、すぐ攻撃してやるから心配するな」

ナツが刀を抜きながら言う。

「心配はいらん、早く開けろ」

開けなくばお前を斬る、とでも言いそうな冷たさである。


覚悟して針金を鍵穴に差し込む。

箱でした。

ミミックじゃなかった。

中には金貨と鍵が入っていた。


隊長の指示で、坊主丸儲けの扉に向かう。

鍵を使うと簡単に鍵は開いた。


扉が開き、閉まる。


怪物は出ない。

ミズが囁く。

「タダ、ナツに"回復"を」

「まだ大丈夫」

「僧侶系呪文が使えるかどうかの確認よ」


ir-krassen(回復)

何も起きない。

さてはタダ、丸儲けしたな。


「この玄室では、僧侶系呪文は使えないようね」

ということらしい。

「コウ、タダとミズに魔術師系巻物を」

俺だけ丸損である。


結局、この玄室でも怪物には遭遇せず、中央には箱だけ。

そして中身は鍵だけ。

なんか段々しょぼくなるな。

予算切れか?


次の玄室への扉の上には、"Maghi e indovini"--魔術師と書かれている。

おそらく、トウも呪文が使えなくなる。

怪物と遭遇した場合は、前衛3人の剣が頼りだ。


扉が開き、閉まる。


悪魔の群れが居た。

20名近くの群れ。但し手には得物を持たず、俺達を避けようとしている。

「攻撃開始」

隊長の声と共に俺達前衛が飛び出し、剣を振るう。


lá-muur(障壁)

タダの詠唱と共に、防護魔法が俺達の身体を覆う。

この玄室では使えるようだ。


ir-stem(沈黙)

ミズの呪文が悪魔から声を奪う。

i-ir(昏睡)

トウの呪文は予想通り発動しなかった。役立たずである。


呪文が使えぬ悪魔など、ただの悪魔だ。いや、楽な獲物だ。

悪魔は、斬れば血が吹き出て、倒せば骸が残る。

スプラッタムービーの様な光景だが、戦闘自体は難易度が低い。

数分後、息をしてるのは俺達分隊員だけだった。


--


その後、怪物とはほぼ遭遇しなくなった。

遭遇しても悪魔で、彼らは俺達を見ると即座に逃げて行く。

順調に探索は進み、変化が訪れたのは第7玄室だった。


玄室の中央部には、箱が置いてあった。

一応ナツと隊長が剣を構えていたが、ミミックじゃなかった。

ただ、罠だった。


箱を開けると、金貨でいっぱいだった。

この量なら、ひょっとしたらカツを復活させられるかも知れない。

後衛の3名にも手伝って貰い、皮袋に金貨を詰める。

あらかた金貨を取り出すと、箱の中に鍵と黒い小刀が見えた。


(つか)も鞘も、(つば)さえも黒1色。というか色が無い。

全ての光を吸い込むような黒い小刀だった。

呪われてる感じはしなかったが、慎重に摘み、皮袋に落とす。

そして鍵。

それが罠だった。


ガブッ


鍵を掴んだ瞬間、箱の内側に彫られた蛇の彫刻が鎌首を持たげ、俺の手に噛み付いた。

その牙から毒が、俺の血の中に注がれるのを感じた。


心臓の鼓動が1つ打つ度、俺の身体に毒が回っていく。

ナツが蛇の頭を切り落とそうと、切先を突き出す。

だが蛇は素早く牙を抜くと箱の彫刻に戻り、ナツの一撃を弾き返す。


ir-gif(毒消)

ミズの詠唱が聞こえ、魔法の輝きが俺の身体を包むが、毒は体内から消えない。

全身の筋肉が痙攣し、俺の意志通りに動かない。

俺は床に崩れ落ち、皆の蒼白な顔を見上げることしかできない。


視界に黒い斑点が浮かび、その数を増やしていく。

目の前にナツの顔が迫り、何かを叫んでいる。

ナツ、何を言っているか聞こえない。

聞こえないんだ。


痙攣のように息を吸う。

それが、俺の最後の呼吸になった。

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