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【五十日目】

【五十日目】

巨大逆さピラミッドが大地に降り立ってから一日目。

俺とエイミーさんとアウエラさんの三人は偵察に出かけた。

と言っても巨大逆さピラミッドは山を三つ押し潰すような形で近場に着岸、――――もとい座礁しているので、こちら側の山から覗き見る形だ。

アウエラさんが持っていた双眼鏡(実際には縁が付いただけのレンズのようなもの。しかし未来的なギミックが満載)で、俺は逆ピラミッドの一部を見た。

 逆さピラミッドの表面から、いかにも魔物風とした生物が生み出されている光景。

 それはまるで別世界の出来事のようで、ファンタジーと言うよりもむしろSFチックな光景だった。

 あきらかに既存の生物とは違う怪物、通称【魔物】は、定期的に逆さピラミッドから生み出されている。

そのペースは、目に見える範囲内だと二時間に一匹程度。

見えない箇所も同じように魔物が生産されていると仮定して、表面積比率で換算すれば、一時間に一匹程度だろうか。

いまのところその大きさも最大で大型犬程度で、過去にそんな【魔物】と戦いを繰り広げたことのある二人は、定期的に狩りを行うならそこまでの脅威は無いという話だ。

 【魔物】は基本的に非情にタフで好戦的だが、嗅覚も弱く野生の生物とは思えないほど鈍感で、力は弱く、足も遅い。巨体になればそれらの弱点もある程度カバーされて厄介だが、よっぽどの巨体ではない限りそこまでの脅威は無いそうだ。なかには特殊な能力を持った奴もいるが、たいてい見た目通りの攻撃方法なので初見でも対処するのはそう難しくないらしい。

 ――――武器が充実しているならの話だが。

 「キミの意見を聞きたい。どうする?」

 エイミーさんは尋ねる。

 そんなの聞かれるまでもない。

 フェラクラーリさんたちが民族大移動的な引っ越しができない以上、俺たちは定期的に【魔物】を狩るしかない。

生活を守るために戦わなければいけない。

 闘争は嫌だと言って逃げるわけにはいかないのだ。



 ライトセイバー(いつ使えなくなるのかは不明。そもそも動力源は何?)

 鉄枝の槍

 刃こぼれした鉈

 弓(矢×30)

 その他(雑貨など)


エイミー

 短銃(残弾少なし)

 鉄枝の槍

 古びた斧

 弓(矢×30)

 その他(ワイヤーなど)


アウエラ

 短銃(残弾少なし)

 鉄枝の槍

 アーミーナイフ

 弓(矢×30)

 その他(ワイヤーなど)



 俺たちはそれぞれ武器を手に、獲物を狩りに出かける。



 【魔物】との遭遇は、探索を開始してから一時間後。

俺が初めて遭遇した【魔物】は、逃げ隠れするつもりなんてまるでない、燃えるような真っ赤な体毛をしたイヌ科の生物。どこがどう違うのか言葉では表しづらいが、明らかに普通の生物とは違う雰囲気を持った狼だった。

 なんと言えばいいんだろう、……その狼はどこか作り物めいていた。

 まるでゲームに登場してくる敵キャラのようで、しいては電子情報体のようで、その虚ろな存在感はこの世界に存在している事さえおかしいように見えた。


 エイミーさんが言っていた通り【魔物】は気配に鈍いようだ。

 半径二十メートル圏内に、俺とエイミーさんとアウエラさんの三人が侵入しても、気付く気配はない。隠れてさえいれば多少音や振動が伝わったとしても全然気付かないのだ。

それは気配に敏感な俺からすれば生物として不自然過ぎて気色悪いのだが、気付かれていないと言うことは好都合なことなので、考えるのをやめる。

エイミーさんは俺たちと視線を交わし、ハンドサインを出した。

 俺たちは木の陰から身を乗り出し、一斉に矢を放った。

 情け遠慮ない奇襲攻撃。

 放たれた矢は三本全弾命中し、そのうちの一本は急所である心臓に突き刺さったように見えた。

 しかし【レッドウルフ】とでも呼ぶべき【魔物】は倒れない。

 これもエイミーさんが言っていた通りだ。

 非常にタフ。

 そして好戦的。

 普通の生物なら瀕死のダメージを受けているはずなのに、【レッドウルフ】は一番手前にいたエイミーさん目がけて突撃を仕掛けてきた。

 エイミーさんは【レッドウルフ】が向かってくるにもかかわらず、冷静な動作で次の矢をセットして、カウンターの要領で脳天に直撃させる。

 ワンテンポ遅れて二本の矢が【レッドウルフ】を襲ったがオーバーキルだっただろう。

 その動きを《完全に止めた》【レッドウルフ】。

 普通の生物であるなら死後に痙攣などを起こし、多少動いたりするものだが、【レッドウルフ】はまるで土くれのように身動きひとつしない。

それはまるで生命であった痕跡が消失しているようであった。

 とても不可解で、不気味だった。

 「これからもっと不可解な現象が起きる」

 【レッドウルフ】が活動を停止してからちょうど一分。

 【レッドウルフ】は消えた。

 これは比喩表現ではない。

 なんの予兆も無く【レッドウルフ】はこの世界から唐突に消えたのだ。

 俺はこれを知っていた。

 ゲームではありきたりな手法だ。

 ゲームではもう少し穏やかな方法で少しずつ消えるのだが、これはゲームと同じ現象だと俺の直感は言っていた。

 ……現実ですよねここは?

 だけどすでに俺は現実離れした出来事を多く体験していた。

 これぐらいの非現実ファンタジーは想定されていた範囲内のはずだ。

 しかし実際にこの目で見て、体験してしまうと、想定していた以上の『違和感』が襲ってくる。

 いくらなんでもコレは無いだろう。



 まるでゲームの中に招かれて、《誰かの手のひらの上で遊ばれている》ようではないか。



 その日、俺たちは【レッドウルフ】の他に二体の【魔物】を狩り、逆さピラミッドの調査もすることにした。

 近くで見ても逆さピラミッドは魔物を定期的に生み出す以外は普通のピラミッドにしか見えず(山より巨大で逆さだけど)、とくに成果も無く、みんなが待つ家に帰った。






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