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レベル5デスの使いどころがありません

大みそかだよ! 異世界餅つき大会!! 【外伝】レベル5デスの使いどころがありません

作者: 角乃とうふ
掲載日:2024/12/31

 異世界転生後、なんやかんや運だけで生き残ってきたタナトスさん。住まいも決まって、年越しを迎えたようで……。

 異世界に転生して初めて迎える大晦日(おおみそか)。金のシャチホコならぬ金のドラゴンが天守閣に乗ったツリーハウスがマイホーム、というカオスな状況の中で、大量のル〇バ風のゴーレムが忙しく動き回っている。女神フロラがその陣頭指揮を()っていた。


「さぁ、年末の大掃除、張り切っていきますよ~!」


 フロラはゴッドエラー(単なる手違い)で悪魔に転生したオレを何かとサポートしてくれている。設定年齢(謎)が自称17歳の小柄な美少女だ。想像してほしい。そんな子が三角(きん)割烹着(かっぽうぎ)を着て、背伸びをしながらはたきをパタパタさせている姿を。まったくカワイイが過ぎる。そんなフロラを横目でニヤニヤちら見しながら、オレは建設ゴーレムのデンキチさんとはさみ将棋に興じていた。


「ちょっとタナトスさん手伝ってくださいよ。綺麗にしないと年神(としがみ)様が来ませんよ!」

「神様なら目の前にいるじゃないですか」

「はっ! そういや、わたしも神でした。テヘペロ。じゃなくて掃除してください! 大体タナトスさんのお(うち)じゃないですか」

「おっしゃるとおりですが、広すぎて掃除する気があんまり……。それに、ゴーレムの皆さんががんばってくれてるんで、特にやることなく無いですか?」

「そういえば、そうなんですけどね。お正月に向けて、なんか準備とかすると盛り上がるじゃないですか。あ! そうだ、餅つきなんかしたらどうですか!?」

「フロラ様、餅なんかよく知ってますね」

「ふふーん。自慢じゃありませんが、おいしいものは色んな異世界を(また)いで知ってますよ」


 できれば、ほかの分野にもその知識を広げて欲しいしいものだ。


「いや、オレも餅は嫌いじゃないですけどね。ただ、自慢じゃないですが食べ専なもんで、餅なんか作ったことないんですが」

「目の前に達人がいるじゃないですか」


 いうや、はさみ将棋の相手のデンキチさんの目が怪しく紫に光りだした。


「アサメシマエヨ」


 そんなわけで、デンキチさん指導のもと、餅つきの準備をはじめたのだった。餅つきに必要な道具や材料はフロラが転送して用意してくれた。なんでも、もち米の仕込みは前の晩から水に(ひた)さないとダメらしいが、そこはフロラ、3分クッキングのように『こちらが一晩水に(ひた)したものごさいま~す』とノリノリで出してくれた。その後は、大きな羽釜(はがま)で湯を沸かす。これで、もち米を蒸すようだ。ちなみにデンキチさん(いわ)く、重要なのは餅をつく前にもち米を丁寧に(きね)で潰しておくことだそうな。面倒だなぁ、全部魔法でチャチャっとやってしまえばいいのにと思っていたら、エルフの2人がやってきた。


「いやはや、年末の挨拶にと来てみたら、これは立派な邸宅だね。確かにうちの若いもんが侵略拠点と間違えても仕方がない」

「わざわざお越しいただき恐縮です、モーリスさん。先日はこの森への居住を許可いただきありがとうございました」

「なんのなんの。しかし、これだけ広ければエミリーヌがすぐに(とつ)いでも大丈夫じゃな!」

「ちょっとおじいちゃん! 変なこと言うと髪の毛引き抜いて、ゆで卵にするわよ!!」


 村長(むらおさ)モーリスの残り少ない髪の毛を、孫娘のエミリーヌが全力で引き抜こうとしている。仲が良いのは結構だが、薄毛の男性にその暴挙はやめてほしい。と、石臼(いしうす)(きね)が目に入ったのか、エミリールが手を止めた。


「ねえ、何の準備してるの?」

「あー、これは餅つきの準備さ。明日から新年だろ。遠い異国の人間の国では、新年は餅を食いながらこたつでゴロゴロするんだ」

「コタツ? 良くわからないけど、モチって美味しいの?」

「そりゃもう。特につきたての(きね)つき餅の味は絶品さ。あまりの美味さに毎年餅を喉に詰まらせる人が続出するくらいだ」

「……それって、ヤバイやつじゃない?」

「気をつけてりゃ大丈夫だよ。あれだよ、綺麗なバラにはトゲがあるみたいなもんだよ」

「なるほど、私みたいなものね」


 綺麗なこともトゲがあることも自覚があるのか。自己分析はちゃんとできてるのな。そうだ、モーリスも興味津々なようだし、餅つき前の下準備は2人に(まか)せよう。



「はぁはぁ。地味な割に結構しんどい作業ね……」

「デンキチさん。わしゃ、腰が痛くなってきた。もういいかね」

「ワレ、ナメタコトイットルト、アタマカチワルゾ」


 モーリスがヒィ! と短い悲鳴を上げて作業に戻る。ちなみに、デンキチさんは口が悪いだけで害はない。ともかく、2人の頑張りのおかげで、つく前から餅になってきたな。ようし、ペッタンペッタンはちょっとやってみたいぞ。出番まで1人ババ抜きでもやろうかな。と、その時天守閣の縁側にふわりと天使、じゃなくて天使みたいな悪魔が舞い降りた。


「やぁ、エムエルじゃないか! 相変わらず美人だね」

「心のないお世辞トークは相変わらずね、タナトス」


 この褐色の美人は元同僚で四天王の悪魔である。彼女のアドバイスのおかげで、その後なんだかんだあって、今ココにいるのだ。


「とりあえず、生きてて良かったわ。あの後、魔王様ガチギレで大変だったんだから。『あいつバックレやがって!』って」

「マジっすか。ここにいることはどうか内密に……」

「当たり前でしょ。あなた逃がしたことバレたら私もタダじゃすまないし」

「エムエル様ー! 大好きー!!」

「ちょ、あなたそんなキャラだったけ!? どっ、どさくさに紛れて翼をモフらないで!」


 エムエルの背中の翼に頬ずりしていると、背中から刺すような視線を感じた。


「……餅つきの準備ができたんだけど」

 トゲトゲのバラの人、エミリールがジト目でこちらを見つめてる。


「あ、あー! お疲れお疲れ! じゃあ、餅をペッタンペッタンしようかな」

 冷たい汗を背中に一筋かきながら、オレは(きね)を右手に持った。


「ねぇねぇ、何やってるの?」

「あー、新年の異国の食べ物を作ってるんだよ、エミエルも一緒にペッタンペッタンする?」

「なんか、おもしろそうね。やってみようかしら」


 そんなわけで、デンキチさんが合いの手をして、オレとエムエルで餅つきを始めた。デンキチさんの手を間違ってつかないよう、順番に1,2,3と声を出しながら餅つきする。最初は面白がって、バンバンやっていたが、そこは体力のないオレのこと、二臼(ふたうす)目には見学者となっていた。エムエルは餅つきの才能があるのか、慣れてくると高速で餅をつきはじめた。デンキチさんの目がピンクに光っているところを見ると、デンキチさんにも気に入られたようだ。

 つき上がった餅は、エルフの2人とフロラでちょうど良い大きさにちぎって丸めている。トレイに綺麗に並んだ丸餅を眺めていると、ホント、日本みたいだなと思えてくる。異世界転生してまだ日は浅いが、とりあえず年は越せそうだ。そう考えると感慨(かんがい)深いなあ。そんなオレの顔をフロラが覗き込んだ。


「どうしたんですか、タナトスさん。ボーっとして」

「ん? あぁ、何でもないです。上手にできましたね、お餅」

「つきたてが一番おいしいですよ! おひとつどうぞ」

「あーん」

「ちょっと、私のも食べなさいよ!」


 エミリールが勢い良くオレの喉元に餅を突っ込む。


「ほんな、ほぉちを、ふはぁつも、ひっへんにひれふと、ほどが!!」

「あれ、タナトスさん!? もとからですけど、顔が青くないですか?」

「ハハハ! 今度は顔が赤くなっちゃって。美女に囲まれて照れてるのか? このツンデレ!」


 薄れゆく意識の中、遠くで『ハイハイハイハイ!!』とすさまじい掛け声で、高速で餅をついている音が聞こえてきた。次はもっとかっこ良いチート餅、もといチート持ちの主人公に転生したいと思うオレでした。

 その後、フロラの回復魔法で無事に蘇生したタノトスさん。みんな、おいしいお餅をお土産にニコニコして帰りましたとさ。


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