表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第三圏 大食の迷宮
22/106

第三圏 大食の迷宮4 -迷路-

特戦の若造による3日間の訓練が終わった。


最終日の午後、俺はナツとの対戦で、遂に攻撃することができた。

盾で弾かれ、直後の突きで悶絶したが、これは大変なことだ。

人類にとっては小さな一歩だが、俺にとっては大きな跳躍である!

ちょっとだけ若造に感謝してやろう。ありがたく思うがヨイ。


そして迷宮の入り口。

久しぶりに民間人4人が揃った。

タダが俺のアザだらけの顔を見て、表情を曇らせる。

「その…大丈夫でした?訓練…」


「大丈夫、問題無い」

トウが応える。いやなんでお前が応えるんだよ。

「コウは愛しのナツに手取り足取り教わって嬉しい、タダはキツい訓練から開放されて嬉しい。これがWin-Winだ」

待てィ。

全然Win-Winじゃない。

しかも手を取ったのはあの若造…いやもうヤツの事は忘れよう。


「タダ、防御呪文を」

あれ?こんな所で?

mantido-()muur()


聞いたことが無い呪文だ。

「米軍が持ち帰った巻物から、ね。効果がずっと続く防御呪文らしいの」

ミズが解説してくれる。

「以前の僕と同じじゃないんですよ」

ちょっと得意げなタダ。


なまいきだぞ、タダのくせに。

俺だってナツに攻撃できたんだからな。盾で防がれたけど。

尤も、迷宮の中で上手くできるかは判らない。

隊長からも、今回は防御に徹するようにと言われている。


防御に徹したおかげか、前衛といえど地下2階までは危なげなく通過できた。

問題の地下3階。

既に米軍により、かなりの領域が地図に記載されている。見た感じ碁盤の目のように単純な地図だ。

なお、マッピング役はトウに引継ぎ戻した。


「この十字路は右だ」

トウの指示に従い、曲がる。

進んでいくと、前に階段が見えてきた。上への。

あれ?


「トウ、現在位置を」

隊長の指示で、トウが呪文を詠唱する。

「先ほど降りた位置だ」

なんでだよ!

交差点まで1本道なのに、1回右に曲がっただけで、どうして元の位置に戻るんだよ。


念のため階段を登ってみたが、確かに降りた位置だ。

再び地下3階に降り、十字路を再度右に曲がる。

今度は別の十字路に出た。

なぜだ。


「トウ、現在位置を」

「信じられないが、我々は先ほどの十字路を左に曲がったらしい」

なんですって?

「回転床?」

ミズの問いにトウが首を横に振る。

「それなら、先頭のナツを見ていた私が気付く」


トウの魔法を駆使した結果、十字路で方向が変わるということが判った。


「トウ、座標感知の残り回数は」

「後3回」

1度の探索で使える魔法は限られている。

この状況で座標感知が出来なくなったらアウトだ。


「出口まで後退する」

隊長の判断は妥当だと思う。

だが、もう少し早く判断すべきだった。

戻ろうとした俺達を、怪物の群れが襲ったからだ。


いきなり先手を取られた。

しかも前回、1頭であれほど手こずった熊が4頭。俺を含めた前衛3名に襲い掛かる。

避ける。

避ける避ける。

だが熊は両手を振り回し、俺の逃げ道を塞ぐ。


ぐはッ!

熊の手が俺を捕らえ、盾で防ぐも俺は吹き飛ばされる。

壁に叩きつけられ、骨が折れる音が聞こえた。


ir-kras()sen-ɔː()

ミズの詠唱が聞こえ、折れた骨が元に戻る。激痛も和らぐ。

視界の隅で、隊長とナツが1頭の熊を土に還す姿が見えた。

これで残り3頭。


ir-()vrijheid()

タダの詠唱が聞こえ、熊が1頭固まる。

これで残り2頭。


tʃ-hi-con()centração()

トウの詠唱で、麻痺した熊を含め3頭が火に包まれる。

その火の中から熊の腕が伸び、ナツを吹っ飛ばした。

壁に叩きつけられたナツは痙攣し、立ち上がる気配が無い。

火の中から、3頭の熊が現れる。

麻痺したはずの熊まで、もう回復したらしい。

拙い。


もう1頭の熊の腕がナツを襲う。

間に合えッ!

俺はナツに駆け寄ると、熊の腕を盾で防ごうとして吹っ飛ばされた。

「退避ッ!」

ナツを抱え上げ、隊長が叫んだ。


--


ナツはタダの魔法で回復した。

トウの魔法で、現在位置も判った。

3回、十字路を曲がれば階段に辿り着く。

だが、その階段がとてつもなく遠い。

トウの座標感知の魔法が、もう2回しか使えないからだ。


これは、ひょっとして詰んだのか?


ヤバい。

ヤバいやばい。

カチカチカチ。俺の歯が--いや、俺の歯は鳴ってない。

ミズが自分の肩を抱き、震えていた。


タダがミズの側にしゃがみ込む。

「先生」

涙ぐんだミズの目がタダを捉える。

「ど、どうして…か、身体が動かな…いのよね」

タダがミズの手を取る。


「私…たち、このまま…」

「大丈夫、とは言えません。でも動かなきゃ本当にお仕舞いです」

震えるミズの身体が次第に落ち着いていく。

「トウの魔法が無くても1/12の確率で階段に辿り着きます。賭けてみる価値はありますよ」

いや、3回十字路を曲がるから1/64だぞ。

心の中だけで、そうツッコむ。


おそらくタダはわざと間違えている。

少しでもミズを安心させるために。

そのあまりに下手な慰め方が、かえってミズを安心させたらしい。

まだ脚は震えてるものの、ミズは立ち上がった。


--


トウの魔法は尽きた。

階段は、未だ十字路は3回曲がった向こうだ。

運が悪いったらありゃしない。

だが、かえって皆の覚悟は決まった。


「全て直進する。怪物に遭遇したら退避だ」

もし退避ができないようならば、その時は仕方ない。

「コウ、退避できなければ攻撃しろ」

ナツが囁く。

俺個人の生存確率は下がるが、誰かが戻れたなら復活の可能性は結構高い。はずだ。


この状況で、おそらくそれが最も冴えたやり方だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ