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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第二圏 肉欲の迷宮
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第二圏 肉欲の迷宮2 -詠唱-

明日も女性自衛官との触れ合いが無く、1人で受身の練習とは。

なんて可哀想な俺。

誰か俺に愛の手を!


「じゃぁタダ、行くか」

可哀想な俺をスルーして、トウがタダを誘う。

ん、どこか行くのか?

「研究棟だ。新たな巻物が発見されたらしい」

「コウも見学しに来ます?」


研究棟は、狭いプレハブ建てだった。

狭いはずだ。1階はエレベータしか無い。

でも地下が凄いんだコレが。


結構長い間乗ってたエレベータの扉が開くと、広いフロア内で、白衣を着た人たちがうろうろしたり、机に向かったりしてる。

パーティションで区切られた通路を歩いていくと、鉄の扉があり、両脇に自衛官が立っている。

これは、中には凄い秘密があるに違いない。きっと国家を揺るがしちゃうようなヤツだ。

その秘密を知ったら、もう後戻りはできない--ん?トウ、何だよ。

「これ書け」


入出記録に所属、氏名、入室時刻を書いただけで、自衛隊員は通してくれた。

ちょっと肩透かしである。

だが、中に入ると、警戒厳重な理由が判った。

中の科学者たちは皆、ローブや革鎧を白衣の上に着ていたのだ。


ここは迷宮なのか?

「迷宮じゃないが、迷宮と同じ状況だ」

どゆこと?

「装備や武器が軽くなって、魔法も使えるんですよ」

魔法!


そう言えば、トウは魔法使いだった。

あれ?

魔法使いになるには、30超えても清い体でいなきゃならないはずだ。

でもトウには、奥さんと娘さんがいるらしい。

そんな穢れた身で、なぜ魔法を使えるのか。

説明を求める!

外に出たら、全部説明するって言ってたじゃん。


「ま、百聞は一見にしかず、だ。見てれば判る」

奥の方に目を向けながら、トウが言う。

そちらには、いかにも厚そうなガラス越しに玄室が見える。

あ、ミズがいる。

やっほー。そんな感じでこちらに手を振っている。

彼女も他の学者同様、防具を着けていた。


俺たちも迷彩服の上から防具を着ける。

タダだけが再度入室記録を書き、奥の玄室に入る。

俺達は、ここで見学らしい。

「ハイ、トウ」若い女性の声が聞こえた。

振り向くと、ローブを纏った金髪碧眼の女性が立っていた。


あ、アイキャンノット、スピークイングリシュ…

「こちらが新しいメンバーね。私のことはナタリーって呼んで」

手が差し出され、思わず握手しながら気付く。

日本語しゃべってる!


「ああ、こいつはコウ。カツの代わりに入ったメンバーだ」

トウも日本語で応えてる!いや、それは当たり前か。


「やぁコウ、はじめまして。僕のことはマークと呼んでくれ」

また新たな外国人が現れた。彼は中東系の顔立ちだ。

彼も日本語を話している。しかも相当に流暢だ。

目を閉じたら外人とは思えないくらいだ。


「私はキャリーと呼んでー」

そう言いながら、急いで玄室に入る赤毛の白人も居る。彼女は革鎧を着ている。

この方々って…

「米軍側の探索メンバーだ」

トウが説明してくれた。


「Oh,始めるらしい。静かに」

マークがローブを羽織りながら言う。

しん、と静まり返った中、厚いガラスの向こうで、タダが巻物を広げる。


「ir-vrijheid」

詠唱が響いた。

あれ、何も起こらない。



「ir-vrijheid」

タダの声がする。


「ir-vrijheid」

もう1回。やはり、何も起こらない。

「僕にはまだ使えないようです」



「ir-vrijheid」

「あ、私は大丈夫な感じ」

とミズ。

なにも起きて無いが、本人には判るらしい。



「ir-vrijheid」

「Okay.私も大丈夫」

これは、えーとキャリーだ。


3人はその後も詠唱を繰り返した。

まるで、英会話の教室みたいだ。

先生が言った言葉を真似て繰り返す。

ん?

ひょっとして、その通り発音の練習なのか?


トウが俺の肩をつついて、出ようと促す。

ミズとタダを残し、俺達は外に出て喫茶室へ向かった。


「あらためて始めまして。ナタリーよ」

「よろしく。マークだ」

こ、コウです

なぜか外人2人もついてきた。

でも許す。ナタリーが美人だから許す。

マークはどうでもヨイ。


「今回は僧侶系だったわね」

「ああ、効果は使って見なきゃわからないが」

今回は?

「私たちが使う呪文は、ああいう巻物から聞いて覚えてるの」

「おい、ナタリー」

トウが止めようとする。


「いいじゃないか。コウだって興味あるだろ?」

有るある。有りますとも。

「なんでも機密にするのは、日本型システムの悪いところよ」

ふぅ、とトウがため息をつき、ひらひらと手を振る。

許可が下りたらしい。

尤も自衛隊幹部だって、米軍に命令はできないだろうけれど。


「迷宮に入ったヒトは、それぞれ特殊な能力を持つわ」

確かにミズ、トウ、タダは魔法を使える。

隊長とナツは、重い甲冑や剣を使える。

俺は--あれ、俺は?


「魔術師と僧侶、と仮に呼んでるけど、そういうヒトは魔法が使える」

「自然科学系研究者は魔術師に、社会科学系は僧侶になる率が高いな」

そういえばトウは数学者で、ミズは歴史学者、タダも日本史専攻だったっけ。

つまり、マークとナタリーは自然科学系、キャリーは社会科学系というわけか。


「それぞれ使える魔法は違うけど、迷宮内で正確な発音さえすれば魔法が発動する」

発音だけ?

精神集中や事前の準備は?

「不要だ。オウムやカラスが真似した場合に発動するかまでは、実験してないがな」

じゃ、俺も魔法使いになれるかも知れない。30超えてるし、清い体だし!

今度、呪文を覚えて試してみよう。


「それはお勧めできないわ」

ナタリーが俺を見て言う。

「複数の能力を兼ね備えた例が無いわけじゃない」

でも、と2人がトウを見る。


「--カツは戦士だが、俺が教えて練習した結果、簡単な魔法が使えるようになった」

視線に耐えかねてトウが言う。

「だがその代わり、戦士としては弱くなった。持てる防具が限定されるようになった」

もしそれが無ければ、死なずに済んだかも知れない。そんな思いが胸をよぎった。


話題を変えようと思い、先ほど気になったことを聞いてみた。

俺が使える特殊な能力って何かな?


なぜか目が泳ぐナタリー。

こらトウ、明らかに目を逸らしただろ!

マーク、なぜ立ち上がる。

「さて、そろそろ戻るとするか」


キミたち、どゆこと?

ちょっとー

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