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6話 青ヶ島大戦Ⅳ

少年は自分から仕掛けた。自分で自分の能力の本質を、まだ理解出来ていない。今のところは半径5メートル前後の範囲内の、物体を消すことが出来る。人はまだ消せないが…そしてもう一つ

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

雄叫びと共にガイダルの腹にアッパーを決める。ガイダルは和也に切られた傷のせいで動けなかった。限界に近づいていたのだ。少年のアッパーはガイダルに致命傷を与えた。

「ぐはっ、がっ」

少年の使える能力の一つは物体の消去。もう一つは流れをつくることだ。今行ったのは、少年のアッパーを加速させる流れをつくった。そして、ガイダルの背中から逃げていく力を逃さないための流れをつくった。これが何にあたるかというと中国武術で何年も修行して習得出来ると言われる発勁、それ以上の技だ。ガイダルの体内では逃げ道の無い力が彼の体内で往復し内臓にダメージを与えていた。ガイダルは少年と距離をとるために全身から炎を噴射した。少年の力でもゼロ距離で、力を使うリスクがあったため、一旦後方に跳ぶ。ガイダルの体力は限界に達していた。口から血を吐いた。

「早くも限界か?」

「悪いな、剣士に致命傷を与えられていたからなぁ。それにしてもその力は異常だぜ。ぐはっ! はぁはぁ、…ジヴァに報告する必要があるな。」

「ジヴァ? そんなことは知らないが、お前を帰す訳がないだろう? これで終わりだぁぁぁ!!!」

少年はガイダルに接近する。ガイダルは炎の玉を連射する。少年はそれを消し飛ばし、ガイダルの目の前まで近づき、ガイダルの顔面を狙う。

「どりゃぁぁぁ!!!」

少年の右手はガイダルの顔面を直撃する。脳が激しく揺れることで起きる脳震盪だが、ガイダルに起きていたのは脳震盪のレベルではなかった。それでもガイダルは倒れない。少年がガイダルを吹き飛ばそうと力を入れようと入れた時、少年は悪寒を感じた。慌ててガイダルから離れて警戒する。

「誰だ? 隠れてないで出てこいぃ!」

すると少年の頭に皇離の声が響いた。

(逃げろ! 逃げろ! 今すぐそこから逃げろ!)

少年が逃げようとした瞬間。少年の目の前に一人の男が現れた。少年は恐怖のあまり動けなかった。皇離の声は頭に響き続ける。男は突然姿消した。すると、背後からあの悪寒がした。振り向くとガイダルの横にいた。

「この感じ…ジヴァか?」

この男がジヴァなのか!?

「あぁ我輩だ。ガイは相変わらず対等が好きですね。」

「俺があの無能力剣士に能力を使って勝っても面白くねぇからな…」

「ガイの力は傷に比例して力が弱体化する物ですよ。もっと自分の力を有効に使えるようになってください。」

つまり今戦ったガイダルは全くのフルパワーではないということだ。

「お、お前達は何なんだ!」

少年は勇気を振り絞り疑問を口にする。

「あー、あなたですか…なぜこんなところに? あなたは我輩と以前会っているのですが…ご存知ありませんか?」

「そいつは記憶を失っているようでな。でも俺を見て少し記憶が戻ってるからジヴァもためしてみればいい。」

「そうしてみます。」

ジヴァは少年を見た。少年はその目に心の奥まで見透かされている気がした。だが何も思い出すことはなかった。

「おかしいですね…死んだはずの方ですか? よく分かりません…どちらにしよ今度こそあなたの能力、頂きたいのですが…」

すると少年の後方から物凄い突風が吹いた。気がつくと横には拳がいた。

「おい! 今すぐズラかるぞ!」

拳は少年の腹を抱えた。

「逃げるのですか? まぁこの島狭いので逃げても無駄ですよ? 今はあまり多くの人間と接触したくはないので追いかけないですけどね。」

「うるせぇ!ちょっと顔がイケテるからって調子にのるんじゃねぇぞ!」

「あー、あなたもなかなかの物ですね…今度お会いした時にいただきたいですねぇ。」

「何だか知らんがお喋りはここまでだ! 龍神の嬢ちゃんがキレるからなぁ! あいつこえーからよ。んじゃいく、っぞ!」

拳は一つの竜巻になり、基地に向かってとんだ。少年は追いかけてこない謎の二人を見ていた。

「あー、逃げられましたね…我輩達も帰りましょうか。」

ジヴァはガイダルの肩を持って一瞬にして消えた。

「と言うことだ。ジヴァってやつとガイダルってやつは俺の記憶が無くなる前を知っているみたいなんだ。」

少年は皇離に得られた情報の全てを語った。

「漂流少年の能力と存在が俺達の希望となるのか…それとも…」

「どちらにしよこいつが死なかったしめんどくさいことはどーでもよくない?」

「それもそうだな。今は祝杯だぁ! 青ヶ島大戦の勝利に乾杯!」

アメリカ軍は、ガイダルが現れたと同時に撤退を開始したらしい。和也も一命をとりとめることが出来た。祝福ムードの基地を離れあの木の下に二人はいた。

「この森はね、パパとよく遊びに来てたんだ。この島何もないし、軍の訓練が休みのときはよくこの森の中を探索したり、一緒に話をしたり、一緒に寝たりしたんだ。」

「それでこの森を…」

「この島にもね、あいつが来たんだよね。あたしも殺されそうになったんだけどね。あたしの王子様が来たんだ。」

「王子様?」

「大袈裟だけどね。命の恩人、ってこと。あたしがあいつに殺されそうになった時に、あたしの目の前に現れてあいつと戦ったんだ。あたしは必死に逃げたからどうなったのか知らないけど。」

「いい人だな。」

緋奈は空を見上げた。

「今日はあんたが帰ってきてくれて嬉しかった。だから名前つけてあげるね!」

「で、どんな名前?」

「皇離が言ってたことなんだけど、あんたはみんなの希望になると思う。もうこの島を救った時点でみんなの希望。」

緋奈は顔を下げて頬を赤めて小声で、

「あとあたしの希望…」

少年は緋奈が言ったことを聞き取れなかった。

「ごめんもう一回言って?」

緋奈は顔を赤め、

「独り言だってば! あんたとは関係ないの! ほら続きね。」

緋奈は続ける。

「そんであたしの龍神の龍をとって、龍希(りゅうき)…なんてのはどう?」

しばらくの沈黙が訪れた。

「な、なんか言ってよ! やっぱだめ?」

「いや、凄いいい名前だと思うよ。ありがとう緋奈…」

緋奈は好評価を得られて笑顔をつくったが、すぐにやめてしまった。

「べ、別にあんたの呼び名がないとかわいそうだし、あたしが呼びにくいし…でも気に入ってくれならよかった。」

少年いや、龍希は純粋に嬉しく思えた。

翌日の出港に緋奈は来なかった。龍希は一人甲板に出ていた。すると背後から話しかけられる。

「何黄昏てんの?」

振り向くとそこには緋奈がいた。

「ひ、緋奈? えっ? 何で?」

「え? 皇離に頼んでこの船に乗せてもらったんだ!」

「そ、そっか…」

「な、何! あたしが来て不満だった?」

緋奈は怒り混じりに言う。

「いや凄く嬉しいよ。」

「そ、そう。あ、あたし中に戻るから。」

緋奈や皇離達の期待を背負った少年は青ヶ島大戦に終止符を打った。緋奈から龍希という名前も貰い、青ヶ島を去った。皇離一行は同盟国であるイギリスやドイツのある国々があるヨーロッパへ向かう。

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