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タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


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66話 謀

 エンペラル帝国 帝都キャピターレ


 王都クロスキングスから見て、遥か北西部に位置する大国。

 周囲は険しい山々に囲われており、入国するには危険な魔物が跋扈する登山道を通るか、海路で山々を迂回して帝港に寄港する以外に手段はない。


 その帝都の、娼館を兼ねた酒場の一角。


「そうか、グリードが死んだか」


 正装を着用した身形の良い、金髪に紫色の瞳の男は、子飼いの密偵からの報告を受けて、さして興味も無さそうにそう言った。

 酒場にいるのは男と壮年のバーテンダーと密偵の三人だけだ。


「まぁ……元より金払いの悪いスポンサーだ。死んだところで困りはしないさ」


 密偵の報告は続く。


「魔瘴液を服用し、暴走したところをその場に居合わせた冒険者に討ち取られたようです」


「冒険者に?階級は……金級辺りかな?」


「は、冒険者は複数人。一人はカイツールの元ギルドマスターのリーゼ。何故ネオライトにいたのかは、現在調査中です」


「リーゼ……あのエルフの女か。白銀級ならまぁ討ち取れないことは無いか」


 彼らには独自の情報網があり、元とは言えギルドマスターであるリーゼのことは大なり小なり知っていた。


「いえ、グリード領主を討ち取ったのは、リオと言う若い青年の冒険者です」


「なに?リーゼがグリードを始末したんじゃないのか?」


 てっきりリーゼがグリードを討ち取ったのだとばかり思い込んでいたが、そうではないらしい。


「……そのリオとか言う冒険者は?」


「【鑑定】してみたところ、王都出身で、階級は黒鉄級。スキルは、その……」


「なんだ?ハッキリ報告しろ」


 言葉を詰まらせる密偵の様子に、男は疑念を抱いた。

 いつもなら淡々と淀みなく一字一句正確に伝えるはずの彼らが、このような煮え切らない態度を見せるのは珍しい……と言うか、初めてだった。

 ほんの少しの間を置いてから、密偵は意を決したように口を開いた。


「た、【タイム連打】だそうです」


「……は?【タイム連打】?なんだそれは?」


 思わず間抜けな声を出してしまった。


「『時を止める代わりに自分も動けなくなる』スキル……です」


「時を止め……いや、自分も動けなくなるのでは、ハズレスキルじゃないか?」


「グリード領主との戦闘中、スキルを使った様子が見られなかったので、恐らくハズレスキルなので使っていないだけかと」


「まぁ……黒鉄級の割には、相当腕の立つ冒険者と言うことかな」


 自分のスキルが"ハズレ“なので、スキルに頼らずに己の実力ひとつで戦うと言う冒険者も、少数派ながら存在するので、その類いだろうと判断する。


「報告は以上か?」


「以上になります」


「分かった、下がれ」


「はっ」


 男は懐から現金の詰まった麻袋を手渡し、それを素早く懐に納めた密偵は一礼してから、酒場を後にしていく。


 密偵が酒場を出てから、入れ替わるように客が来店してきた。


 紅い髪に不精髭を生やした粗野な風貌、武装していることも含めて、どことなくただ者ではない雰囲気を漂わせる中年の男だ。


「おぅ御大将(おんたいしょう)、今戻った」


「『モーゼス』か、首尾はどうだい?」


 モーゼスと呼ばれた中年の男は、少々不満げに答えた。


「オーダー通り、国境付近で小競り合いをいくつか起こしてきた。で、これで終わりじゃないんだろう?」


「当然さ。これでアバローナとエンペラル、両国の武力衝突を誘発していけば、ゆくゆくは戦争になるよ。その時こそ、"戦争屋“たるあなたの本領さ」


「フン、"戦争屋“と言う呼び方は気に入らんな。……尤も、羽振りの良い方の味方はするがな」


「それで結構、金通りの働きさえしてくれれば、こちらとしてはありがたい限りだからね」


 男は、モーゼスのことは信頼などしていない。

 ただ、金さえ払えば金額に見合った仕事は必ずこなしてくれると言う点においては、信用出来る相手だ。


「今後ともよろしく頼むよ、モーゼス」


「こちらこそ、なんてお為ごかしは言わんよ。せいぜい稼がせてもらう」


 あぁそうだった、とモーゼスはふと何かを思い出した。


「国境付近で小競り合いをしていた時に、"奇妙な女“を見かけた……と言うか、仕事の邪魔をされてな」


「奇妙な女?」


 先程のハズレスキルの【タイム連打】と言い、妙なことが続くものだと男は口にせずに呟く。


「いや、女装した男の可能性もあるが……真っ赤な正装に、派手な赤いマント、目元にマスク……あぁ、奴の髪も赤かったか。とにかく奇妙と言うか珍妙な奴だが、あの身のこなしと戦闘力の高さは本物だった」


「それはまた……なんとも」


 何もかも真っ赤な装いともなれば、とてつもなく目立つ。

 そんな目立つ格好で、小競り合い――小規模ながら戦闘が行われている場所に介入してきたと言うらしい。


「正規のギルドからの回し者か?いや、それにしては行動が派手すぎるか……」


「おい、独り言に耽るな。報告は以上だ」


「あぁ、ご苦労。次の依頼があればまた声をかけさせてもらうよ」


「おぅ」


 それだけ告げて、モーゼスは踵を返して酒場を後にしていった。


 一人残った男はグラスを傾けながら、


「【タイム連打】に、謎の女か……どうも、"計画“が漏れている気がするな……」


 誰にも聞こえないように、静かにそう呟いた。

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― 新着の感想 ―
これまた胡散臭そうな連中登場ですね。 そんでモーゼス……ひげのおじさまな最後か焼け野原ひろしな最後のどっちかの結末を迎えたりするんだろうか(ォィ 赤い女の事も気になりますねぇ。
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