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9話 交渉

「お? 二人ともなんでここにいるんだ?」

一足早く来た拳の力で、事態はかたずいていた。

「僕らは救援に来ただけだけど…それより横にいる彼は?」

小柄な少年は手にもっている光? を消して自己紹介をはじめた。

「はじめまして、ボクはトーリ・アルム・フェルナンダーと申します。この度は救援に駆けつけてくれて感謝の一言です。」

トーリと名乗った少年は律儀に挨拶をした。

「あー、えっと…こちらこそはじめましてだけど、とりあえずさっきの槍は?」

「これはボクが使える技です。光を物体に変換させる力です。先程は敵艦と間違えて狙ってしまったみたいで…すいません。」

「やっぱり君だったのか…危うく死ぬところだったよ。てか無茶苦茶な力だな。」

いつもやさしい和也はちょっとキレかかっていた。

「とりあえずよ! 皇離のとこ行こーぜ! よく分からねぇけどあいつに聞けばだいたい解決するしな!」

「ーーーということなんだけど、皇離は分かるかい?」

拳とトーリの力を利用して、速効皇離の元に戻り、トーリの力について訪ねてみた。

「そもそも能力が目覚めたメカニズムとか分かってないし…てかフィリピンがここまで耐えてこられたのって…トーリのお陰だよな?」

五人が話合いをしていると、一人の軍人がやってきた。

「紀伊艦長はどなたですか? 私はフィリピン軍で元帥を務めてる物です。救援に来ていただいて感謝したいところですが、今すぐ国を出た方が良いですよ?」

「艦長の皇離だ。それはどういった意味を込めている?」

「中国は、いまだに微動だにしにしないロシアに警戒しています。中国の目的はロシアに負けない戦力を手に入れることです。」

「それでここらへんの国を攻めてる訳だ。」

「はい。問題は、もうじきイスラム国がおとされます。」

「イスラム国って…」

「大量の核を保有しています。私の予想だとそろそろ核を乱射しはじめると…」

皇離は勢いよく立ち上がった。

「おいおい! 核を乱射って…んなぁバカな!」

「この戦争が起きてから核保有国はどこにもおとされていません。そんな核保有国が最後の抵抗を見せるとしたら?」

「私達はこの島にも流れ弾が飛んでくると予測しています。中国もこのことを察知しているでしょうから、さらに大規模な部隊を送り込んできます。救援要請は下っぱが独断で決行したことなので、あなたがたはここから逃げてください。」

皇離は座り込んでから、しばらく頭を抱えた。やがて元帥を見てニヤリと笑う。

「同盟だ。俺は日本の代表として宣言しよう。今現在からフィリピンと同盟を結び、領土奪還作戦を決行する! さらに中国とイスラム国を仲介し、核発射を阻止する!」

皇離の声が届いた一帯は静まり返り、その静かさは笑い声に変わった。

「おっと、失礼失礼。面白い冗談をおっしゃる方だ。中国から領土を取り返す? その後核発射を止める? 本当に面白い方だ。だいたいあなたが日本の代表というのが信用なりません。」

「日本は滅亡した。日本の国旗を背負って戦ってるのは紀伊にのってるやつのみだ。それをまとめる俺が日本代表じゃだめか?」

「日本は天皇が決定権を持っているはずです。あなたでは同盟を結べない。」

皇離は真剣な顔をしていたが、少し表情を曇らせながら一枚の紙を取り出した。その紙を元帥に渡す。そして声を上げる。

「俺は今はなき天皇の孫だ! 現在は改名しているが、晴人は俺だ! 鑑定でもなんでもしてみろ! 俺は間違えなく天皇家の血を受け継いでいる! わかったらさっさと長のところに連れてけぇ!」

元帥は、怖じけずいたのか、返事をし、慌ただしく動いていた。

「カズ! 今すぐ移動の準備だ! 龍希少年は結月に紀伊を見ていて貰うように伝えてくれ。」

皇離はあっという間に役割を決めた。が、一人役割を伝えられていないバカがいた。

「俺っちは!?」

「トーリの子守り」

皇離が出発してから実に20時間たっていた。龍希は一人紀伊から海を見つめていた。

「なぁ龍希! 一緒に真剣衰弱やろうぜ!」

「なんだそれ?」

「いいからこいよ!」

部屋に行くと緋奈と雪がいた。拳は今引き合わせてはいけないものをたかがゲームのために引き合わせていた。そこにはトーリもいた。

「龍希さん! 一緒にトランプやりましょう! 最強さんが教えてくれたんです! えっと…真剣衰弱!」

一体拳は何を吹き込んだんだ…

「拳は一体何を吹き込んだんだよ。」

「ん?何をだ?」

「最強さんって?」

「あぁー…それはな、俺が最初にあいつと会った時に超かっこいい技をしながら登場したら神様? って聞かれたから、最強ですっ。って答えただけだ。」

思いっきり吹き込んでる…

「トーリ君かっわいい! 何歳なの?」

なぜか緋奈が興奮していた。いつもはツンツンしてるのに珍しくデレデレだ。

「13歳です。あとボクは男だからかっこいいって言ってもらいたいです!」

確かにトーリの童顔はかわいい部類に入るのだろう。

「拳。真剣衰弱じゃなくて神経衰弱ですよ。子供に間違ったことを学習させないでください。」

「何!? 神経衰弱っていうのか…はじめてしったぜ…まぁちょっとくらい多目に見てくれるって。」

拳はただのバカだが、トーリにバカを伝染させないための雪の配慮なのだろう。

「俺まで間違えて覚えるとこだった…んでやるのか?」

「おうよ!」

拳とトーリはトランプを並べはじめた。すると、緋奈は龍希の横に座った。緋奈は龍希を見てニコッと笑った。龍希はますます緋奈の魅力に魅了されかけていた。龍希がボーッと緋奈を見ていると、緋奈とは反対に雪が座った。雪も龍希に凛とした笑顔を見せた。

あれ? なんだろうこの感じ? 凄いモヤモヤする…

「んじゃはじめるか!」

トーリの子守りを任された拳主催の神経衰弱がはじまった。雪の異常な記憶力とトーリの直感は凄かった。もはや二人の勝負になっていた。次に龍希と緋奈。そして1組の拳。拳はバカだった。ひとつ前の雪がひいたカードを2枚目でめくるという、あり得なくバカな行為を幾度となくやっていた。

「あたし全然ないやー」

「俺もだよ。てか結月とトーリが…」

「いいなぁ…まだ1組しかゲットしてねぇよ。結構真剣衰弱得意なんだけどなぁ」

「それで得意…てゆうか神経衰弱…」

最終的にトーリ9組、雪8組、龍希4組、緋奈4組、拳1組でトーリの勝利に終わった。

「やったー!ボクが一番です!」

「トーリ君強いですね。次やるときは負けませんよ!」

「お? 次やる時は俺の一手で全てを終わらせてやるぜ?」

「あんたバカ? いやバカか。」

「あはは、おっと、」

龍希は片付けたトランプを落としてしまった。慌てて拾おうとすると、気をつかって拾おうとした雪の手とあたった。互いに驚きの声を上げて手を引っ込めた。

「ん? どうしたんだ?」

「い、いや…何でもない何でもない。」

二人は互いをチラチラ見てはすぐ目をそらす動作を繰り返した。その時の龍希の気持ちは不思議なものだった。

なんなんだろう? まるでちょっと前の緋奈と話していた時みたいな…

二人の様子を横から見ていた緋奈はイライラしはじめ、

「あーっもう! ムカつくんですけど! あたし部屋戻る!」

場の空気を読めない鈍感が立ち上がった。

「なんだ? ムカつくなら俺を殴るっぃてぇぇぇ!!!」

緋奈のパンチが拳の顔に直撃した。拳が渾身の演技か、とまでに崩れ落ち、トーリが駆け寄る。緋奈はそんなことを気にせずドアを開けようとした。が逆にドアが緋奈に近づいてきた。次の瞬間鈍い音が響いた。

「ただいま。なんとかっ…え?」

皇離の長旅のお供でお疲れの和也の顔面に今日2発目になる緋奈のパンチがお疲れの和也の顔面に直撃した。拳とは違って真剣に痛そうな見事な崩れ落ちだった。

「ただいまっ…え?」

皇離はこの船の中核的な存在がダブルノックアウトしているのに気がついた。

拳と和也と緋奈が落ち着いたところで皇離が話はじめた。

「えー。とりあえず交渉成立だ。俺達はあと3週間で奪われた領土の奪還を成功させることを条件に、フィリピンのドックにて紀伊の燃料補給を無期限で行えるようになった。」

『おー』

部屋からショボい歓声が上がった。

「あともう一つ交渉をしてきた。これに案外時間をとられちまったが、無事成立した。」

「一体何を交渉したんだ?」

「フィリピン領土の奪還後、中国とフィリピンの停戦を結び、イスラム国の核発射を防ぐことに成功し、フィリピンに安全がもたらされた時、トーリを俺達が連れていけるようになった。」

『えーっ!』

一瞬にして騒がしくなった部屋は再び静まり返る。

「ま、待ってください! 確かにトーリ君は貴重な戦力になりますが、たまたま立ち寄った国を救いがてら何ヵ月とどまるつもりですか?」

「そこは俺とカズと結月で計画すればいいじゃないか。」

「結局私も入ってるんですね…」

「よっしゃあー! トーリを仲間にするために俺頑張っちゃうぜ!」

「ボクが仲間でいいんですか?」

皇離は無言で頷いた。

「とりあえずこれは決定事項だ。さぁフィリピン領土奪還作戦だ!」

こうしてトーリを仲間にすべく作戦がはじまった。

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