呑み会 一次会 -入隊-
「それではミズの復活と、コウの参加を祝って」
「「「乾杯~!」」」
コウって誰?
俺?
ミズさんの復活から1日経ち、全快した彼女を含めて俺達は基地内の居酒屋に集まっていた。
メンツは俺、ミズさん、タダ君と、ローブの眼鏡男ことトウ氏。
キンキンに冷えたジョッキに、これまた冷えひえのビールちゃん。
く~~っ!染みる~っ、五臓六腑に染み渡る~っ。
昨日、ミズさん復活の後で司令官に説得され、探索に参加することになった。
復活するための装置は、箱の中の金貨を必要とする。
俺が箱を開けたから、ミズさんは復活できたらしい。
合ったとき既に死んでいた"彼"も、別の分隊が探索して回収したと聞いている。
鍵師の技を必要としてくれる人がいるなんて、思ってなかった。
人類を超えた文明に触れるなんて、想像もしてなかった。
その上、仕事も、出さなくちゃいけない報告書も、気にする必要は無いと言って貰ったし!
怪物は怖いけど、復活できるなら我慢する。
完全に死んでいたはずの彼女は、ビールに頬を染め、朗らかな笑みを浮かべていた。
ミズさん、身体はもう大丈夫のようですね。
「ミズって呼んで。この小隊では、お互い呼び捨てタメ口が慣わしなの」
「タダは先生と呼んでるし敬語だけどな」
「しかたないじゃないですか、担当教官ですよ! 僕の卒業判定する人ですよ!」
3人とは、既に名刺交換済みだ。タダ君--タダは名刺なかったけど。
ミズ--鍋島瑞希さん、熊本大学 文学部 歴史学科 教授。
タダ--寺沢忠志君、同4年生。
トウ--立花藤次さん、九州大学 理学部 数学科 准教授。
正直、そんなアカデミックな方々とは思わなかった。
トウは丸眼鏡に長い髪を後ろで縛った自由人な感じだし、ミズはつややかな黒髪で妙に色っぽくまるで熟女パ…いやなんでもない。
皆の呼び名は、名前の上2文字を取って呼んでいるらしい。
俺は益田浩二だから、コウなのか。
俺も含めて4名とも民間人だが、便宜上、入隊して自衛官になっている。
けど4人ともまあ、迷彩服が似合わないことと言ったらもう。
「隊長だって、"先生"で良いって言ってたじゃないですか」
タダの言い訳は続いていた。
「そもそも僕は、先生に比べて段違いに若いんで…すか…ら」
急に居酒屋に冷気が立ち込め、タダが口ごもる。
ミズの目が怖い。とても怖い。
「それにしてもコウ、よく入隊してくれた」
トウ、GJ!
よくぞ、この凍りついた雰囲気の中、話を変えてくれた!
「そうよねぇ、私だったらとても出来ないわ」
え?
だって皆さん、入隊してるよね?
「ま、ありゃ半ば騙されたな」
「司令官の口車に乗せられました」
「まさか、怪物と戦うなんてねぇ」
あれ?
聞き捨てならない言葉がある。
司令官の口車?
「あー、この顔は乗っちゃいましたね口車」
「人知を超えた文明の研究として勧誘されたけど、やってるのは戦闘だしな」
「ホントよね、死んだら復活できるとは限らないしねぇ」
更に聞き捨てならない言葉がある!
復活できるとは限らない!?
「あー、聞いてないって顔ですね」
「成功率は、ワリと高いんだけどな」
「私は幸運だったわ。今回ので2階級特進ってするのかしら?」
聞いてない。
聞いてないよーっ!
呆然とした俺の目に、TVのニュースが映った。
『東京都練馬区に住む会社員、益田浩二さん(38)が、旅行先で消息を絶ったとの発表がありました』
なんですとーっ!




