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Ploprof 1200m×1667

私は,私の亡骸を抱いていた。

細胞はゆるやかな死を迎え,時もそばから腐りはじめる傍ら私は,未明の海をみつめていた。

気づいた頃には,とうに発熱しているのだった。

ひとつの機関として燃焼する過程として。




とぼう。

Aから,ωまで,

なめらかな道のりを助走して,ほら,

θに足元をすくわれてしまっても,

黎明の海へと,とぼう。




だいぶして,




くらやみに濡れたわたしの体温は,

やはり木陰に埋没しているままであったけれど,

発熱しているその時分,

細胞はゆるやかな死を迎えて,

いっそう氷を淘汰して,

傍らで,うまれ,そばで腐り,

燻製にされた,未明の海をみつめている。




(めくることができないと

 誰が決めたのか

 この指で

 海を




(海,




(海は

 群衆の公理にしたがう,




諸手で浜を求め

さざなみの色を聴きにゆくのです

かさなりあうことのない

サングリアを求めるように染められた

さかさまの

たしかな鼓動が




ふるえて





ふるえていると

発熱している

ことを感じる




記憶はよく香ばしく燃焼する

ぱちぱちと

松脂をふくむ我執が

ぱちぱちと音をたてるさまは

しばしば老人ホームで耳にする施錠の音であろうか

(温めるにはほどとおい――




(けれど海は干上がってしまった――,




臥せっておるとなあ,

こころも,

からだも,

木翳に凍えてしまうんよ,




いつしか記憶の為の記憶と

行為のための行為とが

爆ぜることがあるだろうそれが

魂の写像だというのならば

いよいよ質量はいくばくもない――,





(いいえ,

 数えてはだめ,

 そこは黎明であって終焉ではないのだ――,




ため息が貴方の栞である,

それが貴方の足を止める,

悔恨が,ため息が,

およそ

あなたの

およそ

わたしの




減衰するそれは

ことばなのか

ただのふるえなのか

わからない

わかろうともせずに

いいえきっと

いくあてのないものたち

胃の奥底にただあるものとして

ないもののように

悲しみが受肉したものたちのように

さながら言い訳に費消されて

居ない方が良かったのだと

そんなもののために殉死したものたち

音がそうして無碍にされて

いくあてのないものたちは

眼球の奥底から這い出でてくる

生温い吐息とともに





(ようこそ,

 お変わりありませんか

 さいきんお見かけしませんでしたが

 栞を挟んでおいた

 ミハスは

 とうに折り畳まれてしまいました

 いま,火を点しますね

 記憶ばかり自立してゆきましたので

 いまは独り身なのですが,

 なあに,心配はいりません

 やさしさがあなたのものであるときに,

 わたしのもとにそれがないとは

 かぎらないのです。

 そうでないことのほうがおおいけれども,

 そうだとしても,

 そうであるときには,

 あふれだしてしまいそうになるでしょう――。




はたと鼓動を感じる時分,

筋肉の痙攣とともに,

発熱している

ことを感じる

ともすれば散逸して,

ややもすれば埋没して,

ろくでもない雑念とともに,

浮上するが,




わたしは

あなたのt分布を

まるごと飲み干したいとおもいます。


すきとか,きらいとか,

そういうことではないのです――,

(おそらくですが,

 あまりにはかなくなるものですから,

 っ

  ていても,

 んでい

歪  ても

 んでいても

 凹


あなたのすそ野まで

おいしくいただくことができる――,




いくあてのないものたちはすべて

わたしのものだ

息づくことをやめられない,

呼吸をすることもことばをつむぐことも愛することも,

それらはすべてわたしのものだ――





心の在りようは

だれに既定されるわけもなく

ただ驢馬車に揺られ

ゆるらり、ゆうらりと




ゆれる,ゆれる,

外側で

感情のよるべなく,

         あちらのほうにいきまして

おいで,    といっても,

「――落ち着きのない,

 だらしのない子だったんです」

ぶ))れる,

ゆ((れ))る,

いっこうに這入ることがない

もの

,ゆれる,

ゆれる,




わたしの皮膜をはいでゆくと,

いたるところで

発熱している

にちがいない




弔いか?

――いいや,おまつりだ,

おまつりだ。

おまつりだ。




いま,

希望が,孤独が,愉悦が,辛苦が,

淘汰して,再生して,

わたしの原子が

発熱して

ひとつの固体としてなお

発熱している

にちがいない




証跡をつけよ

幾億もの淘汰の名残でもよい,

水疱瘡のあとでもいいし,

できたら皰はよしてほしいが,

証跡をつけよ




燃やす,

それは叫ぶこと,

それは産声をあげるとともに,

穏やかな終焉を迎えること

と同義である




いま,

いのちは顫動するときだ,

驢馬車は嘶き,

神経の細い針の先にまで通わせるべきだ,




いのちは燃えているか

叫んでいるか

産声をあげているか

星々のように

発熱しているか




生物はみな,

咆哮する炎として,

燃焼する

あるいは

ときとして夢を啜りながら,

燃焼する原子である




見よ,

霊魂をくべて,

惑星のなかにもうひとつ

いまだ発熱するものがあり

なおもそれは

燃焼して《うぶごえをあげて》

発熱している。

2012年 08月19日 14時00分

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