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最終話 プロポーズ

 翌日。悠人は莉子を連れ出し、ドライブを楽しんだ後、夜景が最も美しい丘へと案内した。そこは、かつて悠人がタイムリープの秘密を打ち明け、莉子が愛をもって全てを受け入れた、二人にとって最も運命的な場所だった。


「ここ……」


 莉子はベンチに腰掛けながら、当時の緊張感を思い出したように息を飲んだ。


「あの夜と同じね」


 悠人は隣に座り、彼女の手を握りしめた。


「ああ。あの夜、俺は君に、荒唐無稽な秘密を打ち明けた。美咲に裏切られ、全てを失い、未来への希望を失っていた俺が、最後にすがったのは君という存在だった」


 莉子は微笑んだ。


「あの夜、私はあなたが嘘をついていないと知っていたわ。そして、私がそばにいるべき運命だと感じたの」


 悠人は立ち上がり、ポケットから小さなジュエリーボックスを取り出した。彼の心臓は激しく高鳴っていたが、もう恐怖ではなかった。それは、人生最大の愛の告白への高揚感だった。


 悠人は、指輪の箱を莉子の前に差し出し、深く真剣な眼差しで語り始めた。


「莉子さん。俺は、未来の知識を持って、この人生をやり直した。組織を潰し、過去の呪縛から逃れた。だが、俺が本当に勝ち取ったのは君の愛だ」


 彼は一度、深呼吸をした。


「君は、俺の嘘も弱さも、秘密も全て受け入れた。君の愛がなければ、俺は、ただ過去の記憶に囚われた孤独な亡霊のままだっただろう」


 悠人は、箱を開けた。シンプルなプラチナのリングに、一粒のダイヤが静かに輝いていた。それは、過去の虚飾とは無縁の、純粋な愛の光だった。


「この指輪には、タイムリープの記憶も、組織の影も、一切入っていない。あるのは、君と新しく始めた俺の人生の全てだ」


 悠人は膝をついた。夜景を背に、彼の瞳は真摯な光を宿していた。


「結城莉子さん。俺と結婚してほしい。俺は、もう未来の知識に頼る必要はない。君への愛こそが、俺の永遠の指針だ。俺と一緒に、世界で一番幸せな未来を創ってくれないか?」


 莉子の目から、止めどなく涙が溢れた。それは、悲しみではなく、深い感動と幸福の涙だった。


 彼女は、力強く、涙声で答えた。


「はい!喜んで!」


 悠人は立ち上がり、莉子を抱きしめた。そして、震える手でその指輪を彼女の左手の薬指にはめた。指輪は、莉子の繊細な指に完璧にフィットし、二人の永遠の愛を象徴するように輝いた。


「ありがとう、莉子さん!本当にありがとう……!」


 悠人は、莉子の唇に深く優しいキスをした。二人の愛が交じり合い、過去の全ての苦難と絶望が、この一瞬の幸福によって完全に癒やされた。


 莉子は、悠人の胸に顔を埋めながら、静かに囁いた。


「悠人さん。私たちの人生は、もう予測不能で自由よ。あなたがどこへ行こうと、私があなたの運命。これからもずっと、隣にいるわ」


 悠人は、夜空を見上げた。彼は、タイムリープという名の奇跡に感謝した。それは、彼に真の愛と人生をやり直すチャンスを与えてくれたからだ。


 彼の人生は、一度の事故で終わらなかった。それは、愛を勝ち取るための、二周目のロマンチックな物語として、永遠に続いていくのだ。


【完】

最後までお読みいただきありがとうございました!


本作はこれにて完結です。絶望を味わった悠人が幸せを掴むまでの物語でした。


作品の評価、感想など大歓迎です。

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