4話 青ヶ島大戦Ⅱ
皇離のつくった陣形は、南側にある基地の最前線の防衛ラインを固めた。敵艦隊が背後から来る恐れがあるため、東を戦艦紀伊と異能力者。西を拳で防衛する。流石に20隻もの艦隊となると東西共にじじょに防衛ラインが南下する可能性は高い。そんなことで籠城戦に近い戦いがはじまった。
「んでかれこれ2日たったわけだが五分五分か…そろそろ拳の体力も限界だろう。」
「皇離? 僕達から仕掛けないの?」
「まぁ待ってな。カズにはちゃんと働いて貰うからな! バカは何とか船を沈めずにやってるか?」
「そこはバカもしっかりやってくれると思うよ? 何で手っ取り早く沈めないんだ?」
「バカは俺達の秘密兵器でもある。あまり強すぎることがばれて核兵器でもぶっぱなされたらまじでジ・エンドだろ?」
「拳ってそんなに強いのか? ただのバカにしか見えなかったけど…」
「まぁただのバカにしか見えないな。でも戦力としては、核兵器クラスだぜ?」
「そんなことはどうでもいいんだけどー。あたし的にはそこのムッツリ剣士に下着見られて気持ちがブルーなんだけどー。どう責任とってくれんの?」
「まぁまぁお嬢さん。カズがいなかったら今頃二人ともあの世行きだっただろ?しかも最悪のルートで。それに漂流少年にも見られたんだろ?」
(別にこいつなら…)なんて言えない…緋奈はそう思った。
「ともあれバカの体力が尽きたらカズと漂流少年で一暴れしてこい。カズは躊躇いってもんがないけど、漂流少年は人殺しになる必要はないぞ?そうだなぁ…足の骨折るくらいはして欲しいけどな。」
少年は異能力が使えるようになったがまだあまり使いこなせていなかったが皇離はその力を高く評価した。それにしても少年にとっては足の骨を折ることは、
「それも充分過ぎるほどに躊躇するわ!」
すると突然、突風が吹いた。同時に西で雷のような物も見えた。
「おっと、今日もはじまったみたいだな…」
拳は考える。昨日も一昨日も攻撃せずに相手を撤退させた。だがそろそろ限界が近づいている。俺はバカだってことは分かる。しりとりでなんの躊躇いもなくキリンと言ってしまうほどに。そんなバカだけどあと一日もちこたえる!
「やっとお出ましか…」
敵の数は8隻。一斉に大砲や機関銃などの飛び道具による攻撃がはじまる。
「あのバカの能力は雷神と風神の力だ。雷は物をを焼くとこができ、風は物を吹き飛ばすことが出来る。その力はバカげてる。二人の神をまとったバカ…それが獅子王拳だ!」
拳は自分を中心に大規模な竜巻を起こす。それでも弾けない物は雷でうち落とす。最大限加減はしているがそれでも船に被害がでかねない。砲火が止んだ瞬間。稲妻のようなスピードで敵艦の主砲を殴り壊した。それも一発で。
「バカは頑張ってるな。紀伊も多分問題はない。問題は…」
皇離の元に一人の軍人がやって来た。
「出来たか?」
「はいっ!ただいま作業が終了しました!」
「皇離?何をやってたのか教えてくれないか?」
「皆ついてこい!」
三人は皇離のあとに続いて基地のコンピュータールームにはいった。そして皇離が喋りはじめた。
「俺はこの戦争に終止符を打ちたい。だがこの戦争の原因が全く掴めないんだ。そのための情報源として敵艦とアメリカのやりとりからアメリカのコンピューターのハッキングするとこにした。やり取りに関しては暗号が使われていて解読が不可能だ。でも別の情報が手に入るのならそれでいい。んで何が見つかった?」
「それが、変な日記のような物が見つかりました。解読した文面です。」
四人はその日記のようなものを見た。
『今日はーーーを利用した人体実験が行われた。我々ーーーの技術力では到底不可能なレベルだ。結果はーーーの分離は可能という結論が出た。ーーーを利用し、兵器をつくるとのことだ。人間からからーーーを取り除いた場合人間は人間でいられるのか。どちらにせよアメリカはやつらの駒だ。人間はーーーには勝てない。』
「文字伏せばっかで訳分かんないんですけどー。」
「本当だね。なんでこんなに文字伏せなんだ?」
四人の元に一人の男がやって来た。
「特殊なプログラムだ。文字一つ一つに特殊なプログラムが埋め込まれていた。この文面の保管されていた所にはさらに特殊なプログラムが施されていてね。様々な条件が重なって奇跡的に入手出来た訳だ。これは誰かのメッセージだ。文字伏せになっている理由はこれを保管する間に更に別の誰かが文字を消したって訳だ。」
「博士? これはアメリカから誰に向けてのメッセージなんですか?」
「さぁな。俺にはさっぱりだが皇離が笑ってるって訳だ。何か分かったんだろう。」
「和也さん。この人は?」
「あぁこの人はうちの船員の天才ハッカーで何かの研究をしている坂下博士だ。」
「俺の紹介なんていい。皇離? いい加減教えてくれないか?」
皇離はその文面を見てただ笑っていたが、顔を上げて説明をはじめた。
「アメリカに戦争を起こさせている黒幕がいる。そして黒幕は人間でない可能性がある。」
『・・・は!?』
その場にいた全員がその言葉の意味を理解できなかった。
「あくまで推測だが我々ーーーの技術のとこに入るのはアメリカ。それか人間だ。」
「えっとーわれわれアメリカのぎじゅつりょくではとうていふかのう…アメリカよりも科学が進んでる国なんてあんの?」
「龍神のいう通りだ。アメリカを越える技術を持つ国は存在しないだろう。組織的にもそれは多分ない。しかも到底不可能とまで言っている。」
もし本当にそうならえらい話になるだろう。これを公表すればとりあえず世界の国々はアメリカの調査に当たるだろう。だが皇離はそうしなかった。
「これは極秘書類として保管する。データは完全に消去しろ。俺のもつこの紙以外全てだ。宇宙人なら下手に刺激すると危ない。こんだけ有力な情報を入手出来たのなら俺は満足だ。攻めにでる!あと漂流少年は龍神と一緒に待機してろ。俺の勘が正しければお前の力が必要になる。」
皇離の命令により異能力者と青ヶ島日本軍は森で戦闘を開始した。異能力者の活躍によって敵を撤退させることに成功。それに伴い東西に分かれていた艦隊も北に集まった。このままの勢いで押しきれると思った。が、
「皇離艦長! 最前線で戦っていた異能力者及び我々軍隊死傷者多数! 正体不明の敵に次々にやられています! 現在和也殿がしんがりについて全軍撤退中にあります!!!」
「お、皇離? 一体どういうことだよ? 和也さんがしんがりって…」
「落ち着け漂流少年。カズはそんな簡単にまけない。俺の勘が当たったということでいいな。」
「じゃ、じゃあこいつが戦うの?」
緋奈は深刻な顔をして言った。
「俺があの文面を見てもう一つ考えたことだがあれは能力の研究でもあるということだ。それなら敵軍に俺達みたいに覚醒したやつがいてもおかしくないだろう。」
「和也さん…皇離。俺が行く。」
「ふっ、最初からのその気だ。死ぬなよ。」
「ね、ねぇ! 死んだりしないでよね! 帰ってきたらあんたの名前つけてあげるんだから!」
「心配してくれてありがとう。いい名前を期待してるよ。」
「べ、別に心配なんてしないし! 死んだら名前教えられないんだもん…そしたらあたしが考えた時間が無駄でしょ?」
「漂流少年。万が一の時は逃げてこい。まだ力を使い果たした拳がいる。そして俺もな。」
「俺は和也さんに緋奈を助けてもらった。だから今度は俺が和也さんを助ける。」
少年は和也を救うべく戦場に向かった。記憶を無くしていても少年は強い希望の光を放っていた。