今年も幼い姿で
「ねえねえ! おかしくない!?」
十代にもなっていない見た目をした少女に私は告げる。
「まったくおかしくないよ」
「本当? 適当なこと言っていない?」
うるさいな、本当に。
毎年毎年、もう勘弁してほしい。
「去年も問題なかったでしょ? だから大丈夫だよ」
「去年は去年じゃん! 今年は違うかも……」
「そんなこと言い出したらきりないでしょ? って言うか、そんなに気になるなら自分で聞けばいいじゃん」
私の言葉を聞いて少女は言葉に詰まる。
「……意地悪」
確かにその通りだ。
絞りだされた言葉に一抹の罪悪感を覚える。
「私だって鏡に自分の姿が映ったらアンタになんか聞かないよ」
しかめっ面に私は謝罪する。
「ごめんってお母さん」
明日は母の命日。
いや、正確には十数分前からもう命日なのだけど。
いずれにせよ、母を溺愛していた父はまだ夢の中だ。
母は私が四つの頃に闘病の末に亡くなった。
それ以来、こうして命日の度にわざわざ私と父の前にやって来てくれる。
残念なことに霊感のない父は母に気づいていないけれど。
「本当。何で幽霊って鏡に映らないんだろ」
「私的には当然のように幽霊になって私達に会いに来るお母さんの方がよっぽど『何で』なんだけどね」
「あら? 会いたくないの?」
「いや、会えてうれしいけど」
十数年も毎年のようにやって来ては悲しさや切なさより恒例行事という側面の方が大きくなる。
まぁ、そうは言っても今年も母が帰る頃には泣いちゃうんだろうけど。
「にしても、何であんたには見えてお父さんには見えないのかしらね」
「だから何回も言っているでしょ。お父さんは霊感全くないからだよ。」
「せっかく初恋の頃の姿で会いに来ているのにね」
母から生まれた私からすれば自分よりもずっと幼い母の姿なんて全く馴染みもない。
ぶっちゃけた話をすれば面影は確かにあるけれど、やっぱり違和感の方がずっと強い。
だけど。
『大人の姿で来てよ』
私は毎年、この言葉を飲み込んでしまう。
だって、私がよく知る母の姿はすっかりとやせ細り、髪の毛もほとんどない姿だったから。
「お父さんね。私のこの姿に一目惚れだったのよ」
「その話はもう聞き飽きたってば」
母はくすくす笑う。
少しだけ寂しそうに。
「あーあ。今年も見えないんだろうなぁ」
「今年こそ、見えるかもよ」
そう言いながら私は微笑む。
多分、霊感のない父は今年も母を見られないだろう。
だけど、もしかしたら今年から母に気づく可能性もゼロではない。
――だから。
「お母さん。今年あったことを話すね」
「うん。そうね。お父さん、まだまだ眠っているだろうし」
「今年はね。彼氏が出来たんだよ」
「ええええ!? 本当!? どんな子なの!?」
今年こそは父に見えたらいいな、って気持ちと。
今年もどうか父には見えませんように、って気持ち。
その二つを大切に抱えながら。
今、一時は私が母を独り占めする。




