呑み会 十二次会 -暴走-
「さて、難しい話は終わったかな?」
マッコイがやってくる。
いや、確かに難しい話は聞いたけどさ。
納得いかん。
聖徳太子が救世主だとか言われてもねー
"和を以って貴しとなす"が信仰だとか言われてもねー
「まぁキャリーの意見が、俺達全員の意見ってワケじゃない」
やっぱ偏った意見なのか。
「ただ俺も、心の何処かで日本人を恐れている--いや不気味に思っている」
マッコイ、お前もか。
「気を悪くしないで欲しい。俺は日本が好きで長く住んでるし、日本人の友人も沢山居る」
だが、とマッコイは言う。
「日本は確かに安全な国だ。人々も優しいし、米国のどの都市と比べても暮らしやすいかも知れん」
そう。だから俺達は宗教などいらないと思ってる。
「俺の友人達も、各個人は間違いなく良い人間だ」
俺の肌が何色だろうが、気にもしないしな。とマッコイは黒い肌を見せびらかす
確かに人種差別も無い。ほとんど。
「だが、日本社会という集団になると、俺の理解を超える」
マッコイは軍人として、日本の歴史を学び、調べたそうだ。
「70年前、日本は暴走した」
それは、そうらしい。俺は良く知らないが。
「全てを、国民全員の命さえも戦闘につぎ込もうとした。熱狂的に」
進め一億火の玉、か。
「俺の親しい友人、彼ら彼女らとそんな暴走や熱狂は、どうしても繋がらん」
「そこまで暴走できる理由が判らない。それが恐ろしいし不気味なんだ」
その理由を宗教に求めたのが私、とキャリーが口を挟む。
「皆が話し合って"鬼畜米英を竹槍で倒せ"と決めたから、それが正義になった--ってね」
んなワケあるか。
「ま、今は敵じゃない」
マッコイがジョッキを掲げる。
「宗教はともかく、日本のビールが美味しいのは正義よ」
キャリーもジョッキを掲げる。
「タマニハびーるモ美味イ」
スコットもジョッキを持つ。
乾杯~!
「日本はビールも美味いが美人も多い」
うム、それはその通り。
「そして、歳をとっても衰えを感じさせないな。日本側の僧侶の人とか」
ミズのことだな。ただ歳の話は厳禁だぞ。
「モウ十何歳カ若ケレバ、ネェ」
だからスコット、歳の話は拙いって。
決してミズの前では歳の話をしないこと!
そのことを3人に約束させた。
怖いから。俺が。
「陸上自衛隊の女性隊員も、かなり美人ぞろいだよな」
「日本ノぱーてぃニモ、モウ1人、女性ヲ入レタラドウダ?」
ちょっと待った。
スコット、何を言う。
「いや、僧侶の彼女1人だけ女性ってのは良くないぞ」
マッコイ、お前もか!
分隊の戦士、隊長じゃない方を何だと思ってるのか。
「若いが、かなり優秀だと聞いたぞ、彼は」
「彼ハ、侍ノ子孫ダッテ噂ヲ聞イタゾ」
俺は説明した。
かくかくしかじか。
マッコイとスコットは目を真ん丸にして聞いていた。
「ひょっとして、動きに邪魔だからサラシを巻いてる?」
マッコイ、そんな事を本人の前で言ってみろ。
酷いことになるからな、主に俺が!
こうして陸自vs米軍の危機は、俺という優秀な男により回避されたのである。




