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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第七圏 暴力の迷宮
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第七圏 暴力の迷宮8 -壁画-

今日は米軍として探索。

いつもいるマークは居らず、替わりにナタリーが入ってる。

彼は見送りにも来てなかった。


マークはどした。

「ちょっと怖がっちゃって」

何を?

「ちょっとね」

口の固いナタリーである。


ともあれ第3環、男色の環リターンである。戻りたくない、正直なところ。

第3環は基本的に一本道であり、迷う恐れはない。

前回、悪魔の群れと遭遇した玄室前までたどり着く。


扉が開き、閉まる。


悪魔の群れが現れた。

ただし戦闘に入ろうとはせず、俺達を遠巻きにしている。

米軍は彼らを刺激せず、通り過ぎる。

ホッとした。

悪魔と戦闘するのは、ちょっとヤダ。


「コウは悪魔にも人権を認める派?」

ナタリーが囁く。

いや、そういうワケじゃないけど、悪魔は血が出るし屍骸が残るから気持ち悪い。

「じゃぁ、倒すこと自体は抵抗ないの?」

まぁ、人間じゃないからな。


扉が開き、閉まる。


前回、龍と遭遇した場所だ。今回は何も居ない。

この前、龍と戦った時の、あの時間が引き延ばされる感覚は何だったんだろう。

ラボで聞いてみたが原因不明。というか気のせい。死の瀬戸際によくある話だと言われた。


でも確かに、あの時の中を動き回れたんだ。

ひょっとして奥歯にスイッチが有ったりして!

鏡で調べたが、そんなモノは無かった。

ちょっと残念。

でも、死の瀬戸際だけに現れる幻なら、そんな目には2度と遭いたくナイ。


--


悪魔に避けられ、人型を倒し、探索を続けること数時間。

此処が最深部。そうナタリーは言う。

でも、何も出ないよ。

そう言おうとした時、そいつは現れた。


巨大な人型。

黒い金属製に見える身体の周りは、劫火に包まれている。

時間差で現れるなんてズルい!

だが、ゆっくりと現れてくれてるので、準備の余裕がある。


lá-muur-ɔː(大壁)

俺が巻物を広げ、防御魔法が発動する。

一拍遅れて、カーク達前衛3人が盾と剣を構え、突進していく。

遅いよ。油断してちゃダメだよ。


「tʃ-kɔ́ː-con()centração()

ナタリーの詠唱が終わり、氷の礫が巨人を襲う。

ir-stem(沈黙)

いかにも火系統の呪文を唱えそうな巨人、その呪文をキャリーが封じる。


--


やっぱり米軍は強い。

難なく炎の巨人を倒すと箱が出て来た。

開けると、中から出て来たのは鞭。

なんか、そのテの趣味のお店で出てくるような鞭。

で、コレどうすんの。


鞭を革袋に包み、持たされた。

この前の"めだい"みたいに、持ってるだけで力が抜けたり血が出たりはしないけど、気持ち悪い。

「皆、これを見てくれ」

カークの声に目を向けると、壁一面に3つの壁画が描かれていた。

スコットが監視役となり、他の皆がそこに集まる。

と、歌声が響いた。


--


「オテンペシャね」

ミズ、だから日本語でおk。


出口まで戻り、ラボで日本側分隊員を含めて検討会。

ミズに依れば、箱の中に有った鞭は、オテンペシャという名前らしい。

何でも、自分を鞭打つ苦行の道具とのこと。

「それにより、罪が赦されると考えられてるわ」

へー


3つの壁画は、キャリーがスケッチしている。

ささっと描いたのに、かなり上手い。画家になれそうだ。


「1つ目の絵は、神父から何かを授かっている日本人ね」

確かにそのように見える。

「2つ目は、何かを踏んでるような日本人」

手を胸にあて、右足で何かを踏みつけている。

「3つ目が、背中に傷が付いた日本人」

こんな簡単な謎解きなら、直ぐ判る。


1つ目に"めだい"を、2つめに"踏み絵"を、3つめに"鞭"を使うんだろう。

どうやって使うかは分からんが。

「だが、気になるな」

トウが言う。


「1つ目の絵、何かを授かってる日本人が2人居る」

確かに、ひざまづき手を差し伸べてる和服の男が2人。

「だが、"めだい"は1枚だけだ」

どっちに渡すか迷うよね。


「問題は、もう1つ有るわ」

キャリーが言う。

皆が絵の前に集まった時に流れた歌声。

ナタリーがラボで歌ってくれた。


"あー前はなぁ前は泉水やなぁ

後ろは高き岩なるやなぁ

前もな後ろも潮であかするやなぁ"


よくあの1回だけで覚えられたなー。

「この歌は、カクレキリシタンに伝わる祈祷文(おらしょ)。さん・じゅあん様の歌、の筈なんだけど」

曲が違うらしい。全然。

ひょっとしてナタリー、音痴?

そう言うと、ナタリーに睨まれた。


「デモ、流レタノハ確カニコノめろでぃデス」

スコット、実は趣味でジャズピアニストもやってるらしい。

音感には自信アリ。

じゃぁ、ここにも謎があるのか。


んー。

シャーロック・()()ムズとしては、まだ情報が足りない。結論を出すには早すぎる。

「でも、もう探索する場所は無いですよ」

あれま。


誰か専門家の手助けが必要だ。

ミズの(つて)で、潜伏キリシタンに詳しい人を呼べない?

「先生が、その第一人者です」

あれま。


そうすると、もう俺に心当たりは1人しか居ない。


--


「分かってる」

いつものグラウンドの隅。

ワガハイを撫でながら、ナツはそこに居た。


無理に連絡取る必要は、無いぞ。

別にこのまま謎が解けなくたって、良いんだしさ。


「連絡取りたくないのは、単なるアタシのワガママ」

それに、とナツは続け

「今更、連れ戻されることも無いっしょ」

おう、もし連れ戻されても、取り返しに行ってやる。


隊長に具申してくる。

そう言って、ナツは走って行った。


この謎を解くための情報。それを与えてくれる者は、多分1人だけだ。


ミズ以上に潜伏キリシタンに詳しい者。

400年前の信仰を受け継いだ者。

未だ残る、隠れキリシタン。


ナツの父親だ。

なお、「WG報告 -模倣-」の通り、迷宮内でコウの脳は、ナノマシンで代替され、思考が加速されています。

ラボはそれを推測していますが、コウのモチベーションを考慮し、はぐらかしています。

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