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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第六圏 異端の迷宮
55/106

呑み会 十四次会 -親戚-

俺が目覚めた翌日、あの子の血液検査が終わった。

天然痘ウイルスは検出されなかった。

念のため1週間は隔離を続けるが、まず大丈夫。

一気に皆の緊張が緩んだ。

特に劉さんがひどい。


俺達の事を放ったらかし、一日中なにやらやってる。

面会室の予約表には劉さんの名が並び、数少ないPCは独占状態だ。

たまに呑みに誘っても、まるで乗ってこない。


なので、いつもの民間人4人だけで缶ビールを開けている。

「劉は、ヤツなりに俺達の事を思ってるんだよ」

トウが擁護する。

「迷宮で遭遇した子が何処から現れたのか。それを調べようとしている」

迷宮から現れました。

「そうじゃなく」


「DNAからあの子が日本人じゃないことを、示そうとしている」

へー

それは大和民族の遺伝子がうんたらかんたらで?

「民族は文化的な区分けで、DNAは関係ないらしい」

そなの?


私も聞いた話なんだがな、とトウは続ける。

「大和民族ってのは、"日本語を母国語にしている人々"くらいの意味らしい。だから、もしナタリーの母国語が日本語なら、彼女は大和民族になる」

いや、それはナイ。

いくら美人でも、それだけは認められない。

あんな巨大な胸した大和撫子は居ない。


--


人の遺伝情報は、細胞内のDNAに書かれている。

その情報は、2人の親からだけ子に受け継がれてる。3人目の情報が入り込むことはナイ。

だからDNAを調べれば、血の繋がった子かどうかが判る。

「劉はその方法で、彼女の親戚を探している」


「でも調査のために、日本人全員のDNAが必要じゃないですか」

まさか国民全員にDNA検査を受けさせるワケにはいくまい。

「お前らだって、健康診断とかで血液取られてるだろ?」

トウがとんでもないことを言い出した。


「今はDNA解析機(シーケンサー)も安くなっててな、5分くらいで検査(スクリーニング)が出来るらしい」

いや、出来るからってやっちゃダメでしょ。

許可取られた覚えナイよ!

「でも、情報有ったからやってると思うぞ」

しゃーしゃーとトウは言う。

特定秘密保護法違反じゃないのか、それ。


「まぁそれで、あの子の従兄弟やら再従兄弟(はとこ)やらが、居るかどうかを調べてるらしい」

だが調べてどうなる。

「親戚が居なければ、日本国民じゃない状況証拠になる」


警察が持つ行方不明者リストに、あの子に該当する者は居なかった。

近隣住民に該当者が居なかったか、調査もしたらしい。

だが、発見できなかった。

後は遺伝子調査をすれば、やるべき調査は終わりらしい。


「自衛隊が国民を殺害したなんて事になれば、一大事だからな」

大騒ぎになるな。

「万一を考えて、日本人じゃ無い証拠を積み上げるんですか」

なんか無意味な事してるなー

「でも、隊長とナツにとっては重要よ」


「自衛隊員として、敵国の者を撃つ覚悟はあるかも知れない。でも、撃ったのが自国民だったら」

じゃぁ、あの少女に北朝鮮国籍でも与えれば良いじゃないか。

そんな俺の思い付きは、さすがに口に出せない。

隊長とナツにとって、それは重要な事だからだ。


--


劉さんの奮闘の結果、あの子に日本人の親戚は居なかった。

それが判った夜、劉さんを招いて呑み会を開催した。


「6親等以内の親戚が日本人に居る確率は、0.000001%以下だ」

それは、良かったのか?

まぁ、隊長とナツには良かったかも知れん。

「これらの情報を政府に送れば、日本人では無いと結論を出すだろう」


じゃぁ、何処から来たんだ?

「それが判らん」

見た感じは日本人っぽかった。


「なお、口内細菌からは納豆菌が出た」

おい、それって納豆食ってるんじゃないか。

それやっぱ日本人じゃね?

あ、韓国でも食ってるかな?

「韓国人の親戚も居ない。北朝鮮人はゲノム情報が手に入らない」


だが、日本に居て納豆を食ってる。

見た目も日本人だ。

たとえ親戚が居なくても日本人なんじゃないか?

「日本国籍を持たなければ、日本人じゃない」

いや、それは乱暴だろ。


そもそもそれじゃ、DNA調べたの何だったんだよ。意味ナイじゃん。

「いや色々判るぞ。あの子のDNAは日本の本州在住民に近い。ただ、一部はポルトガル在住民に近い。多分クオーターくらいだな」

なにー


じゃ、本当に日本人じゃねーか。

「日本国民に親戚が居なかったと言っただろう。何世代か前にポルトガルに渡った日系人の子孫、ということが考えられる」

でもクオーターって言ったじゃん。ポルトガル人の血は少しだけで、大部分は日本人だって事だろ。

ポルトガルって、そんな日系人ばっか居るのか?

「さて、ポルトガルに日本人村は有ったかな?」

しゃーしゃーと、すっとぼける劉さん。


「劉さん、それ、報告には書くの?」

ミズが妙に真面目な顔で聞いた。

「書かん。私も日本国から予算を貰ってる身だからな。期待される情報だけを書くさ」

それは科学者として、どーなのか。

「科学者もロハでは研究できん。資金源はお客様だからな」

うわー。ひでーこと聞いたー


「じゃぁ、この話はこの場限りってことで」

唇の前に指を1本立て、ミズが微笑む。悪女だ。これは悪い女の微笑みだ。

「じゃぁコウ、貴方この話をナツに伝えるの?」


うム、この話はこの場限りってコトで。


あれ、俺は?

俺には伝えても良いの?

「お前にとっては、あの子が日本人だろうが外国人だろうが、関係ないだろ」

トウが酷いことを言う。


だが、その通りだ。

俺にとっては、あの子が人間か怪物かが重要で、国籍や民族はあまり気にしない。

でも、あの子の家族が見つかったら、それが日本人だろうがホッテントット人だろうが、落ち込むだろう。

ナツのためにも俺のためにも、これ以上の詳細調査は行わないで頂きたい。

できるだけ。

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