【四十九日目】
【四十九日目】
この島に辿り着いてから約五十日。
最初の方こそ戸惑いも多く、ギリギリの生活で、エディが仲間になってからはさらに大変だったような感じはあったが、エディがいたからこそ助かったと思えることも多く、お互い足りないとこを支え合い、そしてフェラクラーリさんと出会い、エイミーさんとアウエラさんと出会い、毎日が安定し、ここでの生活に安らぎさえ覚えるようになっていた。
俺はこの世界のことを舐めていた。
最近このファンタジー世界にも馴染んできていると思っていたが、この世界は俺の想像以上にファンタジーで怖い世界だったのだ。
え、なにアレ。
逆さになったピラミッドが、空に浮かんでいるよ?
北の方から、ゆっくりとこちらに近づいているよ?
遠目からでも馬鹿らしくなるほどの巨大なピラミッド。
対比物の少ない空の上だからその正確な大きさはわからないが、底辺(上にあるけど底辺?)となる一辺の長さはおそらく軽く五キロメートルを超している。
今現在はまだ遠くの空の上だが、目に見える大きさは徐々に増している。
俺の直感は最大警告を発していた。
アレはやばい。
なにがどうやばいのか具体的なことはなにもわからないが、絶対やばい。
やばいやばいやばい。
今すぐにでも逃げるべきだと感じている。
ここはすべてを捨ててでも逃げるべきだろう。
いやしかし、そんなことができるのか? 命より大事なものは無いとはいえ、根拠のない勘だけでみんなを路頭に迷わせてもいいものなのか? エイミーさんとアウエラさんなら問題はないだろう。彼女たちは二人だけでも生きられる。だけどエディは? フェラクラーリさんは? ミニ&ハーフさんを含むフェラクラーリさんたちを連れてのあてのない旅は可能なのか? 不可能だ。どう考えても悲惨な運命が待っている。
考えがまとまらない。
俺たちは緊急会議を開いているのだが、話がまとまらない。
エイミーさんとアウエラさんも色々な提案をしていたが、実用的な案は出なかった。
そもそも、あのピラミッドはなんなんだ?
生まれた時からこの世界にいるフェラクラーリさんでも知らないらしく、まさに正体不明の飛行物体だ。形と規模がおかしいが、あれはUFOだ。
エイミーさんたち軍人さんは、ピラミッド内部に高度知的生命体がいると思っているらしく、接触するのは危険だと主張。このままメルヘンな世界に隠れているのが一番いいと言っている。
エディは違う意見があるらしく、あれは神話時代の道具の一種ではないかと主張。エディの世界には過去に魔法的な道具があったことだけは分かったが、あとに続く説明は俺にはまったくさっぱりで理解できなかった。しかし最終的に出した結論は、手出しをしなければ危害を加えるようなモノじゃないと判断し、やはりメルヘンな世界に隠れてやり過ごすのが一番いいじゃないかと、エイミーさんたちと同じことを言っている。
フェラクラーリさんは泰然自若としたものだ。
《わたくしはここから離れては生けていけませんので、なにがあろうとすべてを受け入れるつもりです》
運命にすべてを委ねるその潔さに、俺は憧れたくなる。
一刻も早く逃げたほうが良いと言っているのは俺だけだ。
俺だけでも逃げるべきか?
そんな思惑が頭に過ぎる。
いやいやいやいや。ありえない。俺は馬鹿か。
俺は《また同じことをするつもり》なのか?
俺はみんなと一緒に留まることにした。
誰かを見捨てて一人だけ生き延びるなんてありえない。
俺の直感は相変わらず最大警告を発し、本能レベルで逃げだしたい気持ち満載だが、俺は《むかしの俺とは違う俺でありたかった》。
深夜。
ちょうど日付が変更するか否かの時間帯。
空を漂っていた巨大逆さピラミッドは、三つの山を押し潰しながら大地の上に着岸した。
明日から本格的なファンタジー編に突入。
まあ、主人公もあんな性格だし、作者もいい加減な性格なので、本当にファンタジー物語が始まるのかどうかは分かりませんけど。




