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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第四圏 貪欲の迷宮
32/106

呑み会 七次会 -盗賊-

「で、その後はどうなったんですか?」

タダの質問に、俺は答えられない。


あの激動の日から3日経った。

米軍の遺体は全て回収され、幸いなことに全員が復活している。

ただしカトーの行方は、ようとして知れない。


あの後の司令とナタリーの会話も判らない。

だって英語だったから仕方ないじゃん!


「でもちょっとくらいは判るでしょ」

ミズはそう言うが、こればっかりはダメ。ちょっとも判らない。

自慢じゃないが、俺の英語の成績は抜群だ。下の方に。


「コウ、少しは学んどけよ」

トウ、お前も理系だろ。英語苦手じゃないのか?

「私は留学してたからな。英語は得意だぞ」

裏切り者だ、トウは裏切り者だ。


「仕方ないですよ。誰にでも苦手分野はありますから」

ここでタダ先生がまさかのフォロー。

「タダ、貴方もしかして英語の単位まで…」

耳を塞ぎ、うつむくタダ。

おおタダよ、文系だというのになさけない。


「でも、あの鍵を持って行ってどうするつもりなのかしら?」

ミズの疑問も尤もだ。

俺もそこが疑問だ。

「おそらく、取り引きに使うつもりだろう」

トウがいい加減なことを口にする。


取り引きって、世界最強の米軍相手に?

どんな命知らずがそんなことをするんだ。

「米軍に対抗できる組織。つまりロシアか中国」

はい?


「つまりカトーはロシアか中国のスパイってこと?」

そういうことですか、ミズさん。

いや、俺もそうだと思ってたよ。ホントだよ。

で、取り引きって何?


「我々もこの件に噛ませろ。そう言ってくるんだろう」


迷宮内には現代科学を超えた文明がある。

もし日米がそれを手に入れれば、世界のパワーバランスは大きく傾く。

だからこそ、日本はかなりの予算と自衛隊をつぎ込み、米軍も積極的に関与している。

どこから情報が漏れたか判らんが、確かにそう考えると説明がつく。


「でもこちらとしては、そういうことを許すワケには、ねぇ」

いきなり背後から声がして、俺は飛び上がった。心臓が。

甘い香りと共に白い腕が俺の首に巻きつくと、背中にナタリーの豊かな膨らみが、あた、あた。


「だが、あの鍵はいずれ必要になるんじゃないか?」

トウが冷静に言う。

ちなみに俺は冷静じゃない。俺の全神経は今、背中に集中している。

「鍵は取り返したわ」

ナタリーが俺の首から腕を解き、横に座る。


「こちらの部隊を動かして、国外に出る前に押さえたわ。電子顕微鏡での調査の結果、鍵は本物」

俺の左腕に腕を絡める。

ちょっ、二の腕にむ、む、胸っ…


「彼の脱走を許したのは日本側の失点。ただ我々も必要な人材を失った」

店員が持ってきたジョッキをナタリーが掲げる。

「だから、日本側から人材を補充して貰うことになったの。これでWin-Winね」

かんぱーい…って、あれ?

ジョッキをぶつけたの俺だけ?


「カトーはそちらで、何をやってたの?」

ミズが冷静に言う。

「優秀な軍人として活躍してたわ」


「こちらの聞きたいことは判るでしょ。戦士?僧侶?魔術師?それとも」

女と女の戦いがちょっと怖い。

左腕に押し付けられた膨らみが気になるが、ミズの目も怖い。

「コウと同じ。"盗賊"よ」

へ?


盗賊って、俺が?

いや、俺そんなワルじゃないから!

解錠の技を悪いことに使ったこと無いから!

確かに、戦士でなく、僧侶でなく、魔術師でも無い。

だからって、"盗賊"は無いんじゃない?


ナタリーは更に俺に身を寄せて言う。

「じゃぁコウ、明日は私達と一緒に潜りましょうね」

いやそんなダイビング誘うみたいに、気軽に言われてましても。ねぇ。


ミズの視線が怖い。

いやあの俺、別にそんなつもりじゃないよ。

ただ、左腕に当てられた感触がなんともコレ、至福というか天国というか。


ああ、俺は祖国を裏切ってしまうかもしれん。

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