一片の夏
小学生の頃数回だけ父の田舎に行った
訪れるのはいつも夏
山と田んぼと原っぱ
見渡せばすべてが緑だった
叔父さんにバイクの後ろに乗せてもらい
緑の中を走り抜ける
白い蛇がいた
真っ赤な目を可愛いいと思った
どこの家をまわっても笊に山盛りの枝豆と
井戸水で冷やしたスイカを出してくれた
女の人も女の子もみんな自分のことを
”おれ”って言うのが不思議だった
夜は川に灯籠を浮かべた
橙色の淡い光はゆっくりと川を流れていった
寝るとき初めて入る蚊帳は
秘密基地みたいでわくわくした
翌朝出てきたお味噌汁の中身は
裏の川で採ったどじょうがいっぱい入っていた
噛むとバリバリ音がした
私が中学生になってすぐ祖母は亡くなった
それ以来一度も父の田舎に行っていない
祖母は帰りの車の中で食べるようにと
いつもおにぎりを作ってくれた
妹の頭ぐらいの大きさで所々に色んな具が入っていた
でも大きすぎて一度も食べきることは出来なかった