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その体で『男友達』は無理があるだろう!?  作者: 赤金武蔵
第2章 恋人として──

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第36話 かつての友

 その後、何事もなく勉強をすること数時間。いい集中が続いて、気付けば19時を回っていた。

 外ももう暗い。確か、九条と萬木の家は隣町だったはず。しまったな、暗い中帰らせるのは忍びない。



「今日はもういい時間だし、お開きにするか。九条、萬木、送ってくよ」

「えっ? い、いいよ。私たちは大丈夫だから……!」

「そだよ、キョウたん。別の女の子に優しくしちゃうと、カナちが怒っちゃうぞ〜」



 萬木が鬼のように指を立てて、ニヤニヤとほくそ笑む。

 まったく……まだまだ奏多のこと、何もわかってないな。

 苦笑いを浮かべて奏多に目を向けると、奏多は得意気な顔で胸を張っていた。



「ふふん、そうだよ。ぼくの京水はね、みんなに優しいんだよっ」

「と、言うことだ」

「どうしよう、ウチ胸やけしそう」

「なーんでこの2人が今まで付き合ってなかったのか不思議でしょうがない」



 まあまあ。その話はもういいじゃないか。

 帰り支度をして、2人と玄関に向かう。



「奏多、悪いけど夕飯は1人で食べてくれ。冷蔵庫に煮魚を作り置きしてあるから、温めて食うんだぞ」

「あーい」

「あと風呂にはちゃんと入って、体を冷やさないように。あ、お菓子は食べすぎるなよ。戸締りもしっかりすること。寂しかったら電話掛けてきていいけど、夜更かしして明日に支障を……」

「いやマミーか」



 最愛の彼女が一人暮らしなんだ。心配くらいさせてくれ。

 奏多におやすみと挨拶をし、家を後にする。さすがに19時をすぎると、少し肌寒いな。早く夏になってほしいもんだ。

 夏……もう夏休みなんだな。高校生活初の夏。しかも、彼女がいる夏なんて人生で初めてだ。

 どんな夏になるのか、今から楽しみで仕方ない。

 指先の冷える感覚を覚えてポケットに手を突っ込むと、九条が申し訳なさそうな顔で話しかけて来た。



「氷室くん、本当によかったの? 隣町と言っても近いし、私たちなら……」

「いいんだよ。人気のない夜道を女の子だけで帰す方が不安だから」



 この辺の治安はいいとは言え、万が一があっちゃ困る。特にこの2人、奏多に負けず劣らずの美少女だからな。

 本心を伝えると、2人はぽかんとした顔で俺を見た。え、何?



「いやぁ……キョウたん、こんなにいい男だったんだね」

「本当。ただの鈍感男よりよっぽど質が悪い」

「え、貶されてる?」

「「半分」」



 じゃあ半分はなんだよ。優しさか?



「キョウたん。もしかしてだけど、その優しさ、別の女の子に向けてないよね?」

「別に優しくした覚えはないぞ。当たり前のことをしてるだけで」

「……こいつは、とんだ女泣かせかもしれないね……」



 引き顔を見せる萬木と、深く頷く九条。風評被害にもほどがある。



「そんなこと言われても、中学の時に仲良かったのはミヤだけで……あ」



 いや、1人いたな。ミヤの友達の女の子。ミヤが好きだったのか、よく一緒にいたっけ。

 元々うちの高校を志望してたみたいだけど、落ちて別の高校に進学したんだったな。連絡先も知らないから今は何をしてるのかは知らないけど、元気にしてるのかね。



「氷室くん、変なことにだけは巻き込まれないでくれよ」

「キョウたんが刺されたら、カナちが悲しむからさ。あとついでにウチらも」

「ついでかよ」



 そこは悲しんでくれ。友達として。

 つっても、刺されるようなことはしてないから、なんも問題はない。むしろ今心配なのは、奏多と萬木の赤点の方だ。

 俺も自分の勉強をしないといけないし、あと2週間しかない。もし赤点なんて取ったら、俺が母さんにぶっ飛ばされる。比喩ではなく、ガチで。それだけは絶対に回避しないと。

 一応、赤点は平均点の半分ということになっている。俺たちの通っている高校はそれなりに偏差値が高いけど、まあ油断をしない限り大丈夫だろう。……多分。


 しばらく住宅地を歩くと、隣町のシンボルである商店街までやって来た。

 と、萬木が商店街のある一角を指さした。『和菓子 よろず』。この辺ではかなり古い和菓子屋だ。



「ウチの家、あそこ。和菓子屋なんだ」

「え、そうなの? あそこ俺と父さんが好きで、よく母さんが買いに行ってるぞ」

「マ? えへへ、いつもご贔屓にあざーす。……って、ウチは嫌なんだけどさ、和菓子屋。どうせなら洋菓子の方がよかったなぁって」



 あぁ……こう言っちゃなんだけど、確かに萬木は和菓子ってより、ふわふわの洋菓子って雰囲気の子だ。こういうギャルっぽい格好も、実家が和菓子屋への反骨精神なのかもな。



「でも、ウチの和菓子を好きって言ってくれる人がいるなら、ちょっとは誇らしいかも。……なんてなっ、なんてなっ」

「いてっ。叩くな」



 実家が褒められて嬉しいのか、照れ隠しで結構強めに叩いて来た。ちょ、本当に痛い。背中痛いやめて。



「あ、そだ。お土産にいくつか持たせるからさ、ちょっと待っててよ」

「さ、さすがに申し訳ないって。金なら払うから」

「いいからいいから。パパ……お、お父さんも喜ぶだろうからっ」



 あ……行っちまった。別にねだったわけじゃないから、申し訳ないな。



「ふふ。純恋、実は実家の和菓子が大好きなんだ。だから褒められて嬉しいんだよ」

「そうなのか? でも洋菓子がいいって……」

「本人は認めないけどね。そんなところが可愛いんだ、あの子」



 ふーん。素直じゃないんだな、萬木は。

 九条と並んで『和菓子屋 よろず』に入っていくと、萬木に似た和服美人さんが、あれこれと和菓子を見繕っていた。



「いらっしゃ……あら、麗奈ちゃん。こんばんは。それとあなたが、氷室さん家のお子さんね。こんばんは」

「こんばんは、おばさん」

「こ、こんばんは」



 びっくりした。母さん、萬木のお母さんと仲良いのか。初めて知った。



「もう少しで包み終わるから、待っててちょうだい。純恋ちゃん、2人にお茶出してあげてね」

「あーい。2人とも、席に座って待っててー」



 言われるがまま、店内の座席に座って待つ。

 俺たち以外にも、客は1人。同年代の女の子だ、多分、親に言われてお使いに来たんだろう……が……なんか見たことあるな。

 思わず立ち止まり、そっちを見る。

 怠そうにスマホを弄る女の子が、じろじろ見られてるのに苛立ったのか、舌打ち混じりに俺を睨めつけ……目を見開いた。



「きょっ……キョウちゃん!?」

「あ、(ゆずりは)

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