第六圏 異端の迷宮6 -超人-
俺はベッドに寝かされたまま、司令室に連行された。
両脇にいるのは、司令と若造。
シュールだ。
そしてあんまりだ。
綺麗ドコロの女性自衛官との営倉入りは、どうなったのか。
「まだ軍法会議前なので、今のところ君は自由の身だ」
地下6階の探索が終わるまで軍法会議は保留。綺麗ドコロも保留。
司令官による尋問は、そりゃ非道いものだった。
おだてたり唆したり絶妙な合いの手を入れたりされ、俺は全てを吐いた。
今や俺の今日の探索に秘密はナイ。
革鎧を脱ぐ時に強調された、キャリーの胸の想定サイズまで吐かされた。
なんか悔しい。
あの量感は、俺の心にそっと秘めておこうと思ってたのに!
悔しまぎれに、2人に言った。
ナタリーが何者か、司令なら判りませんか?
そこを質問をされるとは思わなかった。そんな驚きが、2人の顔に一瞬現れる。
「想像でよければ」
聞かせて頂きたい。是非。
米陸軍内に対テロ特殊部隊がある。
第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊。
「一種の超人だ」
常に笑み以外の感情を見せぬ若造が、その時だけ少し悔しそうな表情を見せた。
「彼女は、その超人の1人だ」
「君が入隊後、米国から1名増員を求められた」
日本側だけ7人はズルいと言われたんですね、わかります。
「そして来たのが彼女だ」
軍隊というのは、なんだかんだ言っても「俺強ェ!」な者が集まる。らしい。
階級も重要だが、個人としての強さがそれ以上にモノを言う。特に前線では。
ひょっとして、カークやマッコイが訓練で彼女にボロボロにされたとか?
「いや、彼女に腕試しを試みた者は居ない」
と、司令官は若造に目を向ける。
「一目見れば判る。アレに手を出すのは相当なバカだ。彼女は--」
若造はいかにも不本意だ、という顔をして
「化物だ」
と吐き捨てた。
「"魔術師"は死亡率が高い」
司令が後を引き継ぐ。
「だが彼女は、いきなり地下2階の探索に同行し、無傷で還って来た」
ほとんどの防具が装備が出来ない魔術師は、ゾンビの1撃ですら死亡する。
特にレベルが低い時は。
なのに、いきなり地下2階はちょっとどーよ。ねぇカーク隊長!
ナタリーに厳し過ぎない?
貴重な美人さんだよ。しかもスタイル抜群の。
しかもひょっとすると、俺に気があったりなんかしちゃったりして!
「あんな化物を女として見れるのは、相当なバ--」
「これこれ、友軍の兵士にそんなことを言ってはいけない」
この若造、バカって言おうとした!
しかも、俺の方見ながら言おうとしてたー
俺から言わせれば、多少強かろうが彼女を女として見れないなんて男じゃない。
強いなら、ナツだって強い。俺よりずっと強い。
俺が戦えば、ナタリーだろうがナツだろうが倒される。
でも彼女達は女性だ。自分より弱い者にしか惚れないなんて、心が狭い。
更にナタリーには、ナツに無い魅力がある。
まぁナツには彼女なりの魅力があると、認めてやらんではない。
俺は心の広い男なのだ。
若造、お前はまだまだ未熟だ。未熟者だ。
「益田2士は強い女性がお好みなんですよ。彼女しかり、板倉1士しかり、ね?」
益田浩二2等陸士とは、誰あろう俺のことだ。
板倉夏海1等陸士とは、ナツこと鬼軍曹のことだ。
でもちょっと待って!
なぜそこでナツが出て来るの?
それも俺が好意を抱いてるみたいな文脈で。
断然抗議しようと口を開いたが言葉は出ず、口をパクパクさせる俺は、衛兵に医療棟にドナドナされた。




