第七圏 暴力の迷宮10 -手紙-
俺宛に小包が届いた。
小さいワリに重い。
送り主は、板倉健吾--って誰?
小包を開けると、中から重い箱と封筒が出て来た。
箱は、何やら封印めいた飾りが付いている。これを開けるのは後にしよう。
封筒を開ける。
達筆なその字を見た瞬間、送り主の見当が付いた。
ナツの親父さんだ。
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君には悪いことをした。
何も知らぬ君に、継がせてしまった。我々の神を。
何のことか分からないかも知れない。
夏海に聞いてくれ。あの子が全て説明する。
我が家は、代々この神を受け継ぐ為に在った。
私の人生、私の妻の人生もまた、幾分かはその為に在ったようなものだ。
それを不幸だと、私には思えない。
私にとってそれは自然なことで、それこそが人生だった。
だが、夏海はそうは思えなかったようだ。
神は、受け継ぐこと、続けることが肝心だ。
祭祀をこれまで通りに続けて行くこと。それが何より大切なことだ。
だが、もう良い。
私の上の代の者は、もう全て他界した。
私の下の代の者には、もうこのような人生は不幸に思えるのだろう。
我々の神など必要ない、そう夏海が思えるなら、それで良い。
神が居なくても幸せなら、それで良い。
君も夏海も自由だ。
継ぐも絶やすも自由にしてくれ。
君に継がせたのは、単なる私の我儘だ。
ただ私は、継がせられる者が、君が現れてくれて、嬉しかったよ。
ありがとう。
その箱の中に、御前様がいらっしゃる。
我が家が代々、受け継いで来た神だ。
それを継いだ家が津本となり、継いだ者が親父となる。
何のことか分かるまいな。夏海に聞いてくれ。
夏海を、私の娘を、宜しく頼む。
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箱を開ける。
箱の中に在る物を見て、全てが判った。気がした。
これが御前様。
400年、此れを受け継いで来たのか。
親父さん。申し訳ありません。
此れは、好きにさせて頂きます。
ちなみに娘さんは、宜しく頼まれても困ります。




