第六圏 異端の迷宮1 -色彩-
地下5階の一番奥。
そこには地下6階、ディーテの市へ降りるための門がある。
だが、その門は堅く閉ざされ閂がかけられている。
はずだった。
なのになぜ、門自体が無くなっているのか!
説明を求める。
これでは天の岩戸作戦が発動できない。
門の向こうには、下へ向かう階段が大口を開けて待っていた。
物事には常に明るい面が在る。俺はそっちを見る男だ。
今回の一件だって、ウズメ役を誰がやるのかという問題があった。
もしそれが、ミズやナツだったら。
仲間として、同じ分隊の一員として、彼女らにそんな真似はさせられない。
可哀想である。貧…ボリューム的に、そして年齢的に。
回避できたことを喜ぶべきだ。
「コウ、残念そうね」
貴女のためを思って喜ぼうとしてるのに、ミズのイケズ。
「降下する」
隊長の指示に従い、俺達は地下6階に足を踏み入れた。
「これが、ディーテの市…」
ミズが呟く。
今までの石造りの通路とは異なり、其処は色彩に溢れていた。
通路の壁に、天井に、様々な彫刻が施され、色鮮やかに染められていた。
扉も彫刻され、白く染められている。
日本でも西洋でも無いデザイン。
「注意しろ」
低くナツの声がした。
我に返る。
此処は迷宮内だ。一瞬の油断が命取りになる場所だ。
もし仮にモフモフのウサちゃんが出てきても、可愛えーとか呆けててはイケナイのだ。
でももしバニーちゃんが出てきたら、俺は自信がない。
「前進する」
隊長の指示に従い、俺達は地下6階の探索を始めた。
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「これはまた、迷うな」
トウが言う。
「一旦、引き返してまた潜った方が良いのでは?」
タダは慎重派である。
「この辺りは、見るからに使えなさそうだから捨てちゃえば?」
一方ミズは乱暴である。
怪物が持つ箱の中には、金貨の他に武器・防具が入っていることがある。
地下6階で解錠した箱には、それら武具が大量に入っていた。
数回の戦闘を行った結果、持ち切れない程の数になっている。
「後衛の呪文残数は?」
隊長の問いに"半分以上残ってる"と後衛3人から返事がある。
通常なら、まだ探索する状況だ。
「ミズの意見を取る。日本的な武具を一部捨て、前進する」
鎧兜や日本刀という時代劇に出て来そうな武具は、前衛3名とも装備できない。
持ち運びはできるのだが、手足の素早い動きができなくなるのだ。
今は灰になってるカツだけが、日本刀を扱えたと聞いている。
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扉が開き、閉まる。
目の前にローブを纏った姿が見える。
怪物だ。1体だけだが、この姿は魔術師の呪文を使う危険なヤツだ。
「ir-stem」
タダの詠唱が終わらぬ内にナツが踏み込み、長剣を逆袈裟に切り上げる。
血が迸り、怪物は動きを止めた。
ん?
血が出たということは、悪魔か。
ひょっとして、首を持ち帰らなきゃイカンのか?
やだー
俺は怪物の屍に近寄り、念のため胸に止めを刺した後、剣先でフードを上げた。
10代前半と思われる少女の顔が、現れた。




