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25話 莉子の挑戦

 莉子が担当する社運を賭けたデザインコンペの最終プレゼンが、間近に迫っていた。


 彼女が手掛けているのは、新しいライフスタイル提案型の商業施設全体のデザインであり、彼女のキャリアにおいて最大のチャンスだった。


 悠人は、自分の仕事が多忙を極める中でも——莉子のサポートを最優先にした。



 ある夜。


 莉子はプレゼンの準備で疲弊し、ソファで眠ってしまった。彼女の手元には、練り直されたデザイン画と、山積みの資料があった。


 悠人はそっとブランケットをかけ、彼女が描いたデザイン画を眺めた。


 繊細な線。計算された配置。そして——人を幸せにしたいという想いが込められたデザイン。


 前の人生の俺だったら、美咲の浪費で苦しんでいて、莉子さんの夢になど一切関心を払えなかっただろう。


 悠人は、そう思った。


 彼は、未来の知識に頼る必要は全くなかった。だが、リスク管理のプロとして——莉子のプレゼンが成功するための、最後の後押しをしようと考えた。


 悠人は、莉子のデザイン画の横に、一枚の付箋を残した。


 そこには、彼女だけにわかる、愛のこもったメッセージが書かれていた。



 翌朝。


 莉子が目覚めると、テーブルの上にはコーヒーと、愛のメッセージが記された付箋が目に入った。


『莉子さん。君のデザインは、人を幸せにする力を持っている。それは、僕が一番よく知っている。君の夢は、僕の夢でもある。自信を持って、君らしく輝いてきて』


 莉子は、そのメッセージを読んで心が温かくなった。


 悠人のその言葉は、他の何よりも莉子の力となった。


「悠人さん……」


 莉子は、悠人の愛が——感情的な優しさだけでなく、信頼できる強さを持っていることを改めて実感した。



 プレゼン当日。


 莉子は、悠人のメッセージが記された付箋を握りしめ、自信を持ってステージに立った。


 審査員たちの視線が、一斉に彼女に注がれる。


 緊張が走る。だが——莉子は深呼吸をして、笑顔を作った。


 彼女のデザインは、これまで通り独創的で美しかった。だが今回は、それに加えて——この空間が、いかにして長期的な顧客ロイヤリティと収益を生み出すかを、説得力のある論理で展開した。


 特に、コンペの審査員を務める経営者たちは、莉子のデザインが持つ美学とビジネス感覚の両立に深く感銘を受けた。


 プレゼンが終わった時——会場には、静かな拍手が響いた。


 莉子は、やり遂げた。



 数日後。

 莉子は、見事コンペで勝利し、その大規模プロジェクトのメインデザイナーに任命された。


 社内での彼女の地位と評価は急上昇し、彼女の夢は現実のものとなった。


 莉子は、報告のため——悠人の課長室に飛び込んだ。


「悠人さん!」


 莉子の声が弾んでいた。


「やったわ! 私、勝ったの!」


 悠人は立ち上がり、莉子を抱きしめた。


 彼の顔には、自分自身の昇進の時以上の、心からの喜びが溢れていた。


「おめでとう、莉子さん!」


 悠人は力強く言った。


「君の努力が報われたんだ。君は本当に素晴らしいデザイナーだ」


 莉子は、悠人の胸に顔を埋めたまま囁いた。


「違うわ」


 彼女は首を横に振った。


「私一人じゃない。あなたの愛のサポートがあったからよ」


 悠人を見上げる。


「悠人さん、あなたは私の最高のパートナーだわ」


 悠人は、莉子を優しく抱きしめた。


 二人の愛は、互いの夢を応援し、高め合うという——次のステージへと進んでいった。


 もう、過去の痛みも、未来の不安もない。


 あるのは——今、この瞬間の幸せ。


 そして、二人で築いていく、輝かしい未来だけだ。


 悠人は思った。


 この人生をやり直せて、本当に良かった——と。


 莉子と出会えて、本当に幸せだ——と。

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