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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第六圏 異端の迷宮
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第六圏 異端の迷宮7 -唯人-

動けるなら、ちょっとラボまで来てくれ。

医療棟で寝てた俺に、劉さんから伝言が有った。

まだフラフラするが、行けなくはない。


ラボ内の医務室で、白衣姿の劉さんがベッドに付き添っていた。

ベッドの中には、点滴を受けているナタリー。


ナタリーの顔は蒼白で、頬には涙の跡がある。

「彼女は地下6階で…一種の麻薬を使った」

なんだって!?

「地上に戻り、拮抗剤を投与するまで感情を封じる薬だ」


私が言ってやるのはここまで。後は自分で言いな。

そう言って、劉さんは席を立った。


何故そんなことを。そんな思いを、俺の目から読み取ったんだろう。

「誰か1人は正常な判断力を持ってなければ、還って来られない」

ナタリーはそう呟く。


そのために俺が居たんじゃないか。

「貴方では戦略的判断が出来ないでしょ」

震えながらウィンクされても、魅力的に見えない。

「それに切り札は自軍の者じゃないと、ね」


あの若造(特戦)が日本側の最終手段なら、ナタリー(デルタ)は米軍側の最終手段。

これでダメなら後がないスペードのエース(切り札)

「ここでのことは他言無用でお願い」


切り札の限界は、余人に知られてはならない。

切り札を頼りにしている人々の心が、揺れてしまうから。

だから、彼女は超人でなくてはならない。

限界など無いように、振舞わなくちゃならない。


ナタリーがスペードのエース(切り札)なら、俺は何だろう?

そんな軽口を叩きながら、俺は差し出されたナタリーの手を握る。

「そうね、貴方は黒札にも赤札にもなる、変わり身の早いジョーカー(ワイルドカード)

戦力的にはクラブの2な気もする。


急に手を引かれ、ナタリーの上に倒れこむ。

ベッドに手を突き何とか衝突は逃れたが、胸と右腕にナタリーの大っきな胸があた、あた。

首に手を回され、更に引き寄せられる。


これはもう、行っちゃって良いよね!

ちゅーとか、それ以上のオコナイしちゃって大丈夫だよね。

最後まで行っちゃってイイんだよね!

さようなら清らかな日々。

俺は今、魔術師の道を捨てるぞ!


だが、ナタリーの背中に回した腕。俺の首に背中に回された冷たい手が、容赦なく伝えてくる。

ナタリーの震えを。恐怖と後悔を。

超人なんかじゃない、唯人のナタリーを。


--


「ヘタレ」

ナタリーが眠った後、痺れた腕を揉みながら医務室を出た俺に、劉さんが言う。

つか聞いてたのかよ!

「大丈夫、話し声は聞こえてない。ベッドの上で動けば振動は伝わるがな」

ここもプレハブ作りだからなー

って、そこまで見届けるつもりだったのかよ!


益田浩二38歳独身。

清らかな身体のまま40を迎えたくない、今日この頃である。

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