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観察二日目

サポートキャラは強力ですが、ダンジョンのスタート時のサポートキャラ作成のYes/Noは一種のトラップです

サポートキャラ作成には初期では洒落にならないポイント(所持ポイントの98%)が使用されます

【SIDE:B】

 

 俺「以外」ツエー!


 資材で発生するモンスターは初心者といい勝負だと聞いていたが、ダンジョンに乗り込んで来た冒険者らしき男たちも、どう見ても巨大なカッターナイフの刃に手足を付けただけの様な「ソードゴーレム」も共に強かった。


 油っぽい感じの茶と黒のまだらの皮をした足の長いゴブリン(「便所ゴブリン」と仮称)をばったばったとなぎ倒してきた冒険者たちを、ソードゴーレムはズンバラリンと真っ二つにしてしまった。

 エロ画像取得の為に飽きるほどグロ画像を掴まされた俺で無ければ吐いていたことだろう。

 実際に目の前とかだと、臭いとかそういうので精神の許容量オーバーしてただろうけどな?


 「貴様の運の強さだけは認めてやろう。出来たばかりのダンジョンにソードゴーレムが発生するなどということは滅多にないぞ!?」

 悪魔幼女ちゃん、そういえば名前聞いてなかったな。


 「そういやさ、君の名前はなんていうの?」

 「非常に腹立たしい話だが、命名権はダンジョンマスターのものだ。つまり貴様が名前を付けない限り俺様に名前は無いのだ。」

 ギロリと漫画だったら三角怒り眼になってるんだろうなぁというキツい視線を向けてくる悪魔幼女メイド。

 下手な名前を付けようものなら「意見」という名の「修正」が待っていることは間違いない。

 しかしながら、この子がどんな名前を喜ぶのか、全く、さっぱり俺には分からない。


 「リリスとか、どう?」 

 人名なんぞ、基本キラキラネームでもない限り「有りもの」だ。

 パクリだろうがなんだろうが、響きと意味が不適当でない限り構わないだろう。


 「ふん! 貴様が考えたにしてはマシな方だな。『ポチ』とか『タマ』とかだったら修正してやるところだったのだがな?」

 セフセフ、なんとか命の無事が危険を回避したような気がしないでもないことも無い。


 「これでポイントが増えたが、まずはダンジョンコアの防御を優先すべきだと思うぞ?」


 こっそり自分のステータスを上げようかと思ってたんだが、ダメだしをくらった。

 まあ、俺が多少強くなったところでタカがしれてるしな、少なくとも現時点では。


 「資材で扉の強化とトラップの追加かな?」

 「ふん、少しは分かっているではないか。スチールとゴムでドアの強化、ガラスと石でトラップ作成と、これで残り8ポイントだな。」

 いや、手際いいって言えばいいんだけど、またごく微小の残ポイント?


 「5ポイントでソードゴーレムの修復を行った方がいいだろうな? 次にポイントが入ったら15ポイントで強化も出来るぞ?」

 「それでお願いします。」

 うん、もうソードゴーレムだけでいんじゃないかな?

 便所ゴブリンは要らない子?


 「このダンジョンのゴブリンは通常のゴブリンよりも強いぞ? 少なくとも貴様なら瞬殺だ。ジャンプ力が通常のゴブリンの三倍はあるからな!」

 赤くないのに三倍かよ!

 さりげなく俺をディスるのに余念が無いな!


 「あー、そう言えばちょっとお腹すいたかも? なんか食べるものあるんだっけ?」

 「チョ、チョコはやらんぞ! あれは俺様のものだ!」

 ふーん、チョコがあるんだ。

 庇護者すげえな。

 理に適ってる。

 暑くて溶けちゃうとか無ければ保存食にチョコは理想的だよな。

 しかしこの幼女、チョコを独占したがるとか可愛いトコもあるんだな?

 

 「うーん、まあ、じゃあチョコはいいや。他に何があるの?」

 「後はドラゴンサイズの干し梅だな。」

 「ドラゴンサイズ?」

 「少しずつ食べたら一年はもつ量があるぞ?」

 干し梅は好みじゃないのか積極的に情報を公開してくれるな。

 チョコはどの程度の量があるかも教えてくれなかったもんな。

 俺の場合、干し梅は積極的に食べるほど好きではないが、見向きもしないほど嫌いでも無い。

 しかし、そんな巨大な干し梅の元になった梅の実、そしてそれが実った梅の木ってどんだけデカいのよ!?

 てか、ダンジョンの通路、どうやっても通らないよね!?




 次に入って来た冒険者たちは最初の冒険者たちに比べると弱かった。

 便所ゴブリンのみに倒されるという体たらく。

 うわぁ、あいつら死体食うんだ・・・。

 ・・・冒険者なんか成るもんじゃねえな?

 

 「貴様とどっこいのショボさだな。ソードゴーレムの強化は当然として、モンスターの種類を増やせるがどうする?」


 便所ゴブリン、配下とはいえ見た目が気持ち悪いからなぁ。

 もう少しマシなのがいいな。


 「候補としては①豊富な鉄を生かしたアイアンゴーレム②豊富な石材を生かしたストーンゴーレム③豊富なプラスチックを生かしたプラスチックゴーレム④豊富なガラスを生かしたガラスゴーレム⑤豊富なゴムを生かしたゴムゴーレムといったところか?」

 全部、ゴーレムじゃねーか!

 「あ、そうそう黒鉛のゴーレムも作れるぞ?」

 結局ゴーレムだし・・・。


 「チョコのゴーレムは却下だ! もったいない!」

 いや、食料をゴーレムにする気はねーよ・・・。

 「干し梅、そうだな、種は食えそうもないから種を巨大ゴーレムにするのもいいかもしれんな!」

 「あー、じゃ、それで!」

 「残り4ポイントだな。巨大ゴーレム用の部屋を作るぞ、残りゼロだ。」

 俺が要らない子?

 なんかスキップモード化してね?



 巨大ゴーレムツエー!

 ソードゴーレムも強かったが、「デカイは強い」な、やはり。

 元が梅干の種とは思えねえよ。

 

 梅干の種に殺されて終わる人生。

 冒険者たちも悲惨だなぁ・・・。


  

【SIDE:A】


 目覚ましの音に目を覚ました保が机の上に置かれた観察セットを見ると、そこには幾つもの部屋が増えたダンジョンがあった。


 「うわ、なんか出来てる! 小さいなぁ・・・ゴミ箱みたいになってたの全部消えてるな。考えてみれば凄いよな、どうやって消えたんだろう? 次は何を入れてみるかな? クワガタの幼虫とか入れちゃダメかな? このちょっと大きいのも動いてるな、なんか植物っぽい感じだけど。」


 良く良く見ると何か小さなものが凄い速さで動き回っている。


 「なんか、これ、生き物? 水となんか食べるものあった方がいいよね? なに食べるのかな?」

 ゴミ箱からペットボトルのキャップを取り出し、保は顔を洗い歯を磨く為に行った洗面所で水を入れてケースの中に置く。

 これまたゴミ箱に入れてあったポテチの袋を逆さにして細かい欠片や粉を中に落とす。

 ドロップの缶の中に残っていたハッカ味も置く。

 引き出しに忘れてた給食のチーズも入れる。


 「保ーっ、はやく朝ご飯たべちゃいなさい!」

 「はーい!」


 保はランドセルを背負い部屋を出た。

 朝食を取り、「ごちそうさま」を言い、「いってきます」をして家を出る。

 だいたい登校時間が一緒になる友達と家の側で合流。

 昨日のテレビや今週の漫画雑誌の話をしながら学校へ向かった。



【SIDE:B】

 

 冒険者には学習能力が無いのだろうか?

 いまだに一人も生還していないのに、ダンジョンに躊躇うことなく入ってくる。

 普通、こんだけ連続して未帰還が発生すれば、調査とか逆に進入を禁止するとかしそうなもんだよな?


 そんなことを考えながら、今回もソードゴーレムさんの活躍を見ていた俺だったが、気付いたらリリスが涙目になっていた。


 「どうしたんだ?」

 「酷いトラップだ! 白くて甘そうだと思ったらスースー、ヒーヒーする!」

 どうやら追加物資の支援があったようだ。

 ホント庇護者さまさまだよな。


 「スースーってこれか? これハッカのドロップじゃね? 随分でかいけど・・・。どうせお前の事だから口いっぱいに入れたんだろ? そりゃヒーヒーにもなるわ!」

 「うるさい! 水の支援があったのでプラスチックで水を貯めるプールを作った。後はチーズか? 貴様が頼りない分、庇護者は有能なようだな!」

 いちいち俺をディスらないと喋れないのか、この幼女は!


 「後はパリパリとしょっぱい食べ物だ。おいしいが喉が渇くな!」

 パリパリでしょっぱいだと?

 「ポテチじゃねーか! スゲェ! これでコーラがあればバッチリだったんだがな!」

 「あまり食うな、貴様! 無くなってしまうではないか!」

 「うっせ! 干し梅ばっかりじゃ飽きるんだよ!」

 食い物をちゃんとフォローしてくれるのは本当に有り難い。

 ダンジョンコアが無事ならば、俺もリリスも食事を取らなくても平気らしいが、俺ヨエー状態で引きこもりの今、食い物以外楽しみは無いのだ!



 あ、また冒険者倒したんだ、ソードゴーレムさんお疲れ様です!


 「む、ポイントが増えたな、貴様が不満そうだったからな、他にこのダンジョンで生み出せるモンスターを調べてみたぞ? ①魔法が使えるが線の細い外見の良い種族②魔法は全く使えない脳筋巨体種族③不定形ヌルグチョ種族、この辺りはどうだ?」

 おお、やっぱサポートキャラがコレだし、美形魔法種族で!

 「コレとはなんだ、コレとは!(ドスッ!)」

 だから、そこへのパンチはダメ!

 いじめよくない絶対ーっ!!!



【SIDE:A】


 学校から帰った保は手洗いうがいを済ませると自分の部屋に向かう。

 ランドセルを下ろし、今朝は良く観察出来なかったダンジョンを観察する。


 「ここが石のある部屋で、ここは倉庫かな? なんかモノが入ってるっぽいし・・・・・・で、この大きなのが居る部屋があって、後は通路? 水は無くなってるな、生き物が飲んでるのかな? 水以外は飲むのかな? 虫とかだと甘いの好きだよね。噛んだガムとかも意味あるかな? お母さんに頼んで折れた針とかも貰ってみるかな? クワガタの幼虫は居なかったけど、ダンゴ虫入れてみようっと。アリは一匹とかじゃ意味ないだろうし・・・。」


 中を見ながら考えを口にする保。

 一通り観察すると、ランドセルから教科書とノートを出し、宿題を始める。

 思っていたより不思議なダンジョンで色々試したいことはあるが、まずは宿題が優先だ。

 男の子だからこういうものに対する破壊願望みたいなものもあるから、思い切り揺すぶったり、振ってみたりするとどうなるかな、なんて興味もあるが、もしやるとしてももっと色々変化があってからだ。


 「夏休みの自由課題、これの観察・・・とかはダメだよなぁ・・・まだ先の話だけど何にしようかなぁ。」


 いつもより宿題に集中できていない自分を自覚しつつも保はチラチラとダンジョンを見ることをやめることが出来ない。

 それでもなんとか宿題を終わらせ、明日の時間割に合わせてランドセルの中身を入れ替える。

 縦笛の掃除用の棒に付いたガーゼを見て「布切れとかそういうのもいいかもね。お父さんの革細工の端切れとか」とつぶやく保。

 意外と独り言が多い。

 両親共働きの弊害だろうか?


 「あ、生ぬるくなっちゃった・・・。これも入れちゃえ!」

 給食で出て後で飲もうと思ってポケットに入れて忘れていたカゼイシロタ株の入った乳酸飲料。

 蓋を開けて容器ごと土に埋め込む様に入れる。

 「あと入れてないのって、どんなのがあったっけ? 色々入れた方がいいんだよね? 1円玉とか、5円玉とかはどうかな? 10円はちょっともったいないし・・・あ、セミの抜け殻も入れてみよう! あと一本だけ残った爆竹、どうせ湿気ってるだろうし。」

 

 前日ほどではないがゴミ箱状態になってきている。

 綺麗さっぱり消えてしまったことで大胆になっているようだ。

 昨日はあったためらいが無い。


 その後夕食を食べた保は食事中に落としてしまったハムの切れ端をティッシュで床を拭きながらその中に包み込んで、そのままポケットに入れて部屋に持ち帰るとかんさつセットへ投下した。


 「明日はどうなるかな?」

 少しわくわくしながら眠りに落ちる保だった。



【SIDE:B】


 「乳酸菌取ってる~?」と言わんばかりに乳酸菌飲料が投下された。

 その量たるや貯蔵プールで泳げるほどである。


 リリスはすっかりお気に入りだ。

 自分の分だけ魔法を使って冷やして飲んでいる。

 

 無茶ズリィい!

 俺のサポートキャラじゃねーのかよ!?

 ご、ごめんなさい!

 だ、だからそこは殴らないで!


 

 コホン・・・金属もアルミと黄銅が増えた。

 それからダンジョンの入り口近辺を凶悪なモンスターが徘徊する様になったらしい。


 王○?

 うわ、こりゃトラウマるわ。

 キモい。

 多足系のデカいのってキショいよな?


 ダンジョンのモンスターじゃないの?

 へえ、でも別にこっちに攻めてこないんでしょ?

 通路よりサイズデカいし、スルー推奨で!


 え?

 トラップ用に優秀な資材が入ったの?

 うわぁ、対G用粘着シートみてぇ・・・。


 便所ゴブリン、あれにくっ付かずに歩けるの?

 あの油っぽい表面のおかげ?

 やるじゃん、便所ゴブリン。


ソードゴーレム=保の置いた折れたカッターの刃です

初っ端に入って来た冒険者たちは中級以上のパーティです

ソードゴーレムが居なければいきなり詰んで居て、保はゴミが無くなっただけで土のまんまの観察セットを目にすることになっていた可能性もあります

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