第47話 福神漬けとピースサイン
チャイムが鳴って、急いで奏多の元に向かう。九条は萬木に近付き、心配そうな顔で寄り添っていた。
あっちもあっちで燃え尽きてるな……まあ、萬木は九条に任せればいいだろ。
「奏多、大丈夫か?」
「……あぁ……京水……はは。ぼくは……ぼくはぁ……」
この言い方。もしかしてダメだったか……? それも1つや2つじゃなくて、いくつか赤点が……。
机の上に置かれている、テスト結果表に目を落とす。
数1:70/100
数A:65/100
生物:72/100
地学:80/100
世界史A:65/100
日本史A:58/100
現代文:40/100
言語文化:42/100
英語表現:100/100
コミュニケーション英語:100/100
英語科目、満点!? マジか、俺だって90点台だったのに……これが帰国子女の力か……!
後の科目も軒並み高い。苦手だった国語系の科目は低いけど、平均より全然上だ。
え、マジ? これ、本当に奏多のテスト結果? え?
「奏多、これ……」
「ふ、ふふ……実はぼく、一夜漬けと福神漬けが得意でね……山張ったらほとんど当たった」
「マジか!?」
山張るとかそんなレベルじゃないだろ、これ! どんな豪運でこんな高得点取れてんだよ! あと神頼みを得意に分類するな!?
「京水、君は大事なことを忘れている」
「何?」
「なぜぼくレベルの頭で、この学校に編入できたと思う?」
……確かに、言われてみれば。
え、嘘……まさか。
「編入試験も一夜漬けと神頼みで乗り切った」
余りの計画性の無さ無謀さに絶句してしまった。
普通、前もって対策するだろ……行き当たりばったりの人生すぎる。さすがの俺もドン引きだ。
「お前な……」
「でもおかげで赤点なしっ。これから気兼ねなく、たーくさんイチャイチャできるね」
──ザワッ
奏多の爆弾発言に、クラス中がザワついた。
あ、そういや、俺たちが付き合ってること、クラスの誰にも話してないや。話す相手がいないけど。
「い、今、なんて……?」
「あの2人、付き合ってたの……!?」
「嘘だッ、嘘だああああッ……!!」
「俺たちの女神がぁ!」
「うらやまじいいいいいっ!」
絶望に打ちひしがれる野郎どもを横目に、奏多を白い目で見る。
「奏多、お前な……」
「やっべ。嬉しすぎて口滑らせちった」
てへ、と舌を出して誤魔化した。可愛い、許す。
はぁ……もうバレちゃったならいいか。今更隠しても、なんの益もないし。
奏多の頭を撫でると、たははーと笑みを見せた。少しは反省しろ、バカタレ。
「えっ、えっ、えっ……!?」
「ひっ、ひひひひひ火咲さんの頭を撫でて……!?」
「あばっ、あばばばばばばばばばば」
「あぁ……さようなら初恋……」
「ああああああぁぁぁぁ……ああああああああああああああああ……キエアアアアアアアアアアアッッッ……!!」
こわっ。怖い怖い怖い。阿鼻叫喚かっ。
クラスメイト+廊下からの奇声にドン引きしていると、九条と萬木が近付いてきた。
「2人とも、バラしちゃっていいのかい?」
「このお馬鹿が口を滑らせたからな。今更隠しても、もう遅いだろ」
コンコンと奏多の頭をノックすると、何も詰まってない軽い音が鳴った(気がした)。
「まあ、一緒にいたらいつかはバレるからな。遅かれ早かれだ。……それより、萬木の方はどうだ? 大丈夫か?」
「……ふ……ふふふっ……ふはははは! 甘い、甘いよキョウたん。ウチを甘く見すぎだぜいっ」
ぶいっ、と満面の笑みを見せた萬木。おおっ、萬木も赤点なし──
「2つで済んだ!」
「致命傷じゃねーか」
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