第一圏 辺獄の迷宮3 -脱出-
2人、2人もだ。
1時間も経ってない内に、2人も死んでる。
此処はいったい何処だ。本当に日本なのか?
ミズさんの遺体は、ローブの眼鏡男と俺が交互に背負い、連れて行くことになった。
彼女の装備は、俺が身に付けた。
細川さんも、今度は置いて行くとは言わなかった。
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探索して判ったことは、この通路には3つの扉があること。
その内1つは皆が現れた扉で、行き止まりらしい。
今、俺達は2番目の扉の前に居る。
細川さんがドアを蹴り開ける直前に、ふと思った。
皆は何処から此処に入って来たたんだ?
扉が開き、閉まる。
それなりの広さがある部屋だが、出口は無い。
次の瞬間、急激に気温が下がってきた。
空気が渦巻き、中心に光が集まる。
そして人型が現れた。
幽霊。
柳の枝の下に出る、足の無いヤツだ。
それが今、俺の目の前に居る。
先ほどのゾンビも信じ難いが、幽霊は更にありえない。
だが居る。確かに居る。
身体を通して向こうの壁が透けて見えるが、存在している。
その上ヤツは攻撃してくる。
手に長い爪が現れ、腕が伸びる。
細川さんの目前で爪が閃く。
貫こうとする爪を、ロボがかわす。
前衛の3人は、幽霊の攻撃をかわしながら近づいていく。
1名は食らっていたが、それでも前進する。
あ、倒れた。
幽霊の攻撃が俺に向く。
横っ飛びに避ける。というか、とにかく逃げ回る。
逃げるだけの俺でも、役に立ったらしい。
俺が攻撃をひきつけているうちに、細川さんとロボの剣が幽霊に届いた。
細川さんが剣を突き出すと、幽霊は飛ばされた。
すげぇ、幽霊に剣が通用するのか。
そして飛ばされた先には、ロボが待ち受けていた。
ロボの剣が幽霊の胴を薙ぐ。
やったか!
幽霊の胴に一瞬切れ目が走るが、直ぐ元通りになる。
腕が伸び、爪が俺を襲う。
かわし切れず盾で防ぐ。と、身体がばらばらになりそうな衝撃に襲われ、吹き飛んだ。
幽霊の伸びた腕を、細川さんの剣が断つ。
吹き飛んだ俺の前に、ローブの眼鏡男が立つ。
「tʃ-hi-concentração」
彼が聞いたことが無い言葉を発すると、幾多もの火の矢が幽霊を襲った。
その矢は幽霊が避けても追いすがり、貫く。
矢がローブの眼鏡男の掌から出ていることに驚き、動きをとめてしまう。
次の瞬間、左肩に焼けるような痛みが走った。
幽霊の腕が再生し、俺の肩を爪で抉っていた。
革鎧とライディングジャケットのプロテクターが有ってまだ良かった。それほど深い傷じゃ無い。
だが、もう一方の腕がたわみ、俺に向かって伸びる。
俺の首に向かって。
思わず目を閉じる。が、痛みは来なかった。
目を開くと、細川さんの剣が幽霊の胸に突き立っていた。
耳には聞こえぬ声が響き、幽霊は消えていった。
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「皆、無事か」
細川さんの声に、各々声を出したり腕を上げたりして応える。
タダ君だけはうつ伏せに突っ伏し、身動きもしていない。
ローブの眼鏡男が駆け寄る。
「大丈夫、麻痺しているだけだ」
それは大丈夫なのか?
ローブの眼鏡男が袂から巻物を出して広げる
「lá-bewustzijn」
また聞いた事の無い言葉が響いた。
と、ビクンと身体が跳ね、起き上がるタダ君。
なんだ!?今のは。
それにさっき、掌から火の矢を飛ばしてたよね!
魔法か?魔法使いなのか?
ローブ着てるし、いかにもそれっぽいけど、本物なのか?
「全て後で説明する。外に出れたらな」
ローブの眼鏡男の言葉に、疑問を飲み込む。
今は質問の時じゃない。
細川さんがこちらを向き、片手で俺を拝んでいた。
俺にしか出来ないことをやる時だ。
箱の中身は金貨と小刀、そして凝った意匠の鍵だった。
どこの鍵かは判らない。ただ、箱の鍵とは明らかに形が違う。
それらは細川さんとロボが分けて持ち、俺達は通路に戻りもう1つの扉へ向かう。
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扉が開き、閉まる。
さっきの扉もそうだが、凄い勢いで開き、直ぐ閉まる。
急いで通り抜けないと、挟まれたら大怪我間違いなしだ。
設計者は誰だ。こちらにはPL法で訴える用意があるぞ。
幸いにして、ゾンビも幽霊も居なかった。
先ほどと同じような通路が、目の前に延びていた。
デジャヴュに襲われ、思わず後ろを振り向く。
もちろん愛車は無かった。
だが扉も無かった。
なんで?
おかしいだろ、今通った扉は何処に行った?
PL法が怖くて逃げ出したのか!
前後をきょろきょろ見ている俺を、ローブの眼鏡男がつつく。
疑問は山のようにあるが、置いて行かれるわけにはいかない。
突き当たりの扉を潜ると広間になっていて、奥に階段があった。
「トウ、ここは何処だ」
細川さんがローブの眼鏡男に聞く。
彼は目を閉じ、呪文を詠唱した。
「ɔː-iki-saber」
目を開き笑みを浮かべる。
「出口だ」




