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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第七圏 暴力の迷宮
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第七圏 暴力の迷宮1 -転職-

俺が米軍パーティで地下6階を探索している間、そして営倉に入っていた期間、日本側分隊は何もしてなかったワケじゃない。

地下5階を探索して、経験を積んでいた。

前衛になってたタダが死ななかったのは、幸いである。


分隊は、最短経路を通り地下7階に向かう。

正直、ハードルが高い。

そして、地下7階でもローブ姿が出たらどうする。

だが、米軍に全てを委ねることは出来ない。


軽トラから装備を降ろし、身に付ける。

地下6階で箱から出た装備は、ラボの調査の結果、かなり良いもの揃いだった。

俺が装備できるものは少なかったが、米軍の余りで他の分隊員の装備は強化された。

タダと装備を相互に確認し、振り向くと武士が居た。


いょおっ、ポンっ。

そんな効果音がしそうな感じで、鎧兜に大小を腰に差した武士が立っていた。

ミズが装備を確認し、OKと背中を叩いている。

もしや、ナツ?


「火力を増やすために、と言われてな」

ナツに、魔術師の呪文を教えたのか。トウ。

「ああ、隊長も承諾の上だ」

確かに火力は増えるだろう。だが、"侍"の装備は"戦士"より弱い。


「覚悟の上よ」

ナツが俺を見据え、言う。


「心配しないで。そもそもコウの方が弱い装備じゃない」

それに、とナツは続ける。

「この装備は軽くて強い。怪物の攻撃を弾くだけじゃなく、かわせる」

だがナツ、それでも--


「状況を開始する」

俺の逡巡を断ち切るように、隊長が告げた。


--


"侍"の火力は確かに凄まじい。

地下6階に行くまでの間でも、それは判った。

魔法も使えるが、それ以上に日本刀の力が大きい。

刀身が軽いのか、1回の踏み込みで繰り出す斬撃の数が多い。

総合的な攻撃力は、カークの"フードプロセッサー"に匹敵するだろう。


ただ、"侍"の防御は弱い。"盗賊"に毛が生えたくらいだ。

そして防御主体の俺と違い、ナツは攻撃主体。

彼女は何度も傷を負い、時折タダが魔法で癒していた。


魔法で癒せると言っても、斬られれば痛いし、焼かれれば熱い。

そこまで火力を求めるならいっそ、タダの代わりにナタリーを。

いやそれはマズい。

何故か判らんがマズい気がする。


俺の煩悶を他所に分隊は順調に降下を続け、地下6階に至った。

先頭には俺が立つ。

もしローブ姿に襲われた場合、隊長とナツは刃を向けられない恐れがあるからだ。

いくらラボが、上官が、国家が保証しても、人間それも自国民の姿に刃を向けて平静でいられる者は限られる。

少なくとも、隊長もナツも違う。


幸いにして、地下6階で遭遇したのは悪魔の群れだった。


俺が踏み込み、先頭の1体に切りつける。

ɔː-zái-ir(大滅)

ir-stem(沈黙)

トウとタダが詠唱し、色鮮やかな地下の街に劫火が舞う。

ir-stem(沈黙)

少し遅れてミズの詠唱が終わり、多くの悪魔の魔法を封じた。


ズパァアンッ!

ナツの一撃が、悪魔1体を斬り裂く。

返す刀で2体目を屠る。

隊長も着実に戦果を挙げていく。


最後の悪魔を倒すと、俺の出番となる。

かなり大きい箱が置かれている。

解錠には大した手間はかからなかったが、中身が問題だった。


うあー

「いかにも"呪い、かかってます"って感じの剣ですね」

タダの言うとおり、装備すれば呪われ、その場で死んでしまいそうな雰囲気の大剣が出てきた。

触らぬよう革袋に包み、慎重に持ち帰ることにする。


「早く行きましょう。この匂いで、気持ち悪くなりそう」

ミズが言う。

悪魔の血の匂いが充満して、確かにキツい。

皆様、階段はこちらでございます。お足元にお気をつけ下さい。


--


"Al prossimo"


地下7階の階段を降りると、目の前にそう刻まれた門が有った。

「"隣人"という意味よ」

ミズが教えてくれた。

「この門に入らず、先に通路を探索することを具申するわ」

何か思うところがあるのか、ミズは自信たっぷりに言い、隊長もそれを受け入れた。


"A sé"

「これは"自分"。すると次の門は、"A Dio"--"神"ね」

ミズは腰に手を当て、皆に宣言した。

「つまり、この迷宮は9階層よ」


俺はトウを見た。トウも俺を見ていた。

2人とも無言だったが、互いに何を考えているかは判っている。


囚人のジレンマでは、裏切りもナッシュ均衡だ。有限ゲームなら特に。

迷宮が何階層か判ってる場合は、どこかの時点で裏切りを選んだ方が有利だ。

迷宮が9階層だと判った以上、どこかの時点で米軍は裏切りを選ぶ可能性がある。

"囚人のジレンマ"については、「第三圏 大食の迷宮6 -神曲-」参照

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