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ダンジョン&第16普通科連隊ズ  作者: tema
第二圏 肉欲の迷宮
10/106

第二圏 肉欲の迷宮1 -訓練-

ぐぇっ…

喉に突きが決まり、俺は吹っ飛ぶ。

防具の上からでも凄く痛い。息が出来ない。

喉が折れたかも知れん。


「防御が間に合わない時は、自分から後ろに跳べ」

氷のような言葉が追い討ちをかける。

ああ、心も痛い。


分屯地内の訓練場で、俺は基本的な訓練を受けていた。はずだ。

違うよ!

全然基本じゃないよ!

何だよこのガチな訓練!


俺を虐め--鍛えている鬼軍曹は、ナツこと板倉夏海一等陸士。

軍曹じゃないが、鬼であることはマチガイない。

あの不気味なロボの中の人である。

美人さんと訓練♪などと浮かれていた昨日の自分を叱りたい。叱り飛ばしたい。


隙があったら打ち込んで来い。

そう言われていたが、それどころじゃない。

ナツが身動きする度に、左腕の盾を構えて後ろに跳ぶ。

もうそれしかできない。痛いのイヤだ。


--


「だいぶ絞られたようだな」

水飲み場でトウに言われた。

彼は隊長こと細川さんとの訓練だ。

俺も、そっちの訓練の方が良かった。

「まぁ次の訓練で心を和ませると良いよ」


トウと連れ立って向かう先は道場だ。

道場の隅に、防具を着けたままのタダが転がっていた。

「おおタダよ、しんでしま…」

「死んでません」

前衛の訓練は、相当厳しいようだ。


トウと2人でタダを立たせたところに、ナツ鬼軍曹が来た。

後ろには、6人の女性自衛官の姿がある。

おお、若い女の子がいっぱい!

これは心がナゴむ。

ナツも若い女の子ではあるがナゴまない。ヤツは鬼だ。


「これから受身の訓練を行う」

ナツが俺に向かって言う。トウとタダは、既に何度も訓練されているからだろう。

「無論、隙があればお前達の方から技をかけても良い」

先生! 寝技もOKなのでしょうか!?

いやいや、俺は紳士だ。

そんな横四方固めなんて、そんな。ねぇ。


「始めッ!」

ナツの号令が響いた次の瞬間、世界は反転した。

あれ?

なぜか天井を向いてる。

そして、背中と腰がむちゃくちゃ痛い。


「まるでダメだな。中高で柔道はやっていたはずだが?」

ナツの顔が視界に入る。

「お前は単独で受身の練習からだ」

後ろ受身30分、とナツが言う。


30分!?

そんなに受身取ってたら背中、磨り減っちゃう。

ひきつる俺に、ナツが目を細める。

Sir! Yes Sir!

「見てるからな、サボったら更に追加だ」

Yes Sir…


ナツは、俺を一瞬で投げた女性自衛官の相手をしだした。

相手の女性は、見るからにビビっていた。

あ、投げられた。

「サボるな、5分追加だ」

ひー


休むことなく40分間、俺は後ろ受身を練習した。

もはや、後ろ受身のオーソリティと言って良いだろう。

もし後ろ受身で判らないことがあったら、俺に聞くがヨイ。


「少しは形になってきたか。じゃ次、投げられてみろ」

次にナツと対戦する予定だった女性自衛官に、喜色が溢れる。

お嬢さん、そんなに嬉しがるんじゃない。

大人しく見えても俺は野獣だ。油断してるとヤケドしちゃうぜ!


スパァーンッ!

ぐえっ…

「明日は単独で横受身だな」

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