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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第六圏 異端の迷宮
59/106

呑み会 十五次会 -泥酔-

トウから、居酒屋(ぱらいぞ)で呑んでると連絡が来た。

いそいそと向かう。

個室の扉を開けると、いつもの3人とナツはともかく、劉さんが居るのが気になった。

トウが振り向く。

「来たか、ヘタレコウモリ」


ちょっと劉さん、どゆこと?

患者の情報を漏洩しちゃうなんて、医師の倫理はどこへ行った。

「お前は患者じゃない。面会者だ」

ひどい。


「そうか、コウってヘタレなんだ」

くぷくぷ笑いながら、ナツが言う。

「ううん違うの。コウはナタリー以外に、好きな人が居るのよ」

みみみミズ!

いや、ミズさんッ。そのネタは今、この状況で言うべきネタではありませぬ。

こればっかりはご容赦を。ひらに。


ほほう。

そんな目でナツが俺を凝視している。

目は俺に据えながら、口は「誰っ、誰っ?」とミズに囁きかけている。

「どっしよーかなー」じゃありませんよミズさん!

こんな状況でそんな御無体なこと披露されちゃったら、俺は明日からどうすりゃ良いの。


「ミズ、そのくらいにしてやれ」

トウ様がフォローに回ってくださった。

ありがとう。このご恩は当分忘れません。

とりあえず、さっきヘタレ言ったのは許す。


「そうだな、その話はコウを酔い潰してからだ」

劉さん、アンタは許さない。ゼッタイにだ!

だがとりあえず乾杯はしてやる。ありがたく思え。


ごっふごっふごっふ。

呑まなきゃとてもやってられねー

だが待て。

酔い潰れたら劉さんに何言われるか判らん。いや判るが判りたくない。

ここはセーブだ。


こっそりとホッピーの中身抜きを頼み、万が一にも潰れないようにする。

心頭滅却、精神集中。

この場でミスは許されない。

「なぁ」

耳元で囁かれた俺は飛び上がった。座ったまま。


「誰よ、その人。手伝うよ。手伝っちゃうよ、アタシ」

ナツが爛々とした目で俺の横に居た。

ちょっとミズ、この人何とかしてください。

「あらナツ、貴女コウを同僚に薦められるの?」

ちょっとミズ、話を進めないでください。


「悪い男じゃ無いと思ってる。まぁ、女を見る目は無いけど」

豪快にジョッキを呷るナツ。ビールおかわり。

「ふ~ん。じゃ、もしコウから迫られたら、どうする?」

みみみミズ、なんてコトを!

でもちょっと知りたい。かも。


「ダメ、却下」

急に蔑んだ目で俺を見るナツ。

「こいつ、おっぱい星人だから」

いつまで引きずるそのネタ。


「それがねー」

ミズ、もう許して。お願い。

「コウの想い人、ナタリーと全然別のタイプなのよ」

そっちでトウとタダが腹を抱えて、のたうち回ってるんだけど。


「へぇ、どんな感じの女性(ヒト)?」

誰かある、ナツを止めろ!

「えーと、ボーイッシュな感じで、スレンダーな美人よ」

「なにそれ、おっぱい星人のクセに」

ミズさん、ご存知だろうか?

貴女は今、非常に微妙な状況に追い込んでいる。この俺を!


俺の顔は酔ってもいないのに赤くなっている。

耳は、今にも火が点きそうだ。

一方、肝は冷えひえである。

胃には穴が開きそうだ。


「アンタは、おっぱい星人としての自覚が足りない!」

ビシィッ!

そんな感じで俺に指を突きつけるナツ。

さすがに、ここに至って俺も気付いた。


ナツは酔ってる。それも泥酔だ。


いったい彼女に何杯呑ませた?

「まだそれで2杯目だけど」

弱っ。

「なにをゆー。アタシまだ酔ってないよ」

べろんべろんだ。


「ああん、アタシのビール取ったー」

いつの間にか2杯目のジョッキを干し、おかわりまで頼んでいたナツから、ジョッキを奪う。

これ以上、こいつに呑ませるワケにはいかない。

「なんか保護者みたいね」

うるさい。


--


その後、酔いつぶれたナツを背負って、女子営舎に行く。

女性としては重いはずだが、ここ数ヶ月、鬼軍曹に鍛えられた俺の足腰は、このくらいなんとも無い。

ちなみに背中に当たる感触は、なんにもナイ。


「コウが来てくれて良かったわ」

えーよござんしたね。

さんざん玩具にされました。

「ナツ、まだ落ち込んでるのよ。たとえ中身が怪物だったとしても、あの子を斬ったことで」


じゃぁしょうがない。玩具にされてもガマンしよう。

「貴方は意外とタフよね」

そうかな?


タフというのとは、ちと違う。

なぜか他人事のように思えるんだ。迷宮内でやったことは。

そんな事は、ミズにもナツにも聞かせられないけれど。


「ちょっとここで待ってて」

誰か、手伝ってくれる人を連れてくる。

そう言って、ミズは女子営舎の中に入って行った。

夜風がそろそろ冷たくなる季節だ。

早く人を呼んできて欲しい。


だって背中の感触が寂しいんだもん。

もし背負ってるのがナタリーだったら、遅い方がヨイと思った。かも。


「んー」

耳元で声がする。

起きたのか、ナツ。

「すきよ」


幼子のような声だった。

首筋に冷たい涙が触れる。

「カツ…」


夜風が冷たい。

ミズ、早く人を呼んできてくれ。

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