【二十日目】
【二十日目】
遭難してから二十日目突入。
うむ、そろそろ本格的な遭難だ。
遭難慣れしている俺にとって二十日目は折り返し地点のような感じ。焦りが出始める時期だ。たとえ遭難慣れしていても、じわりじわりと不安が滲み出てくる。一番精神的に辛い時期。諦めの言葉がたまに口から零れる時期だ。
この『絶望期』ともいえる時期を超えて遭難し続けたことは一度しかないが、この時期を超えると、遭難したことを忘れて現状を楽しんでしまう『愉快期』に突入してしまう。それまで積もり積もった不安感や絶望感そして慎重さが急に霧散して、持ち前の好奇心や無茶無謀を正しく把握できない童心が満ち溢れてしまう時期のことだ。まだ冷静な判断力が残っている現状からすれば、愉快期の俺は現実逃避をしているただの馬鹿男なので、愉快期に突入する前にこの現状から脱出したいと思っている。
さてはて。
しかしながらどうするか。
まったく位置関係が分からないんだよね。
とりあえず北に向かえば山と森が広がる陸地があるのは確認済みだが、人間の集落とかはあるのかい? 内地の奥深くに進めば進むほど、泥沼のファンタジー世界に足を踏み入れて行く予感がする。
ならば海洋に出て、違う島に行けばいいじゃない。と安易な考えはできない。
俺はすでに海難事故った身です。台風直撃秋の海水浴は、死んでいなかった方が不思議なほどだ。海で迷子は怖い。しばらくは無謀な行動に出ませんよ。暑さ過ぎれば忘れるかもしれんけど。とにかく今しばらくは、有るか無いかもわからない新天地を目指すことはしないです。
さあ、これで行き詰った!
俺は一体どこへ向かえばいいんでしょう!
目標とするべき指針が無いぜ!
いまはとにかく旅立ちができる準備を着々と進めているが、問題点はまだありまして。
金髪美女さんはどうしましょうか?
拾って助けたはいいけれど、俺だって余裕があるわけじゃない。
だけどもこんなファンタジーな世界で見捨てて旅に出るってのも後味が悪すぎる。
せめて彼女に一人でも生活できるだけのサバイバル能力があるなら笑って別れることができたかもしれないけど、海で生きている人魚さんや、野性的でどこでも生きていられそうな狼男とは違って、一人で生きていられそうなイメージが無い。
だって金髪美女さん、色白で筋肉少なめ脂肪分多め、細身の体格で柔肌の、インドア派ですよ明らかに。
いまはまだ体が弱っているから見捨てて行くって選択肢は無いけれど、完全回復した後でも俺は金髪美女さんと別れることができるのか? 想像してみるが、どうやったって後味が悪くなりそうだ。
ところで金髪美女さん、今日の御飯はあなたが作ってくれませんか?
いやいや、そろそろ何か手伝ってくださいよ。料理ぐらい御願いしてもいいよね?
あっ、こういう時だけ意図がまったく伝わってない振りをする! いくら言葉が通じないからって、こうやって一生懸命身振り手振りしてコミュニケーションしているから、いくら何でもちょっとぐらい分かってますよね! あきらかに面倒臭そうな顔をしないで⁉
……俺たちじつは結構極限状態なんですよ。お互い助け合えません?




