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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第五圏 憤怒の迷宮
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第五圏 憤怒の迷宮1 -禁魔-

日本側の分隊、米軍側のパーティ。両方に俺は参加している。

今日は日本側の分隊と迷宮に潜る日だ。

「お、コウモリが来た」

トウがチェシャ猫のように笑いながら言う。

ヤツは酷い男だ。


「今日は我々の味方として、明日は米軍の味方として、最後にはどちらからも敵になるという」

タダ、お前も乗るんじゃない!

「悲惨ねぇ、オッパイに心を売った男の末路は」

みみみミズ!もっと声を落として。

聞こえる、ナツに聞こえちゃう!


ギラリ!

兜の中からナツの双眸が光る。

怖ぇえっ。


「状況を開始する」

お遊びはここまで。

タダが防御呪文と視界確保の呪文を唱える。

今日からこちらの分隊も、地下5階に降りる。

あの階はちょっとヤバい。特にこちらの分隊にとって。


先日、米軍側のパーティとして地下5階に潜った。

地下4階の鍵が掛かった領域--米軍が全滅寸前になった領域は未探索だ。

日米双方とも、先に地下5階を探索し、強力な武器・防具を入手してから再探索する方針となった。


先日潜った際、地下5階で怪物と何度目かの遭遇した時、魔法が使えなくなった。

理由は判らない。

何時から使えなくなってたかも判らない。

幸いにして地下4階に戻ると、再び魔法は使えるようになった。

そのことは、もちろん日本側に報告済みだ。


ただ、それが判ってもこちらの分隊は対応がし難い。

米軍パーティは、魔法が無くても強力な前衛3人でごり押しできる。

一方こちらは、回復呪文で前衛をフォローしながら戦闘している。

隊長とナツには悪いが、個人としての火力も米軍前衛に劣る。俺の火力が低いことは、言うまでもない。

だから、魔法が使えなくなるのは痛い。とても痛い。


ɔː-iki-(座標)saber(感知)

そこで、米軍から道具を借りてきた。

トウが嵌めている指輪。これは、座標感知の魔法が何度でも使えるという優れものの魔道具だ。

米軍はこれがあるから、地下3階の迷路も迷わず探索できた。ずるい。


「ここでは使える」

トウが言う。

地下5階、階段を下りた場所だ。

米軍からは、魔法具を貸す替わりに、魔法が使えなくなる場所を探るよう言われている。


1ブロックずつ前進しては座標感知の魔法を使い、また前進する。

幸か不幸か、怪物とは遭遇しない。

幾度か扉を開け玄室に入るが、遭遇しない。

米軍が地下5階に滞在していた時間・時刻を過ぎた。だが未だ魔法は使える。時間的な制限ではないようだ。


「階段まで後退。その後、東方向に転進」

隊長が言う。

東方向、つまり米軍が向かった経路を辿るということだ。

おそらく何処かで、魔法が使えなくなる。


扉が開き、閉まる。

「ここでも使える」

トウが言う。

米軍が辿った道筋では、次は玄室だ。怪物と遭遇する確率は高い。


扉が開き、閉まる。

カサカサ、ガツンガツンと物音がする。と、巨大な蜘蛛が3体現れた。

その後方にも、何かが居る。

戦闘開始だ。


踏み込もうとするが、相手の手数が多い。

こちらに踏み込んできた蜘蛛の脚を斬り付ける。

ガインッ

硬ぇッ!

刃が弾かれ、その間に蜘蛛が接近する。

ゾンッ!

隊長の長剣が、蜘蛛の腹を貫く。


隊長の一撃は、蜘蛛を下がらせはしたものの、致命傷には至っていない。

lá-muur(障壁)

ミズの詠唱が聞こえ、防御呪文が我々を覆…わない?

tʃ-hi-con()centração()

トウの詠唱が聞こえるが、火の矢は現れない。

此処が其処だ。魔法が失われる場所だ


蜘蛛の動きは素早く、退避は難しい。

後衛3名は魔法が使えず、武器も届かない。

蜘蛛の脚が閃き、それをナツが盾と剣で受け止める。

ナツと蜘蛛の力が拮抗し、動きが止まる。

ザクッ!

動きを止めた蜘蛛の腹に、俺の小剣が刺さる。


「防御!」

隊長の声が響き、反射的に俺は盾を怪物に向ける。

炎に包まれた。

熱ち暑ちあち

なんでだ。魔法使えないはずなのに!


目を上げると、蜘蛛の後ろに鱗に覆われた姿があった。

大きさはセントバーナードくらい。

丸みを帯びた頭に、くりっとした目がちょっと可愛い。

だがその下の牙の生えた口。そこから現れている炎は凶悪。


竜だ。子供だが竜、ドラゴンだ。

学名:コドモオオトカゲ

いや違う、そうじゃない。

再びブレスを吐くべく、ヤツは息を吸い込む。

やめてー


ブレスは後衛にも届いていた。

それなりの装備を付けている俺達は、まだ良い。

だがトウはヤバイ。彼は盾も持たず薄いローブしか纏っていない。

下手すると奴は死ぬ。


盾を構えた隊長が竜に向け突撃する。その姿から目を逸らし、俺はブレスを避けるべく盾の影に隠れた。

あれ?炎が来ない。

盾から目を上げると、子竜がケホケホしている。

ブレスは1回で品切れらしい。

しめた。


--


全員生き残ったまま、戦闘は終わった。

箱も開け、中からは良い物っぽい革鎧とローブ、そして大量の金貨が出てきた。

俺は仕事が出来る男なのだ。えへん。


ただ、拙い状況には変わりが無い。

特にトウは青息吐息だ。

そして回復呪文は使えない。

「地下4階まで後退する」

うむ、それが良い。そうしよう。


扉が開き、閉まる。

目の前に革鎧を纏った人型が居た。

一見、人に見えるが違和感がバリバリにある。

これは怪物だ。間違いようが無い。

5人居る彼らが、詠唱を始めた。


ちょっと待って!

俺達は魔法使えないのに、怪物は使えるの?

それってズルい!

あ、さっきの場所に入ってないからですか、そーですか。


--


「もー死ぬ、今死ぬ、すぐ死ぬ」

ボロボロのトウをミズとタダが支えて、地下4階に上がった。

あれからもう、怪物が出るわでるわ。

箱から出た僧侶系の巻物を、効果も判らずにトウに使い、何とか保たせたこと数回。


ir-kras()sen-ɔː()

シャキーン

ミズの回復呪文で、トウが完全に回復した。

だが、余程ギリギリだったのだろう。膝を抱えてうずくまっている。


俺達はタダの回復呪文で怪我や火傷を癒す。

なんかタダの呪文だと、効きが悪い気がするんだよねー。

ともあれ魔法も復活したし、身体も治った。

もう1潜り、行っとく?


「出口まで後退する」

トウがもう見るからにボロボロ。精神的に。

この分隊で、最大の火力を持つのは隊長でもナツでもない。トウだ。

その彼がこの状態で地下5階はリスクが高すぎる。そう隊長は判断したようだ。


その後は、怪物との遭遇はほぼ無く、出口付近でスライムならぬヘドロムに遭遇しただけだった。

ヘドロムは、トウが高位呪文で焼き払った。

いや、これは引き返して正解だった。それくらい、その時のトウの目はイッちゃってた。


--


「状況を終了する」

隊長の言葉と共に、トウは崩れ落ちた。

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