第七圏 暴力の迷宮6 -加速-
第3の環、男色の環。
ヤだ。イヤすぎる。
もしそのテの怪物が出てきたら、撤退しよう。
いや、後ろを見せるもの怖いな。
「状況を開始する」
うぇー
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"A Dio"
「神」と書かれた門を潜る。
と、いきなり悪魔の群れに遭遇した。
「ir-stem」
タダが素早く詠唱する。
悪魔は口をパクパクさせるだけで、声が出せないでいる。
やるじゃないか、タダのくせに!
そこに、隊長とナツが飛び込んで蹂躙。
俺も1体倒した。
俺が倒した悪魔は胸の部分が盛り上がっており、身体は鱗に覆われてるが、ちょっと艶かしい。
悪魔にも女性って居るの?
「居るんじゃないですか?魔女って言うくらいですから」
そう言えば、ウチにも1人居る。美魔女が。
この環は、第1の環と似た作りになっていた。
狭い通路が伸び、所々に玄室が在る。
但し、通路の下にはマグマがボコボコ言ってる。
もし落ちたら一巻の終わり。復活させようにも、骨まで溶けて残らない。
すみやかに通路を通り過ぎ、玄室に迫る。
扉が開き、閉まる。
怪物は居なかった。
扉は、入ってきた所を含めて3箇所。
1箇所は開けることができず、もう1箇所の前で構える。
「前進する」
扉が開き、閉まる。
鱗が見えた。
だが、悪魔じゃない。
もっとでかい。
「防御!」
隊長の声が響き、条件反射的に盾の後ろに身を隠す。
あ、トウが俺の後ろに隠れた。ズルい!
劫火、いや焔で作られた竜巻が、俺達を襲った。
俺は半死半生。トウはもうヤバい。
「ir-krassen-kiuɑ」
「lá-muur-ɔː」
タダの"全快"でトウは命拾い。
ミズは俺を見捨てて"大壁"。ひどい。
盾から目を開けて見ると、龍が居た。
ドラゴンだ。
いつぞやの子供竜、コドモオオトカゲとは違い、可愛げの欠片もナイ目。
そして牙の中から覗く焔は、比べ物にならない程の凶悪さ。
「tʃ-kɔ́ː-concentração」
トウは1日1回のみの呪文、氷斬を詠唱。これは効いたっぽい。
ナツが飛び込み、刀を横に薙ぐ。
カィンッ!
げっ、刀が折れた。
すかさず脇差に持ち変えるナツ。だが攻撃力低下は否めない。
一方、俺の突きは、上手く鱗の隙間に入った。
だがなんせ小剣、効果はそれほどない。
その上、龍の目が俺を捕らえた。
よくもやりおったな、ワシは怒っておるぞ。
そんな目で俺を睨む龍。
いや、どっちかって言うと、トウの呪文の方が効いたんじゃない?
俺を的にするのは、不合理だと思うなー。
だが無理を通せば道理は引っ込む。
敢えて不合理を押し通し、龍は俺に焔を吐くべく、息を吸い込む。
狭い通路に逃げ場はナイ。
とはいえ、このまま丸焼けになるワケにはいかない。
俺は龍に向かってダッシュ。
龍自身の尻尾を盾にする。
自分の焔で、尻尾を丸焼きにするがヨイ。
グォン
焔は吐かれず、尻尾が振り回される。
そりゃまーそーだよね。
そんなバカじゃないよね。
幸い、尻尾と通路の間に隙間が開き、そこに滑り込む。
龍は俺1人を目の仇にして、跳ね飛ばそうとする。
そうはさせじと逃げ回る俺。
ランニングノルマのおかげか、脚がつることは無い。
だが、次第に追い詰められていく。
「イァアアッ!!」
気合一閃。
隊長の"悪魔の剣+3"が龍の胴を貫く。
貫かれた部分から、土に還っていく龍。
まだ生きている龍の頭部は、俺を見据えながら巨大な口を開けた。
喉の奥に渦巻く焔。
それが、スローモーションのように、俺に伸びて来るのが見えた。
死の直前、時が引き伸ばされ、全てが遅く見える。
そんな話を良く聞く。
今の俺が、正にそうだった。
だが、1つだけ違う部分があった。
俺は動けたのだ。
引き伸ばされた時の中、俺だけがゆっくりと動いている。
手足に全力を込め、龍の胴を飛び越え、尻尾を蹴り飛ばし、龍の頭部に向かった。
空手で言う三角飛びだ。
迫る焔をギリギリでかわし、通路に転がる。
ギンッ
龍の瞳だけが俺を追う。が残念、時間切れだ。
その瞳ごと龍は頭部まで土塊に還り、崩れ落ちた。
"コドモオオトカゲ"については、「第五圏 憤怒の迷宮1 -禁魔-」参照
次回は7/8頃の投稿です。




