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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第一圏 辺獄の迷宮
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第一圏 辺獄の迷宮4 -勧誘-

「状況を終了する」

洞窟に細川さんの声が響く。

周りには迷彩服を着た大勢の自衛官。

--助かった。


ふらふらと、明るい外に向かい歩いていく。

太陽だ、日の光だ。外ってすばらしい。

と、いきなり物凄い重量が乗っかってきて、地面に崩れ落ちる。

何だ? 子泣き爺ぃか?

じたばたと転がり上を向くが、誰もいない。


「外に出る前に、装備は外さないと」

眼鏡男が言う。もうローブは着ておらず、迷彩服姿だ。

彼に手伝って貰い、装備を外す。

先ほどまで意識してなかった革鎧や盾、それらはまるで鉛ででも出来ているかのように重かった。


眼鏡男が手伝ってくれて革鎧を転がしていく。

と、急に軽くなる革鎧。

なぜだ。

やっぱり子泣き爺ぃが憑いてるのか?


他の自衛隊員が引きずって来てくれた装備を持ち上げ、軽トラに乗せる。

俺の右から褐色の手が伸び、西洋甲冑の兜を荷台に置いた。

褐色の手は迷彩服と甲冑につながり、背の高い若い女性の顔につながっていた。


自衛隊にも美人はいるんだなー

そう見惚れていたが、突然気付いた。

誰?

これ誰?


状況を整理する。

1. 6人の内、3名が西洋甲冑を纏っていた。遺体の"彼"は兜だけだが。

2. 3名の内、1人は細川さんでもう1人が遺体の"彼"、最後がロボ

3. 右の美人さんは、細川さんではなく遺体でもない


結論を述べる。

ロボ?

この美人があの不気味なロボ!?

呆然と立ち尽くす俺をギロッと睨むと、ロボの中の人は奥の方に向かって行った。


「益田さん」

衝撃を隠せない俺に、細川さんが声をかける。

既に細川さんも迷彩服姿だ。


「色々ありましたが、無事に帰って来れました」

無事?

無事なのか?

2名も死んだのに。

「今回の件に関し、司令よりご説明します。ご同行を」


--


プレハブの建物に、司令室があった。

俺の目の前には、机に座った司令官。

俺の左後ろには若い自衛官。

「お体はご無事ですか?」

司令官の声は、朗々たるバリトンだった。


「ほぅ」「なるほど」「そうでしたか、それは大変でしたね」

司令官の合いの手に乗せられ、気付くと俺はバイクごと落ちた後のことを全て話していた。

あれ、元々は説明を受けるために来たんじゃなかったっけ?


だが、全ての話を終えると、司令官は言った。

「ふむ、既に貴方は、我々とほぼ同じだけの情報をお持ちだ」

へ?

いやいや、何言ってるんですか。何も知りませんよ分かりません。

「我々も、ほとんど解っていないのですよ」


数ヶ月前、山崩れが起きて洞窟が現れた。

付近の住民が洞窟の中に入ってみると、それっきり失踪した。

地元の警察官が洞窟内の捜索に赴いたが、同じく失踪。

レスキュー隊が向かうも、洞窟内では無線等が使えなくなることが判り、一旦撤退。

「色々ありまして、我々にお鉢が回ってきたわけです」


様々な分隊を潜らせ、科学者を呼び、調査したそうだ。

「あの中では、銃器や電子機器が使えません」

火薬はゆっくりとしか燃えず、スマホは電源が入らず、懐中電灯も点かないらしい。

「更に、貴方も遭遇した怪物が居ます」

いったい中で何が起きているのか、暗中模索五里霧中らしい。


「あの怪物どもを、外に出すことはできません。決して」

確かに、そんな事になれば大惨事だ。

「一方で、現代科学を超えた文明が眠っている可能性があります」


俺以外の6名が、何処からあの通路に入ったのか。

瞬間移動(テレポーティション)

何らかの方法で、瞬間移動が実現されてる。そう考えなくては説明が付かないらしい。

装備の重量変化もそうだ。外では数10kgある武器や装備が、迷宮内では軽々と持ち上げられる。

現代科学では説明できないことが山盛りらしい。


「米軍の協力もあり調査を進めています。しかし」

と司令官は俺と目を合わせる。

「本件については、彼の国ではなく我が国が主導権を取りたい。そう思っています」

そりゃ日本国内のことだし、そうだろう。がんばれ自衛隊。

「貴方の協力を得て」


ん?

ちょっと待って。最後の一言。

何、何で俺?


「貴方は、解錠の技能をお持ちだ。我々が持たない、我々が必要とする技能です」

いや、いやいや、ダメそれ。ゼッタイ。

あんな危険な場所、どんな条件出されても二度と行きたくない。

苦しみながら死に行くミズさんの姿は、今も瞼の裏に残っている。冷たく力無い身体の感触は、まだ背中に感じられる。


--


「ちょうど今から始めるようです」

俺は司令官と一緒に、洞窟入り口にあるフロアに来ている。

フロアは様々な装置が置いてあるが、そのデザインはどう見ても日本製じゃない。いや、人類の物ですら無いかもしれない。

フロアの中心には大きなカプセルがあり、そこにミズさんの遺体が安置してあった。


白衣を着た科学者っぽい人々が、忙しそうに動き回っている。

それぞれメモを取ったり、写真を撮ったり--ん?

「フィルムを使ったカメラは、使えるんですよ」

なるほど。


科学者達の動きが落ち着く。

ミズさんの前に立つ白衣の男が、手を挙げる。

lá-leven(復活)


光が溢れた。


ひゅうぅ…

誰かが息を吸う音が響く。

誰か、じゃない。ミズさんだ。

死んでいたはずの彼女が、息を吸い込んでいる。


すかさず白衣の男が、彼女の口元に呼吸器を近づける。

彼女の手が震え、持ち上がり、呼吸器を持つ。

そんなバカな…

思わず声に出していた。


タダ君が近寄り、涙ぐみながらミズさんの手を取る。

ミズさんの微笑みを見ながら、俺は腰を落としていた。

腰が抜けたのだ。


そんな俺の視線をミズさんが捕らえ、

彼女は静かに微笑んだ。

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