呑み会 六次会 -貧血-
「もう今夜は帰りたくない」
居酒屋のテーブルに肘を付き、掌で顔を覆ったミズが呟く。
誰も何も言わない、言えない。
カツが灰と化した時のナツの顔、それを知っているからだ。
ナツと相部屋のミズは、いたたまれないだろう。
だが、誰か側についていて欲しい。
ナツに限ってまさかとは思うが、後を追うなんてことは無いだろうね?
「それは多分、無い」
トウが言う。
「灰になってもまだ、復活の可能性は残っている」
可能性が有るうちは、ナツは諦めない。諦めきれない。
ただし、金貨がどのくらい必要なのかは、予想もつかないらしい。
料理は誰も箸をつけぬまま冷めていく。
さすがに酒を呑む気になれず、頼んだウーロン茶のジョッキ。それすら手つかずだ。
「ここに居たか」
隊長の声がした。
「ナツは貧血を起こしたため救護室に運んだ。今、救護班が付いている」
微妙にほっとした空気と、それを咎める空気が混ざり合う。
「ごめんなさい。私、今日はもう引き上げるわ」
ミズも貧血を起こしそうな顔色だ。
「営舎まで送ろう」
隊長が付き添う。
「お前達も、あまり気にするな--とは言わん。だが、覚えておいてくれ」
「自分達は、覚悟はできている」
隊長は、自分自身に聞かせるようにそう言い
「食べ物を無駄にするなよ」
と、から揚げを1つ、口に放り込んで行った。
味なんてしないだろうに。
本当に覚悟なんてものができるなら、ナツは貧血なんて起こさなかっただろう。
救護班が付くことも無いだろう。
あんな光景を見せられて、その後普通に過ごせる者が居るなら、そいつはきっと心が壊れてる。
俺達は、料理を無理矢理腹に詰め込み、居酒屋を引き上げた。




