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【四十三日目】

【四十三日目】

 だから俺は食糧を確保する。

 俺が頑張って食料を確保して食事情の改善ができれば、食事情うんぬんから始まった子種ください発言はなかったことにできるはずだ。


 朝、誰よりも早く目覚めた俺は、一度は諦めた狩猟民族として活動を開始する。

 農業では間に合わない。手っ取り早くフェラクラーリさんを納得させるにはみんなが食い切れない量の食材をゲットするしかないのだ!

 俺の貞操の危機が迫っているので切実だ。

 これまでは適当にやって来たけど、すこし気合を入れて行かなければいかんのかもしれん。

 俺は走る。

 一体どこに向かっているのか俺自身分からんが、とにかく闇雲に走って動物が居そうな場所を探す。

 動物が居る場所と言えばやっぱり水場を探すのが原則かもしれないかもだが、この島は湧き水が豊富なので動物が集う場所を特定できそうにない。

 豊かすぎる自然が逆に憎い……っ!

 どこにでも動物の姿は見えるが、俺の手が届く範囲にはどこにもいない。

 せめて弓矢があるならと思うが、この島のどこかにワイヤーでもストロングスでも落ちてないものかねぇ? 弦が無ければ矢は飛ばない。

 無いものは無いと割り切ろう。

 どうせ人生はあるものでやっていくしかないのだ。

 壁に当たって止まった時、そのまま立ち止まるのか、後ろに進むのか、それとも後悔しながらも前に進むのかは自分の意思次第だ。



 「俺はずっと、逃げ続けていたのかもしれないな……」



 いやいやいや。

 そんなことで悩むのはどうでもいい。現状の問題を解決するのが最優先だ。

 俺は山野を駆けまわる、面倒だからと言って敬遠していた追いかけっこで獲物を追い詰める。化け物じみた俺の体力に勝てる生物はおそらくいない。

ぶっちゃけ、いまの俺って睡眠さえ不必要なんじゃね?

睡眠をほとんど取っていないのに、疲れは当然のように感じない。

 シカを一頭、キツネを一匹、コモドオオトカゲみたいなのを六匹、鉄枝の槍で仕留めた。

 シカは走り倒して仕留めたけど、キツネは偶然出会っての捕獲だ。トカゲは生死を懸けた戦いの末に仕留めた。と言っても槍の長さを利用した安全圏を保った中距離攻撃での戦闘なので、やっぱり戦いと言うよりかは狩猟か。こっちは怪我一つしてないし。

 俺がちょっと危険を冒して本気を出せばこんなものだ。

 ファンタジー体力に頼っている部分が大きいけれど、こんなものだ!

 下処理をするためにも何度か小川に立ち寄った。血抜きに内臓の摘出、皮剥ぎに解体。結構な重労働。えっさほいさと黙々と作業を続ける。


 ……あ、

 ……え?


 気配がした。

 一般的に《殺気》と呼ばれる、刺すような気配。

それが二つ。

しかしこれは獣じゃない。

どこか粘っこい感じの気配は……。

 息を潜んで……、来るっ⁉

 「フリーズっ‼」

 俺は木の裏から現れた人に、短銃らしきものを突き付けられた。

 俺は慌てて手を上げた。

えーと、撃たないでください。俺は無抵抗ですからー。

俺がもう一つ気配を感じていた場所から、もう一人姿を現した。

現れたのはウエットスーツに機械や計器を取り付けたような未来的な服を着た女性で、やっぱりその手には短銃らしきものを握っていて、俺を狙っているわけではないけれど、俺が不審な動きを見せれば即座に発砲するだけの熟練した雰囲気を感じた。もちろん目の前で俺に銃を突き付けている女性も同じような服を着ていて、俺が怪しい動きをすれば即座に射殺するだけの軍人めいた雰囲気を醸し出している。

 こえー、

こえーよっ!

 ワイバーンやイノシシとの遭遇とはまた違う怖さだ。

 脂汗をダラダラと流しながら、相手さんの反応を待つ。

 軍人っぽい女性さんは俺の姿を観察するようにまじまじと見て、自分の何かに納得できたのか短銃らしきものを収めた。

 首付いているダイヤルらしきものを回し、左腕に取り付けられているタッチパネルのようなものを数回触り、軍人のような女性は喋り始めた。

 「驚かせてしまって済まない。キミはここの住民か?」



 これが俺の、未来人とのファーストコンタクトだった。






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