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タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


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18/92

18話 雨音

 ――今にも泣き出しそうな、鈍色の曇天だった。


 王都クロスキングス周辺の北東部に点在する平原地帯。

 冒険者パーティ【紺碧の刃剣】に属する三人は、息を切らしながら必死に逃げていた。

 逃げて、逃げて、逃げて、ようやく拠点に転がり込めた頃には疲労困憊で、ルインは地面に身体を投げ出すように寝転がった。


「ゼー……ハァー……ゼー……ハァー……、ヒルダ、スコット……無事か……?」


 後ろを確かめる暇もなく逃げ出してきたので、スコットとヒルダと、あともう一人――リオの後釜として雇った銀級冒険者――が付いてきているか、ルインは上体を起こして見回す。


「な……なんとか、な……」


 這々の体でスコットが拠点に入ってきて、ルインと同じように身体を地べたに投げ出す。

 その後でヒルダも拠点に入ってきて、他の二人のように寝転びはしないものの、その場で座り込む。


「ルイン……」


 弱々しい声で、ヒルダはルインの名を呼んだ。


「どうしたヒルダ?……いや、あいつ、『マイケル』は?」


 数日前に、リオの後釜として雇った銀級冒険者の姿が見えないことに、ルインはヒルダの顔と拠点の出入り口を見比べる。

 殿を務めていたわけではなかったはずだが。


「……マイケルはもう、ダメよ」


 ヒルダの言う「ダメ」は、戦力になるかどうかのニュアンスではなかった。


 逃げ遅れたのだ。


 マイケルはもう、今回の討伐目標だった『サイクロプス』に喰われて腹の中だろう。


「は、はぁ!?あの野郎、どれだけ高い金払ってやったと……!」


 大金を叩いて雇った銀級冒険者が、まるで役に立たないどころか無駄死にしたことに、ルインは怒った。


「思ったより使えない奴だったな、ハズレだったんじゃね?」


 その横からスコットが皮肉げにそう言った。


 そんなはずは無かったのだ。

 リオのような、使いどころも使っているのかも分からない【タイム連打】ではなく、物理攻撃に特化した【パワーファイター】のスキルを持つマイケルの方が総合的な戦力になる……そのはずだった。


「クソッ、何が期待の銀級冒険者だ!リオの方がもっと上手く立ち回ってただろうが!」


 ザッ、と地面に握り拳を叩き付けるルイン。


 ところがどうだ?

 大金を叩いて雇ったのに、いざ実戦になれば、ノロクサとした動きの大振りな攻撃ばかりで、ちょっとすばしっこい小型の魔物にも苦戦する始末だ。

 大型の魔物の相手ならばと期待しても、結果はこのザマ。挙げ句、逃げ遅れてサイクロプスに喰われたのだろう。

 金をもらうだけもらって、何の役にも立たないまま死にやがったのだ。

 これなら、リオをパーティに残したままの方が遥かにマシだった。


「……ルイン、やっぱりリオを」


「言うな!!」


 何か言いかけたヒルダを、ルインは声を大にして遮った。


「確かに、今回の依頼で言えばリオの方が良かったかもしれない。だが、これから先はどうなるか分からないだろ……!」


 言い訳がましく理由を並べ立てるルインに、スコットは「ハッ」と鼻で嘲笑った。


「そうかぁ?「やっぱりリオを追放するんじゃなかった」って顔に書いてるぜ?」


「ぐっ、くくっ……ッ!」


 スコットの言葉が図星だったのか、ルインは歯を軋ませて押し黙る。


「確かに、リオの【タイム連打】スキルはよく分からないものだったけど。それでもリオはスキルに頼らない戦い方で、私達と一緒に戦ってきた」


 そこでヒルダは一度区切ってから。


「リオの【タイム連打】って、()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「ハズレスキルだ!ハズレスキルに決まってる!時を止めるだか言っていたが、あいつがそれを使いこなしていたことなんざ、一度も……」


「その【タイム連打】を使いこなしていたかも分からねぇようなリオが抜けたから、"こうなった“んだろ?」


 声を荒げて反論するルインに、また横合いからスコットが水を差すように口を挟んだ。


「あーぁ、マイケルも運が無かったよなぁ。リオが抜けた途端、こんな目に遭っちまってさぁ」


 結果論と言えば結果論だが、【紺碧の刃剣】を結成して以来、こんな無様な敗走などした覚えは無かったのに。


 前夜に三人で話し合い、スコットとヒルダからは反対の色を示されながらも、『リオのためにと思って』決断し、【紺碧の刃剣】から追放したはずなのに、彼がいなくなった途端にこのザマだ。


 何故だ何故だと、ルインは怒りと困惑が綯交ぜになる。


「と……とにかく!マイケルがハズレだっただけだ!クロスキングスに戻ったら、改めて勧誘だ!今度こそまともな銀級冒険者を雇うぞ!」


 都合の悪い事実を誤魔化すように声を張り上げるルイン。


「見つかりゃいいな、"リオより強い“銀級冒険者が」


 そんなルインを冷ややかな目で見やるスコット。


「………………はぁ」


 半ば空中分解したような自分達の現状を、嘆くように溜め息をつくヒルダ。


 ふと、夕立が近付いてきたのか、雨粒を感じ――間もなく土砂降りになった。


「……降ってきたか、ツイてないな」


 雨に打たれて冷静になったのか、ルインから怒気が消え失せた。

 "ツイてない“のは天候なのか、それとも。


 痛いほどに冷たい雨は、ぽっかり空いた()()()()()()から、容赦なく三人を叩いた。

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 遅れながら、今回の感想です。  展開だけ見ると、よくある『ザマァ』路線まっしぐらな感じですが、いや〜〜〜、本当にそうかな?だってこすもすさんどさんの作品ですよ?  ある程度の因果応報はありつつも、最…
こういう連中って、あとどれだけ痛い目を見れば現状をちゃんと見れるようになるのか、読むたびに思います。 いや痛い目に遭えば遭うほど悪化するパターンが多めですけどね……この若造共には早めに気づいてもらいた…
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