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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第五圏 憤怒の迷宮
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第五圏 憤怒の迷宮4 -探偵-

「Mr.キース?」

「キースさーん」

迷宮内に監察官を呼ぶ声がコダマする。


日本側分隊も動員し、地下1階を捜索中だ。

監察官がキースという名であることは、司令から聞いた。


だが、迷宮では扉の向こうには音が通らない。

どっかの玄室に逃げ込んだ場合は、いくら呼んでも聞こえないのだ。

あ、日本側の声が消えた。

扉の向こう側に行ったな。


大声を出しながら迷宮を探索するなど、本来ならば自殺行為。

声を聞きつけ、怪物が頻繁に現れる。

ここが地下1階じゃなかったら、とても出来なかっただろう。


人数の都合上、俺は米軍側に居る。

米軍なら安心だ。

俺以外の各個人が強力な上、怪物が引けば追い討ちしない方針だ。

地下1階の怪物と米軍では力の差がありすぎ、多くの怪物は遭遇しても勝手に撤退してくれる。

更に、箱より捜索優先のため、俺の出番はほぼナシ


通常、日本側は右手法で、米軍側は左手法で探索している。

今回も、それで地下1階中を捜索することとした。

立体迷路や浮島みたいな領域が有るとこの方法は使えないが、地下1階はそうじゃない。どこかで監察官は見つかるはずだ。

地下2階に降りていなければ、だが。


扉が開き、閉まる。

玄室の中に見慣れた顔が居る。

言うまでも無く隊長以下の分隊だ。

向こうもこちらが米軍だと気付き、構えを解く。

間違って剣を振り下ろしでもしたら、大惨事である。

危ないあぶない。


あれ、監察官は?


--


状況を整理する。

1.米軍側は右手法で地下1階の隅々まで探した

2.日本側は左手法で隅々まで探した。はずだ

3.米軍側も日本側も監察官を見つけていない


ふっふっふ。

俺には判った。判ってしまった。ダテに推理小説は読んでない。

不可能を除いた後に残ったことは、それがどれほど奇妙であっても事実なのだ。


ズヴァリ!

監察官は、未だ米軍側も日本側も探していないこの玄室に居る!

「この玄室は、自分達が隅々まで探した」

さいですか。


むー

ならば、監察官は地下2階に逃げた!

「それは無い。地下2階の危険性は、監察官に十分すぎるほど伝えてある」

さいですか。


先に出口に逃げたということもナイ。

地下1階の階段前から、米軍側と日本側は捜索を行っているのだ。

これは困った。

シャーロック・()()ムズの信用、あやうしである。


「不可能を除いた後に残ったことは、それがどれほど奇妙であっても事実…か」

ミズが呟く。

あ、なんか皆の視線が痛い。

「こうしていても仕方ないわ。このまま捜索を続けましょう」

ミズがそう言ってくれ、俺はようやく皆の冷たい視線から解放された。


--


「地下2階に降下する」

カークが言い出した。

いや、貴方さっき「それは無い」って俺の名推理を否定したじゃん!

「確かに、監察官が自分で行くことは無い」

カークが少しすまなそうな表情で言う。

「だが、他の誰かに連れて行かれた可能性はある」


他の誰か?

いや、俺の分隊しか居ないじゃん、それ!

「コウ、申し訳ないけど、私達は貴方達を完全に信用することは出来ないの」

キャリーが言う。

「貴方達の信仰は、あまりに異質だから」

キャリーの言葉は、カークの手振りで止められた。


俺の頭の中は?マークでいっぱいである。

俺達の信仰って、日本人は大概無宗教だよ。

ひょっとしてナツの家の"隠れキリシタン"のことか?

でもナツ自身は信仰してなさそうだし、そもそもキャリーがナツの家のことを知ってるとも思えない。


そして地下2階の階段近くを捜索したが、監察官は影も形も無かった。


--


キャリーは間違っていた。

日本側の分隊は、そんなことはしていなかった。

そもそも、そんなことをするワケが無いし理由も無い。


出口に戻った俺達が見たのは、監察官が跪き、大げさな身振りでミズに感謝を捧げている姿だった。


「いったい何処に居たの?」

呆然と呟くキャリー。

ふっ、俺の思ったとおりだ。

分隊が監察官を地下2階に連れて行くワケは無い。

で、何処に居たの?


「さて皆さん。彼は何処に居たか判りましたか?」

名探偵、皆を集めて『さて』と言い。そんな感じで、ミズが言う。

「不可能を除いた後に残ったことは、それがどれほど奇妙であっても事実なのよ」

ヒドい!それ俺のセリフー。


「もし彼が普通に1人で彷徨っていたなら、私達か米軍、どちらかが見つけていた」


例え死体になっていても。と、ミズが説明する。

「そして監察官は私達から隠れる動機も方法も無い」


「だから、誰かに隠されていた。でもこの迷宮は一種の密室。居る者は限られる」

まぁ、入り口は自衛隊と米軍が固めてるからな。


「米軍側は隠す動機が無いし、私達が隠してないことは私自身が知っている」

ま、動機も無いし。


「残った可能性は1つ」

ミズは俺を見ながら微笑む。

「怪物だけ」


「監察官は、簀巻きにされて怪物に運ばれていたわ」

つまり、米軍パーティと遭遇し、撤退していった怪物の群れ。そいつらに運ばれてたらしい。

なぜ?

何故そんなコトすんの怪物!

「さぁ?」


ううう、何か悔しい。

なぜ俺ほどの男が、そこに気付かなかったのか。

屈辱感に震える俺に、シャーロック・ホー()()が言った。


「初歩的な事よ、ワトソン君」

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